精霊師

雪飴

文字の大きさ
1 / 16
第一章 リザレス王国

Prologue

しおりを挟む
  ドンッ!!
 思い切り押された衝撃で身体が後ろに倒れていく。
さっきまで一緒に走って力強く握りしめてくれていた手が、今は私を突き放していた。
 (どう、して?)
 
「お兄さまぁぁぁぁぁ!!!」
 必死でレティシアは腕を伸ばすが、重力に従って身体は滝へと落ちて行く、最後に見えた兄の顔は微笑んでいた……。 
    

 一※九六年‥‥
 1000年以上続いた、精霊と人が共存する古くからの国。リザレス王国は滅亡した。
人が死に、自然が壊され、精霊も消えていく惨状は、誰にも止めることが出来なかった。
 王族は民を護ろうと、民は王族を護ろうと闘ったが軍事力も人数も倍の強さを誇る大国、ヴィエトルリア帝国には敵わなかった。
 後に、この戦争はリザレス 滅亡戦争と名付けられ、歴史に世界三大戦争の一つとして名を残す事になる。

     

      一※一二年‥‥
  精巧に作られた瑠璃色の絨毯じゅうたんが広がる廊下で三人の人物が扉が開くのを待っていた。
 髭を生やし、身体つきのがっしりしたブロンドの髪の男は、扉の前で落ち着きなくソワソワしている。
普段の威厳いげんがある、頼もしい背中は今は見られず、清潭せいたんな顔も眉間に皺が寄っていて崩れてしまっていた。
  その様子を見兼ねて、少女が溜め息をつきながら声を掛ける。
 
 「父様、落ち着いて。母様なら大丈夫よ、お医者様も問題無く産まれてくるだろうっておっしゃっていたじゃない」
 
  ブロンドの髪を肩下まで伸ばした可愛らしい少女が六歳とは思えないしっかりとした物言いでさとした。
  その様子を近くで見ていた、少女に良く似た髪色の少年も苦笑しながら呟いた。
 
「父上のこんな情けない姿は、とても国民には見せられないなぁ」

 ここ、リザレス王国では新しい命が誕生しようとしていた。
 部屋の中では、一人の女性が額に脂汗を流しながら周りの人達に声を掛けられている。
 それから、三十分後、産声を上げて産まれた赤子は五時間かけてようやく母親と対面した。
  閉じられていた扉が開き、侍女が廊下にいる三人に声を掛ける。
 
「おめでとうございます! 元気な可愛らしい女の子ですよ!」
 
 その言葉を聞くなり、それぞれ部屋の中に入り、赤子の側に駆けつける。
 ベッドの上では、疲れた様子のしかしそれ以上の笑顔を浮かべながら母親が赤子を抱いていた。
 
「うわぁ、産まれたばかりの赤ちゃんはこんなに小さいのね」
 
「髪の毛はプラチナで母上と一緒だ」
 
 母親に抱かれる様子を見て喋り出す子ども達を見ながら、夫は妻にお疲れ様と声を掛ける。
 
「ねぇ、この子の名前はどうするの?」
 
目線を上に上げ父と母の様子を見ながら、少女は呟く。
 その言葉を聞くなり、実はもう決めているのだと顔を綻ばせながら母親の手から自分の腕の中に移し、産まれたばかりの娘の顔を覗き込む。
 
「レティシア。この娘の名前はレティシアだ」
 
 こうして、家族に見守られながらリザレス王国第二王女レティシア・テオ・リザレスは生を受けたのである。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした

暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。 役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。 だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。 倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。 やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。 一方、病の裏で糸を引いていたのは………。 “無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

処理中です...