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第五章 【オーラス】
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僕は精も魂も尽き果てて、Bar OTAMAを出た。プロはやはり強かった。全てを賭けた僕の立直も、彼らには届かなかった。
彼らは捨てなかった、待っていた二筒を。残りの牌が減っていくのを、指をくわえてみていることしか出来なかった。
そして最後の牌。牌が怖い。敗北が怖い。画面を見れず、視線をあげた。すると、カウンターにいるおたまさんが、僕を真っ直ぐ見ていた。
決心し、視線を画面に戻すと、そこにはきち子のまんまるな瞳のように、まんまるが2つ。思わずスマホを落としそうになった。
「ツモ」
「立直、ツモ、ハイテイ、ドラ2」
「和了ね、私のほうが強いでしょ」
プロに勝った。それは、きち子より強くなったということ。誓いを果たしたということ。けど、悲しくて涙が止まらない。
きち子より強くなったのに、きち子はいない。なんの為に強くなったのか分からなくなった。
そんな僕の前を、バスが通過する。その車窓に、Bar OTAMAの看板が映る。
『OTAMA』が反転して映る
『AMATO』
「あまと!?」
思わず叫ぶように声が出る。
空を見上げると、月が輝いている。一年前の言葉を思い出す。
「生きて、私より強くなって。私はずっと月で待ってるから」
僕は、そこから走り出す。湖にかかる橋の手前、バリケードを飛び越える。月に向かって橋を歩いていると、銀河を走る鉄道で月へ向かうアニメを思い出す。
中腹へたどり着き、夜空を見上げ、しばらく月を眺める。何十分たっただろう。かなり長く眺めていた。そして、心を決めて立ち上がる。
「きち子、待たせてごめんね、今から行くよ」
そう呟いて、湖面に映る月に向かって飛び込む。
大きな水音が、クリスマスの澄んだ夜の空へ消える。
痺れるほどの冷たさに全身が縛り付けられる
無意識に身体がもがこうとするが
捕まるものは何もない
夜空に浮かぶ月が見えた瞬間
不思議と心が落ち着く
そして身体は大人しくなった
これで、やっと会いに行ける
ゆっくりと息を吐き出すと、身体は水の底へ沈んでいく。湖面の上に月が見えている。
最後に逆転した役
海底摸月
今度こそ、きち子が呼んでくれたんだ。
ゆっくりと、意識が薄れる。
意識が途切れる寸前、全身に衝撃が走る。そして声が聴こえた。
「生きろよ、強くなれよ」
それは、きち子とは違う声。
彼らは捨てなかった、待っていた二筒を。残りの牌が減っていくのを、指をくわえてみていることしか出来なかった。
そして最後の牌。牌が怖い。敗北が怖い。画面を見れず、視線をあげた。すると、カウンターにいるおたまさんが、僕を真っ直ぐ見ていた。
決心し、視線を画面に戻すと、そこにはきち子のまんまるな瞳のように、まんまるが2つ。思わずスマホを落としそうになった。
「ツモ」
「立直、ツモ、ハイテイ、ドラ2」
「和了ね、私のほうが強いでしょ」
プロに勝った。それは、きち子より強くなったということ。誓いを果たしたということ。けど、悲しくて涙が止まらない。
きち子より強くなったのに、きち子はいない。なんの為に強くなったのか分からなくなった。
そんな僕の前を、バスが通過する。その車窓に、Bar OTAMAの看板が映る。
『OTAMA』が反転して映る
『AMATO』
「あまと!?」
思わず叫ぶように声が出る。
空を見上げると、月が輝いている。一年前の言葉を思い出す。
「生きて、私より強くなって。私はずっと月で待ってるから」
僕は、そこから走り出す。湖にかかる橋の手前、バリケードを飛び越える。月に向かって橋を歩いていると、銀河を走る鉄道で月へ向かうアニメを思い出す。
中腹へたどり着き、夜空を見上げ、しばらく月を眺める。何十分たっただろう。かなり長く眺めていた。そして、心を決めて立ち上がる。
「きち子、待たせてごめんね、今から行くよ」
そう呟いて、湖面に映る月に向かって飛び込む。
大きな水音が、クリスマスの澄んだ夜の空へ消える。
痺れるほどの冷たさに全身が縛り付けられる
無意識に身体がもがこうとするが
捕まるものは何もない
夜空に浮かぶ月が見えた瞬間
不思議と心が落ち着く
そして身体は大人しくなった
これで、やっと会いに行ける
ゆっくりと息を吐き出すと、身体は水の底へ沈んでいく。湖面の上に月が見えている。
最後に逆転した役
海底摸月
今度こそ、きち子が呼んでくれたんだ。
ゆっくりと、意識が薄れる。
意識が途切れる寸前、全身に衝撃が走る。そして声が聴こえた。
「生きろよ、強くなれよ」
それは、きち子とは違う声。
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