想い想われ恋い焦がれ

周乃 太葉

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14.本屋にて

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ジュリはカリムの病室を後にし、そのまま外科棟を出てニコラの診察室に向かった。

ニコラの診察室は魔術魔導棟にある。外科棟からは歩いて15分ほどかかる。病棟間のシャトルバスもあったが、ジュリは歩いていくことにした。

その間、さっきのカリムの話を振り返っていた。

昔…

お祖父ちゃん…

お祖母ちゃん…

イーサン…

うーん…
……
………

『ねぇ君には神頼みしたいことってある?』

ジュリはハッと顔を上げた。

今のは…?

何?

あれは誰?

ジュリは立ち止まって考え込んでしまった。


「……リ、ジュリ」

「イ、イーサン」

「こんなとこでどうしたの?」

ジュリは魔術魔導棟の入口の前に突っ立っていた。

「えっ?あっ、あれ?い、いや、なんでもないよ」

「変なジュリ。ここじゃ邪魔だから行こうか。父さんのとこ行ってたの?」

イーサンが歩き出したので、ジュリも続いた。

「う、うん」

「有難うね。俺は午後行こうかな。ジュリは午後用事あるんだよね?」

ジュリはあっ…と予定をすっかり忘れていたことを思い出した。

「そ、そう。学校時代の先輩と久々に会うんだ」

「いいね。楽しみだね。何時待ち合わせ?」

「えっと…専門店街の本屋に3時だよ」

「午後の面会時間が始まったの後だね。じゃあ、お昼付き合ってよ」

「もちろん」

するとイーサンはジュリに手を差し伸べた。ジュリは驚いたが、躊躇いながらイーサンの手を取った。
イーサンはご機嫌に病院前のレストランに向かった。
すると、ジュリが

「そういえば、検査は無事終わった?」

「うん。問題なし」

「良かった」

「でも、今日もニコラ先生の小言は止まらなかったよ。まだまだ止めどなく出てきてたよ。そのせいで数値が悪くなるかと思った」

「あははっ」

イーサンとジュリはレストランで食事をし、午後の面会時間が始まるまでそのままデザートとコーヒーを楽しんだ。

午後の面会時間が始まると、イーサンはカリムのところへ、ジュリは先輩との待ち合わせ場所へと別れた。

イーサンは病室に着くなりカリムからうっかり口を滑らせたことの謝罪を受け、先程のジュリの様子がおかしかったことに合点がいった。

一方ジュリは待ち合わせの本屋にいた。
待ち合わせには少し早く、先輩はまだ来ていないようだった。

そこで、ジュリは本屋の中を見て回ることにした。

…最近本見てないなぁ
どんな新刊出てるかな

「あれ?」

ジュリはカリムの病室で見かけた本を見つけ、手に取った。

“太陽と月”

最近話題になっている小説だった。

著者はサン・シェリヴ

切ない片想いの物語で有名で、次々に舞台化され、人気を博している。

カリムさん、意外とロマンチストなのかな?

ジュリはカリムの意外な一面を知ったようで、何気なくペラペラとページを捲ってみた。

『僕に命を、希望をくれた彼の方へ捧げます』

ある日…僕は会ったんだ。

太陽のような生命力に溢れた君に…

「その本、ここで読まないほうがいいよ」

「ヒャッ」

ジュリは驚きすぎて心臓が飛び出るかと思った。

「おまたせ~」

「先輩~。驚かさないでくださいよ」

「いやだって、ジュリ、さっきから声かけてるのに全然気付かないんだもん」

「あ…」

「まぁ、何にせよ。その本、立ち読みしないほうがいいよ」

「なんでですか?」

「号泣するから」

「え?」

「本びちゃびちゃになるほど泣くから」

「そんなに…」

ジュリは本を見てゴクリと唾を飲み込んだ。
先輩と合流したあと、思い出話に花を咲かせ、楽しいひと時を過ごした。
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