叡知の夢

松本羊平

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命の章

二十七の宿曜星(ナクシャトラ) 中編

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麻綾(あれから4日が経過し、6月6日(土)の射手座の満月(部分月食)の日の陽の刻。金神は、27人の宿曜師を複製した究極の暗黒生命体を差し向け、自身は八将神と共に、彼岸花の社に向かい、満月の波動(マナ)のピークである丑三つ時(2:00~2:30)まで待つ。)

麻綾(これまで相手にして来た妖魔に変幻する暗黒生命体は無尽蔵に増えてキリがなく、疲労困憊の上、白虎戦まで情報を元に創生された究極の暗黒生命体も相手にしないと行けない状況に一同は絶望する。)

麻綾(そんな中、唯一情報が皆無の彰の複製は彰によって浄化され、美樹もまた甘露の球で増幅した陽の波動(マナ)で自身の複製を浄化した上で、亜里沙と元春にも甘露の球の陽の波動(マナ)を分け与える。)

麻綾(2人は自身の生命(マナ)と波動(マナ)を極限まで高めて神威の波動(マナ)を発動させ、自身の複製を浄化する。其処に、一体の暗黒生命体がやって来る。亜里沙達(元春と美樹)は、それが勇樹だと確信する。)

勇樹「このような形で、会う事になるとはな・・・流石は亜里沙。過去の出来事に決着をつけて神威の領域に到達するとは見事なものだな。恐らく、他の連中もキッカケがあれば神威の領域に到達するのだろうな。」

亜里沙「勇樹・・・私は・・・。」

勇樹「21年間・・・俺は、虚無の空間で過ごした時間は恐怖と絶望しかなかった・・・俺は俺を拒絶した全てのものに復讐するために、羅刹の剣を手にした。結果、この有様だが、俺は破壊の限りを尽くして満足さ。」

亜里沙「それは貴方の本心ではありませんね。貴方がその気になら、そもそもとっくに大和に秩序は崩壊しています。私が貴方を封印した時も、白の彼岸花のピアスだけは死守しました。それは、美樹を想う心が無意識に制限を掛けていたためです。」

勇樹「・・・神威の領域による水晶の幻視(ヴィジョン)か・・・俺が此処に来たのは、美樹の欠けた陰の波動(マナ)の一部になるためだ。」

美樹「お兄ちゃん・・・。」

勇樹「だが、覚悟しておけよ美樹。21年間味わった虚無の空間の恐怖と絶望をお前は追体験し、もしかすると精神が崩壊してしまうかもしれない。」

美樹「その時はお兄ちゃんが斗宿曜星(ひつきぼし)の宿曜師として、みんなを助けてあげてね。」

勇樹「分かった約束しよう。その前に亜里沙に一言言わせてもらう。あんまり人の心を見透かすのは良い趣味とは言えないぞ?」

亜里沙「そうですね。では私から最後の一言言わせてもらいます。お帰りなさい・・・勇樹・・・。」

元春(亜里沙と美樹は過去の因縁に決着がついた。他の者も神威の波動(マナ)を発動させて自身の複製を浄化するだろう。後は麻綾だが、夢幻郷の彼岸花の社の南西(裏鬼門)にある逢魔時の屋敷の封印の座敷牢に幽閉しているがかなり危険な状態・・・頼んだぞ叡知。)

麻綾(亜里沙の目から涙が流れる。まるで溶けた氷が水となって流れるように・・・美樹は勇樹の精神を受け入れる。2人はそれぞれが歩んで来た軌跡を追体験・・・次第に両者の魂魄が統合されると、美樹は再び立ち上がり、甘露の球の輝きが増した。)

麻綾(元春の予想通り、他の亜里沙派(保守派)、鈴夜派(革新派)、鋭気達(亜樹と利沙)も、神威の波動(マナ)を発動させて自身の複製を浄化!また、甘露の球の陽の波動(マナ)によって、羅刹の剣の陰の波動(マナ)の効果が半減する。)

麻綾(これにより、暗黒生命体の出現が僅かながら減少!尚且つ、十二天将星の超霊場(パワースポット)の結界が強化され、暗黒生命体は区域内への侵入は出来なくなった。残りの究極の暗黒生命体は、叡知、彩夏、達哉、智恵、司龍、そして私のみ。)

麻綾(叡知達(彩夏、彩夏、達哉、智恵、司龍)は、その事を察したのか、風魔の里を出ると幻惑の樹海、月の都輝夜、月詠の竹林と十二天将星の超霊場(パワースポット)の結界内を経由して逢魔時の屋敷を目指していた。)

彩夏「天地の祭壇、五帝龍王廟、四神館の方から強大な波動(マナ)が一つまた一つと増えているね。それと関係しているのか知らないけど、暗黒生命体とも遭遇しなくなったって事はこっちが優勢に働いているって証拠だね。」

叡知「流石に六凶星(騰蛇、朱雀、天空、勾陳、玄武、白虎)を祀る区域内は妖魔が出現するけど、彩夏にもらったこの魔除けの鈴があれば回避出来るし、幻惑の樹海も智恵達(達哉と司龍)の案内があれば、抜け道として利用出来るもんな。」

智恵「その魔除けの鈴の効果は、御主自身の実力と直結しておる。御主の金色に輝く神威の波動(マナ)を持ってすれば、十二天将星の超霊場(パワースポット)の結界内は安全に移動出来ると言う事ぢゃ。」

司龍「凄えな。彩夏の言う強大な波動(マナ)は、多分他のみんなが神威の波動(マナ)を発動させたって事だろ?現時点で超人の域を出ていないのは俺達(彩夏、智恵、達哉)と、麻綾だけって事になるよな?」

智恵「裏を返せば、そのキッカケとなる存在と遭遇したと言う事じゃ。儂等の目的地は言うまでもなく逢魔時の屋敷な訳じゃが、月詠の竹林を抜けた先に、其奴らが待ち構えておるはずじゃ。その際、叡知を中心としたギリシャ十字・スプレッドで夢幻郷に進入するぞ。」

達哉(彩夏の話では、麻綾は逢魔時の屋敷の封印の座敷牢に幽閉していると言う話。もし、智恵の見解通りなら、其奴は麻綾のもとに向かうはず。普段ならともかく、今の麻綾の精神状態を考慮すると憑依される可能性が極めて高い。)

麻綾(達哉と智恵の言う其奴とは究極の暗黒生命体の事である。例え自分達は打ち克てても、私と憑依すれば、六凶星(騰蛇、朱雀、天空、勾陳、玄武、白虎)以上の脅威となる事を達哉は危惧する。)

麻綾(そして、私は元春達(美言と仁)によって逢魔時の屋敷の封印の座敷牢に、運命の赤い糸で編み上げられた縄等の拘束具をつけられた上で幽閉されていた。この封印の座敷牢は、悪霊悪魔の憑依が同化の域に達した者を隔離するためにある。)

麻綾(本来、夢幻郷の波動(マナ)が悪霊悪魔の波長を合わなくした後、彼岸花の社で除霊を行う事で正気を取り戻すが、中宮府の区域内に位置する夢幻郷は、金神ら八将神達の手中にあるため、狂戦士状態の私を拘束する事で精一杯だった。)

麻綾(今宵は満月。私の中の月兎のDNAが高揚する中、何者かが私に語り掛けて来た。)

???(可哀想にね・・・愛しの叡知のために頑張った結果が、これじゃあね・・・。)

麻綾(誰?)

???(私に名は無いわ。貴女達の言う羅刹の剣から創生された暗黒生命体の中でもより密度の高い陰の波動(マナ)の塊が自我を持った存在。)

???(私は27人の中で貴女が1番気に入ったからこの姿を取る事にしたのよ。尤も、叡知達(彩夏、達哉、智恵、司龍)の姿を取った連中は既にやられちゃったけどね。)

麻綾(叡知・・・叡知・・・。)

???(貴女の愛しの叡知なら此処に向かっているけど、彼等の複製達が阻むから、そう簡単には来られないわよ。)

麻綾(・・・叡知・・・。)

???(そんなに叡知に会いたいなら、協力してあげなくも無いわよ?)

麻綾(本当?)

???(私が貴女の影として力を貸せば、こんな封印を解除する事は容易いわ。ただし、今の姿の貴女を見て、叡知が如何思うかは知らないわよ?)

麻綾(時刻は陰の刻。私は、彼女の提案に乗り、影に宿す。)
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