湖に浮かぶ月

やっさん@ゆっくり小説系Vtuber

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第二章 【聴牌】

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 オーラスをトップで迎え、さっさと安い手を作る。そこで油断し、捲られた苦い想い出がある。

 僕は、牌効率をとことん勉強した。見えている全ての牌から、最短で役を作るまでの確率を計算する。考えうるすべての可能性を確率で逆算し、振り込まないよう注意しつつ、最短で安上がりを重ねる。その為なら、断么九や役牌で喰い散らかすこともいとわない。勝利するまで、思考し続ける。

 それなのに…

「フッフッフー、キミのカンよりうちのかん
 シアの決め台詞が流れた。
 
 女の子、ナズにオーラスで捲られた。危険な牌すら勇者の如く打つのに、全く振り込まない。オーラスに至っては、序盤で一萬イーマンをチー。役牌をことごとくツモ切り。何を作っているのか読めない。そして逆転の和了役あがりやくは、役なし聴牌テンパイ3000点。

 ナズは、役はほとんど知らないという。見様見真似みようみまねで打って、「立直やロンなどの表示がでたら、なんらかの役が出来ている」という程度の認識。過去に教わったことは、振り込まないこととドラは切らないこと。それだけだと言う。

 初心者に優しい雀心なら、それで打てなくもないが、最上位まで昇れるはずがない。しかし、対局のリプレイを見ると、確かに勘と運で打っているように見える。

 しばらく、ナズとそんな話しをしてから、二人並んで橋を降り、そこで別れた。

 いつもより遅くなってしまった。湖に面した道を歩きながら空を見上げると、冬の透き通った夜空に月が浮かんでいる。

 足を止めた目の前に、見覚えの無いもの。

『Bar  OTAMA 5F』と書かれた看板。普段お酒は飲まないので、一人で飲み屋に入ることもない。しかし、何かに誘われるようにビルへ入る。
 5階のフロアに店は一つ。ドアを空けると、信じられない光景が広がる。

 和のテイスト。いや、それどころではない。そこはまるで神社の中。カウンターの向こうには大きな神棚。奉られている御神鏡ごしんきょうは、照明の光で満月のように輝いている。そして…

「いらっしゃいませ、カウンターのお席へどうぞ」

 迎えてくれたのは、ピンク色の巫女服の女性。黒くて長い髪。そしてウサミミ、雀心の天兎そのもの。

 ここが神社をイメージしたBarということ。それくらい分かる。しかし、目の前にいる巫女服の女性はそっくりなのだ。そんなわけが無い。そんなはずは無い。でも、言葉が漏れた。


「きち…子…?」

 
 女性は一瞬首をかしげるが、すぐに笑顔に戻り挨拶をする。

尾玉おたま神社の巫女、おたまです」
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