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第一章 【開局】
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神奈須町の神奈須湖。決して大きいとは言えないこの湖の上を通る橋。その中腹で足を止める。
ここが、月が一番きれいに見える場所。スマホアプリ『雀心~じゃんしん~』を起動する。柵に寄り掛かり、スマホの先を見る。湖面には今日も月が浮かんでいる。
「ご主人、こんきちねー」
ウサギをモチーフにした、黒髪でピンク色の巫女服を着たアバター、天兎が迎えてくれる。一年前、いつのまにか僕のアカウントに設定されていた。
15分ほどで終わる。
「断么九、ドラ」
「和了ね、私の方が強いでしょ」
最近は、プロ雀士とマッチングされない限り、負けることはほとんど無い。僕は、麻雀が強くなった。
クリスマスの夜、誓ったから。
月に誓ったから。
きち子に誓ったから。
きち子より麻雀が強くなる と。
目の前の湖は、海が陸地にポッコリと入り込んだ形状。大きな湖ではないが、その為に海岸付近を走る道路と鉄道が橋になっている。しかし、道路の拡張工事に伴って、湖を埋め立てることが決まったらしい。
昼間は反対運動をしている者が騒がしい。自然を守れとか、景観を守れとか。彼らは、反対する理由があれば何だって使う。しかし、湖に生息するという都市伝説の珍獣を引き合いに出すのはお門違いである。
もう一局やってから帰ろうと思い、王座の間 東でマッチングを待つ。すると、
「毎日、ここで雀心してるね」
突然話しかけられ、驚くように振り返る。そこには女の子。小柄で、中学生くらいにも見えるが、大人のようにも見える不思議な雰囲気。なにより特徴的なのは、丈の短いパーカー。冬の夜に、おへそ出している。
「ほら、始まるよ」
呆然としている僕に、女の子が言った。ポケットからスマホを取り出しながら。
慌ててスマホを見ると、対局をする4人のアバターが映っている。その中に、初めて見るキャラクター。怪獣型のパーカーを羽織った女の子、シア。新しいガチャイベントが始まったのだろうか。
最上級ランクは、プレイヤー人口が少ない。曜日や時間帯で面子はだいたい決まっているのだが、対面の『ナズ』は初めて見る名前。
ふと女の子を見ると、目が合った。そして、満面の笑顔で言った。
「それ、うち」
ここが、月が一番きれいに見える場所。スマホアプリ『雀心~じゃんしん~』を起動する。柵に寄り掛かり、スマホの先を見る。湖面には今日も月が浮かんでいる。
「ご主人、こんきちねー」
ウサギをモチーフにした、黒髪でピンク色の巫女服を着たアバター、天兎が迎えてくれる。一年前、いつのまにか僕のアカウントに設定されていた。
15分ほどで終わる。
「断么九、ドラ」
「和了ね、私の方が強いでしょ」
最近は、プロ雀士とマッチングされない限り、負けることはほとんど無い。僕は、麻雀が強くなった。
クリスマスの夜、誓ったから。
月に誓ったから。
きち子に誓ったから。
きち子より麻雀が強くなる と。
目の前の湖は、海が陸地にポッコリと入り込んだ形状。大きな湖ではないが、その為に海岸付近を走る道路と鉄道が橋になっている。しかし、道路の拡張工事に伴って、湖を埋め立てることが決まったらしい。
昼間は反対運動をしている者が騒がしい。自然を守れとか、景観を守れとか。彼らは、反対する理由があれば何だって使う。しかし、湖に生息するという都市伝説の珍獣を引き合いに出すのはお門違いである。
もう一局やってから帰ろうと思い、王座の間 東でマッチングを待つ。すると、
「毎日、ここで雀心してるね」
突然話しかけられ、驚くように振り返る。そこには女の子。小柄で、中学生くらいにも見えるが、大人のようにも見える不思議な雰囲気。なにより特徴的なのは、丈の短いパーカー。冬の夜に、おへそ出している。
「ほら、始まるよ」
呆然としている僕に、女の子が言った。ポケットからスマホを取り出しながら。
慌ててスマホを見ると、対局をする4人のアバターが映っている。その中に、初めて見るキャラクター。怪獣型のパーカーを羽織った女の子、シア。新しいガチャイベントが始まったのだろうか。
最上級ランクは、プレイヤー人口が少ない。曜日や時間帯で面子はだいたい決まっているのだが、対面の『ナズ』は初めて見る名前。
ふと女の子を見ると、目が合った。そして、満面の笑顔で言った。
「それ、うち」
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