叡知の夢

松本羊平

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命の章

二十七の宿曜星(ナクシャトラ) 前編

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麻綾(あれから10日が経過して、6月2日(火)。凌犯期間(6月2日(火)から6月28日(日))が発生。羅刹の剣に回帰した六凶星(騰蛇、朱雀、天空、勾陳、玄武、白虎)は、高まる陰の波動(マナ)で最恐最悪の破壊神である金神を呼び覚まそうとしていた。)

朱雀(早いものね。叡知が羅刹の剣を手にしたのも21年前だもんね。本来は、あの時に叡知の肉体と精神を奪うつもりだったけど、あの子は上智主義(グノーシス)の幹部である五行星の首級を上げると、すぐに女陰候の墓に奉納してしまったのよね。)

天空(その幹部の内、水を司っていた女性がいたけど、彼女だけは心の底から世直しのために戦っていて、叡知も直前まで殺すのを躊躇っていましたわね。その様子からあの子は思い通りには出来ないと見て、実力の根源を奪う事にして今日に至った訳ですわね。)

勾陳(上智主義(グノーシス)の事件から今回までを含めて叡知は6回の異変に挑んで来た訳だが、5回目の電波障害の異変で、勇樹との戦いで彗が落命して、室宿曜星(はついぼし)の宿曜師の座を引き継いて、単身羅刹の剣を所持した勇樹に挑んだ。)

玄武(言わば今回の異変は、叡知の21年間を振り返る出来事でもあるのぅ。どの異変もそうぢゃが、儂が憑依した智恵は序盤と中盤は叡知の前に立ちはだかるが終盤では味方として母子共に異変の首魁を倒して来よったのぅ。)

白虎(だが、今回はそうは行かない。全ては最恐最悪の破壊神である金神を勇樹の肉体に宿し、大和の秩序・・・引いてはセルフ界そのものを崩壊させ、その余波を持って全ての異世界を無に帰すため・・・。)

騰蛇(では、愈々お待ちかねの金神様の降臨だ。と言う訳だ勇樹。此処までご苦労だったな。お前のような出来損ないの世話にも飽きた。何処へなりと失せろ。)

勇樹(なっ・・・何をする騰蛇!?)

麻綾(勇樹は騰蛇によって、肉体から精神を切り離される。その直後に、金神の精神が勇樹の肉体に宿ると、八将神のもとに向かう。)

一同「金神様!?」

金神「此処まで良く頑張ってくれた。早速だが6月6日(土)の射手座の満月(部分月食)の日に天帝山の五帝龍神廟を攻め込むに当たって、彼岸花の社に向かう。」

金神「当然、奴等もそれを阻止しようと手を打って来るだろうが、此処に奴等の複製を仕向ける。また、我が企みを気取られないように暗黒生命体には、これまで通り、五帝龍神廟、四神館、五輪塔(タットワタワー)を襲撃させておく。」

金神「その間に我等は彼岸花の社に集結と同時に、八陣を展開して一気に攻め上がる。其処で大歳神には北の休門に配置してもらう。」

大歳神「御意!」

金神「大将軍は北東(表鬼門)の生門!」

大将軍「御意!」

金神「太陰神は東の傷門!」

太陰神「御意!」

金神「歳刑神は南東の杜門!」

歳刑神「御意!」

金神「歳破神は南の景門!」

歳破神「御意!」

金神「歳殺神は南西(裏鬼門)の死門!」

歳殺神「御意!」

金神「黄幡神は西の驚門!」

黄幡神「御意!」

金神「豹尾神は北西の開門!」

豹尾神「御意!」

金神「宜しい。それまでは、これまで通り、中宮府の八角の門に配置し、奴等の侵入を許すで無いぞ。」

金神(ふふふ。見ておれ龍神よ。御主の愛した大和が一夜にして崩壊する様をな!)

麻綾(金神は八将神に天帝山の五帝龍神廟の攻略の旨を伝えると同時に、龍神への無力さを嘲笑する。一方、鋭気達(亜樹と利沙)は、五帝龍神廟と五輪塔に隣接する山海(丑寅・卯町)の四神館にて、暗黒生命体を迎え撃つ。)

亜樹「やっぱり上弦の月以降は、向こうの攻勢は激しさを増すばかりね。此奴ら暗黒生命体は、羅刹の剣の陰の波動(マナ)を鎮めない限り、際限無く出現するのよね。しかも中宮府の方では、また得体の知れない波動(マナ)を感じるし・・・。」

鋭気「其奴と八将神は、間違い無く6月6日(土)の射手座の満月(部分月食)の日に出撃して来るだろうな。これまで通り、美樹のいる五輪塔(タットワタワー)かそれとも龍神の結界を破るために五帝龍王廟なのかを予測しない事には一方的にやられてしまうな。」

利沙「あたしは後者の可能性が高いと思う。奴等が如何に強大でも劣勢な状況を打破するには魔切り法に乗っ取って彼岸花の社から一気に北東(表鬼門)の五帝龍王廟を突破する方が可能性がある。態々、羅刹の剣の効力を抑え込む甘露の球の元には行かないだろ。」

鋭気「それもそうだな。既に亜里沙派(保守派)と鈴夜派(革新派)も得体の知れない強大な波動(マナ)を感知して備えに動いている。南西(裏鬼門)の彼岸花の社の方は、智恵達(達哉と司龍)が何とかしてくれる事を信じるしか無いな。」

麻綾(かくして亜里沙派(保守派)は、北斗七星山の天地の祭壇。鈴夜派(革新派)は、鋭気達(亜樹と利沙)と入れ替わりで四神館に到着し、鋭気達(亜樹と利沙)は天帝山の五帝龍王廟と、暗黒生命体を撃破しつつの配置転換を完了させる。)

麻綾(全ては、金神ら八将神を天帝山の平野部に誘き出すために・・・一方、叡知達(彩夏、達哉、智恵、司龍)は風魔の里におり、中宮府から得体の知れない強大な波動(マナ)を感知する。)

達哉「凄まじい波動(マナ)だ。勇樹や六凶星(騰蛇、朱雀、天空、勾陳、玄武、白虎)等比べ物にならない。まさか金神が・・・彰の話では、俺達を複製した究極の暗黒生命体を創生したと聞く。それが八将神と共に動くとなると・・・。」

智恵「金神が六凶星(騰蛇、朱雀、天空、勾陳、玄武、白虎)を始めとした陰の波動(マナ)の頂点なら、その対極に位置する六吉星(貴人、六合、太陰、太常、青龍、天后)や龍神は陽の波動(マナ)の頂点ぢゃ。」

司龍「此方も美樹の手に甘露の球がある。後は、龍神を呼び覚ませば、金神や八将神とも互角に戦えるけど、それだけでは対等になっただけ・・・やはり、壁宿曜星(なまめぼし)の紋章を六壬神課式盤に刻んで宝珠の都市に赴き金剛峯鏡を入手しないといけないな。」

智恵「そう言う事ぢゃ。6月6日(土)の射手座の満月(部分月食)の日の直前まで生命(ライフ)と波動(マナ)が万全の儂等に全てが掛かっておる。彼岸花の社は儂等(達哉と司龍)が引き受ける。麻綾の事は頼むぞ叡知、彩夏。」

叡知「分かった。」

彩夏「叡知・・・麻綾の事を考えない日はなかったんだね?あたいもそうだよ。彰も危険を承知で先に進む事を認めてくれたんだし・・・ね?」

麻綾(智恵達(達哉と司龍)が彼岸花の社に赴く以上、私との交渉には叡知と彩夏の2人で挑む事になる。事情が事情とは言え、九星殿から別行動になって以来、今日まで独りにさせてしまった事に2人は申し訳無い気持ちで一杯だった。)

麻綾(一方、亜里沙派(保守派)は、暗黒生命体を撃破しつつ、ようやく北斗七星山の天地の祭壇に到着する。美緒達(仁と康史)や一樹達(美言と亜矢)に戦闘を任せて、亜里沙達(元春と美樹)は小休止を取る。)

元春「少々手間取ったが、何とか配置転換は完了したな。」

亜里沙「そうですね。水晶を幻視(ヴィジョン)をするまでも無く、金神が降臨しましたね。行き場を失った勇樹の精神は、恐らく美樹のもとに来るでしょう。勇樹の精神を美樹の陰の波動(マナ)のものとし、鏡の中の自分に打ち克てば彰を凌ぐ事も出来るでしょう。」

美樹(お兄ちゃん・・・。)

麻綾(亜里沙もまた、過去の出来事と向き合うとしていた。)
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