精霊師

雪飴

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第一章 リザレス王国

Chapter1-1

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 窓から太陽の光が入り、木々も風に揺られる天気のよい日、王宮の長く続く廊下も飾られた装飾と窓からの日差しが合わさってより美しい雰囲気を出していた。その静かな廊下の奥から一人のふくよかな女性が急ぎ足で廊下を歩く。
 
  「姫様~! レティシア姫~! 何処にいらっしゃるのですか?」
 
 女性は、声を出し周りをキョロキョロと見ながらある少女を探していた。最近6歳の誕生日を迎え落ち着いてきたと思っていたのだが、、一向に勉強部屋に姿を現さない様子からいつも通り逃げ出したのだろう、朝はしっかりと授業を受けていただけに油断をしていたと後悔する。自分より幼い少女の方がお城の中を熟知しているので見つけ出すのは困難だろう。
 
 「此処にはいないのかしら、お城の人達に聞くしかないわね」
 
 今、探している場所にいないと感じたのかポツリと呟きながら元来た道を戻っていく、誰も居なくなった廊下には静寂が訪れ窓から入る風が優しく流れていた。
 
  王宮の中でも際立った美しさの庭は、王妃自らが手掛けている程で薔薇や百合といった一般的な花から、ヒスイカズラ、エキウムローズクォーツなど珍しい色取り取りの花が咲き誇っている。
 花に興味の無い者も凄いと言わざるを得ないだろう。春夏秋冬咲き続ける花々は、魔法で温度をそれぞれ管理している為、季節関係なく咲かせる事ができているのだ。
 其れでも、その花の特徴をよく理解し適切な温度と育て方をしなければ難しい、そしてその手入れされた庭の中で隠れるようにして少女がしゃがんでいた。
 
 「何とか逃げだせたわ、テイラったらしつこいんだもの、此処までくればきっと大丈夫ね」
 
  銀色の髪を長く伸ばしたまだ顔立ちの幼い少女が小さな声を出した。水色のフリルの付いたワンピースが少女の可愛らしさをより引き出しているのだが、汚れるのも御構い無しにスカートの裾は地面に触れている。 
 そして、今朝丁寧にとかれた髪の毛はボサボサになっていた。
 この少女こそ、先程探されていた張本人の姫様である。
 
 「よし、移動しよっかな~」
 
  小さく独り言を呟くと暫く庭に居たレティシアは行動を開始する。自分を探している者達に見つからず、城の中をうろうろするのは中々にスリルがあって楽しいのだ。そんな事を思いながら、一階の廊下の柱の陰に隠れていると、後ろから近づいて来た人に声をかけられる。
 
 「こらっ、また授業を抜け出して来たの?」
 
 突然言われた言葉にびっくりして後ろを振り向けば、そこには見知った顔の人物が立っていた。
 
 「何だ、姉様か~驚いた」
 
  声をかけてきたのは、レティシアより6つ年上の姉、リリアン•テオ•リザレス 父親似のブロンドのウェーブがかった髪と翠色の目をした顔立ちの整った美少女だ。

 レティシアは見つかったのが、侍女テイラではなく自分の慕う姉であった事に安心する。
 
 「テイラが探していたわよ、駄目じゃないちゃんとお勉強しないと」 

  妹を見て、相変わらずの御転婆な様子に苦笑しながらたしなめる。
 
 「だって、退屈なんだもの礼儀作法とかダンスとかやってられないわ、私も兄様みたいに剣術を習いたいのに‥」
 
 視線を地面に向け、ぼそぼそと呟きながらいじける姿に苦笑する。今更、勉強に連れ戻した所で時間もごく僅かだ、今回は諦めるしかないだろう。今もまだ必死に妹を探しているであろう侍女に心の中で謝りながら妹に話しかけた。

  「そういえば今は、レオンが練習場で剣の練習をしている時間ね?」
 
 話しながらちらっと妹の様子を見れば、レティシアは分かりやすく反応する。
 
「見たい! 姉様早く!」
 
 見に行く事は既に決定事項らしく、急かす様に腕を引っ張ってくる妹に、こうなる事が分かっていたリリアンはされるがままに着いて行った。

            *       
 
 練習場では練習に勤しむ騎士達の中で、周りと比べると小柄な少年が一人剣を振るっている。
 
「レオネルト様、そこは腕では無く。脚と腹に力を入れるのです! 軸がしっかりしていれば相手の剣を受け止めれます!」
「はい! もう一度お願いします!」
「では、もう一度!」

 レオネルトと呼ばれた少年は、レオネルト•テオ•リザレス。リリアンと同じブロンドの髪と翠色の目をした利発そうな美少年はリリアンの双子の兄である。

 素直に指摘を受け止め、言われた事を実践するレオンに指導役の騎士団長も再び剣を構える。
 
「行きます!」
 レオネルトが再び剣を打ち込もうと、地面を蹴った時だった。

「兄様~~!!」
 可愛らしい元気な声が耳に入ってきたレオネルトと騎士団長は、二人して動きを止める。
 離れたところから此方に向かって走ってくるのは銀髪の妹と、さらにその後ろからゆっくり歩いて向かってくるのは、ブロンドの髪を腰まで伸ばした双子の妹だった。

 綺麗な髪を乱しながら、全速力でこっちに向かってくる妹に慌てて剣を鞘にしまい両手で向かい入れる。
 
「ティア、走ってきたら危ないよ?」
「大丈夫よ! 転ばないから!」
 両手で抱きつきながら、コロコロと笑い。兄様に会いに来たのよ!と言われて仕舞えば、妹に弱いレオネルトはそれ以上注意出来ない。

「レオンもティアには、弱いわね」
「リリアだって僕と同じだろう?」
 後から、追いついたリリアンが兄に発言すれば。それはお互い様だと笑いながら顔を見合わせた。

「ティア、観にくるのはいいけど。レオンの練習の邪魔したら駄目よ」
「うぅ、ごめんなさい」
 兄に抱き上げられ、自分と同じ目線になった妹に優しく注意すれば、素直な妹は兄と微笑ましそうに見ていた騎士団長にペコリとお辞儀する。

「いえいえ、とんでもない! 相変わらずご兄弟仲が宜しくて何よりです!」
 小さな少女に謝罪されれば、その可愛らしさに許す以外の選択肢が無い騎士団長は敬礼をして、去っていった。
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