叡知の夢

松本羊平

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同の章

月に願いを 前編

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麻綾(悪霊悪魔に憑依された鈴夜との戦いから7日。8月1日(木)の陽の刻。ついに新月の日を迎える。叡知は、大和図書館で普段知ることの出来ない知識を蓄える過程で、六壬神課式盤に尾宿曜星(あしたれぼし)の紋章を刻んだ。)

麻綾(また、この頃には凌犯期間(2019年7月9日(火)から2019年7月31日(水))が終了。さらに、新月の日と言うこともあって、妖魔が著しく弱体化。朱雀に憑依された亜樹は、残り少ない怪鳥族をまとめて鳳閣楼に立て篭もる。)

麻綾(朱雀に憑依された亜樹ら怪鳥族を撤退に追い込んだ亜里沙達(元春と美樹)は、後は叡知と彩夏・・・引いては亜樹に託して、子午線の古城跡から撤退。また、各地の宿曜師達も、妖魔の襲撃を阻止。)

麻綾(後は、8月7日(水)までの警戒を怠らなければ、それ以降の8月8日(木)の半月の日以降から束の間の休息となるだろう。)

麻綾(次の凌犯期間(2019年12月17日(火)から2020年1月12日(日)。2020年1月25日(土)から2020年2月9日(日)。2020年2月24日(月)から2020年3月8日(日))で、は、長期凌犯期間となり、前触れとなる2ヶ月前は、10月16日(水)。)

麻綾(亜里沙は、元春と美樹を水晶堂に招いて、今後の方針を告げる。そんな中、元春は大和図書館に入って以来、音沙汰の無い叡知と、乱戦の最中、逸れてしまった彩夏を心配していた。)

元春「叡知が大和図書館に入って、すでに7日。やはり、相性が安に中距離とは言え、超人と一般人では話にならなかったか・・・彩夏も以前行方不明・・・。」

亜里沙「心配には及びません。全て計画通りです。叡知のことですから、既に攻略した上で、この日を待っていたのでしょう。」

美樹「そっか♪下手に、心宿曜星(なかこぼし)の紋章を刻めば、新月の日以外に、朱雀に憑依された亜樹と戦うことになるもんね。でも、新月の日は、私達月神(シャトラ)の眷属の月兎のDNAが働かないよね?」

亜里沙「訓練次第で、ある程度は月の性質が無くても、実力は発揮出来ます。それに、月兎のDNAが働く=妖魔が本領発揮している時。まして、邪神の一角の朱雀に対抗するには、新月の日を置いて他ありません。」

元春「となると、叡知にとって、彩夏と合流して、恕の心宿曜星(なかこぼし)の紋章を刻んで、亜樹を解放して、実力の源の一つを取り戻す絶好の機会。叡知にとっては、重要な重要な日になるだろうな。」

亜里沙「後は、叡知次第です。ですが、これが旨く言っても、天空、勾陳、玄武、白虎が残っていて、新月の日に対して対策を練るのは勿論、何より、羅刹の剣を所持した勇樹にこの時点で敵う者がいないと言うこと。彼との戦闘は全力で避けなければなりません。」

美樹「お兄ちゃん・・・。」

亜里沙「美樹、安心して下さい。きっと叡知が、甘露の珠を入手して、貴女の手に届けてくれます。そこで相性の優位性を利用して、私達は玄武に憑依された智恵ら怪魚族に挑む準備をしましょう。」

元春「となると、叡知達は、勾陳に憑依された吉平。鈴夜達は、天空に憑依された美緒。叡知はともかく、鈴夜が思い通りに動いてくれるか?それに、奴らの中には、軍門に降った宿曜師もいると聞くが?」

亜里沙「今は、朱雀戦に専念しましょう。どの道、凌犯期間が過ぎても、運気の移行段階となる8月8日(木)の半月の日までは警戒を怠ってはいけません。」

麻綾(亜里沙は、叡知の勝利を確信し、来るべき決戦の計画を提示して、準備に取り掛かる。一方、鳳閣楼に立て篭もった朱雀に憑依された亜樹は、叡知の撃破による一発逆転の計画を試行錯誤する。)

亜樹(今日は新月の日。また、彩夏との合流=恕を正気に戻して、六壬神課式盤に心宿曜星(なかこぼし)の紋章に刻んだと言うことを意味するわね。)

朱雀(貴女まさか・・・始めから・・・。)

亜樹(何をそんなに恐れてるのよ?弱体化すると言っても、私達よりは強いんでしょ?元春が、彩夏と合流していない以上、相手にするのは叡知と彩夏の2人じゃない?男女2人の仲を裂く同宿の特性(相剋)の使い時じゃないの?)

朱雀(・・・。)

麻綾(朱雀は、亜樹のなり振り構わない行動の意図を理解した頃には、全てが遅かった。一見、1対2だが、亜樹を掌握し切れていない以上、実質1対3の上、新月の日によって弱体化とあっては、勝機等ありはしない。)

麻綾(自身の敗北を悟った朱雀は、可能な限り叡知達の情報を収集の後、勇樹や天空達に伝達する他なかった。一方、鈴夜と恕の来訪を待つ真悟は、タロット占いをする。使用するのはマルセイユタロット。展開する方陣(スプレッド)は、スリーカード・スプレッド。)

真悟(① 現在 は、7の戦車。②過去は、18の月。③未来は、16の神の家か・・・そこに、小アルカナとコートカードを補足して、①棒の7。②剣の9。③棒の5か・・・。)

真悟(20年前のツケが、今日に回って来たが、室宿曜星(はついぼし)の系譜を継承した叡知の迅速な行動は、今回の戦いの勝利を確信しているって所だな。)

真悟(それでも長期凌犯期間は、きつい展開になるだろうし、どういう風な異変かは具体的には分からねえが、俺様達宿曜師は、発生2ヶ月前に覚悟を決めるのは常識だしな。)

真悟(それよりも気になるのは、②過去は、18の月・・・叡知が俺の見込んだ通りなら、今日恕に会うだろうな。彼奴は、月の民と言う噂が立つくらい月に精通しているからな。朱雀に憑依された亜樹の攻略前に、色々聞いとくのも悪く無いかもな叡知。)

麻綾(真悟もまた、叡知の勝利を確信しつつ、長期凌犯期間を見据える。一方、鈴夜と共に、大和図書館に滞在していた叡知も、主に月に関する資料を閲覧していた。)

鈴夜(サイキックの意見を聞きましょう。今こそ絶好の時。)

叡知「鈴夜。読書もええけど、目を休まさんとあかんで。」

鈴夜(あっ・・・吐息が・・・。)

叡知「それにしても、目の下の隈が中々取れへんな。まあ、無理も無いな。僕が除霊した悪霊悪魔以外にも、色々憑依してたしな。」

鈴夜「優しいのね。20年前の貴方は、見境なく相手を傷つける怖い人のイメージだったけど、この7日、貴方と交わってみて、それは誤解だったみたいね。」

叡知「今も本質的な所は変わらんで。強いて言うなら、あの時と今との違いは、自分を含めたみんなのために出来る限りのことをしたいだけや。」

鈴夜「黄金の杖の一節。手相占い師が、ケイロンの集合を見出しました。みんなのためにやりなさい。貴方は、それを計算ではなく、自然とやってのける所が凄いと思うわ。彩夏が惚れる訳ね。」

叡知「僕も、もう少し鈴夜と交わりたいけど、彩夏や亜樹が強いとは言え、かなりの日数が経過してるから、そろそろ助けに行かんとな。」

鈴夜「私も行くわ叡知。彩夏と合流して、恕との交渉の際に、満月や新月について良く聞いておきなさい。特に、新月の日は、妖魔が弱体化する日だから、朱雀戦以降も有効活用しない手は無いわ。それに真悟が、私と恕を待っているみたいだしね。」

叡知「分かった。今日は、新月の日。この機を逃すと、態勢を立て直すかもしれんしな。」

鈴夜「決まりね。SAIVIAN(サビアン)天文科学館は、ここからすぐそこよ。急ぎましょ。」

麻綾(叡知は鈴夜を伴い、SAIVIAN(サビアン)天文科学館に向かう。)
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