叡知の夢

松本羊平

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意の章

魔切り法 後編

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麻綾(桃矢と叡知が一対一をしている頃、元春(美言と仁)は、彩夏達(司龍と利沙)との合流を果たす。)

司龍「彼岸花の社は奪取して置いたぜ。」

美言「流石ね。これなら、妖魔群(龍蛇族、怪鳥族、幻妖族、金剛族、怪魚族)の猛攻を凌げば、狂戦士状態の麻綾を抑えに行く事が出来るわね。ただ、五帝龍王廟と五輪塔(タットワタワー)に残した面々に不安があるのも確かね。」

彩夏「恕の事だね。彼奴とは一度手合わせした事があるけど、かなりの手練れだったね。あの時のあたいは、狂戦士状態だった事と、恕が亜樹の意識が邪魔して実力を発揮し切れていなかったから勝てたけど、そうで無ければどうなっていたかね。」

元春「出来れば、早目に決着をつけて戻りたい所だが、新月の日は奴等も弱体化する事を理解しているから防御を固めていて簡単には崩せない。まして、栄・親や業・胎の相性で組んでいる私達は特に警戒している筈だ。」

利沙「となると、叡知達(桃矢と智恵)が狙われる可能性が高いな。中亭の妖魔は絶対通さないが、下亭の妖魔もなるべくは通さないつもりだが、満月の日が近づくに連れて、遭遇率も上がって行く事になる上に白虎自ら来る可能性もあるって事だな。」

仁「でも、叡知にとっては最後の一押しを実践する良い機会だね。白虎と同化した美里ら魔獣族が何処から来るのか分からないなら、九星陣を展開して方陣(スプレッド)に入って来た所を斬り伏せれば九星八門陣だね。」

司龍「それなら白虎は益々叡知を狙う可能性が高くなるな。その時は、俺達(利沙と彩夏)がすぐに加勢に向かえば良いんだな。鋭気達(達哉と亜樹)に遅れを取る訳には行かないな。」

麻綾(会話もそこそこに彩夏達(司龍と利沙)は、陰陽館に引き返す。その頃には桃矢と叡知の一対一に決着がつく。そんな中、智恵は白虎と同化した美里ら魔獣族の動向を探っていた。)

智恵(美里が白虎と同化してから、かなりの月日が経過しておる。出来れば今すぐにでも決着をつけたいが、こうも防備を固められては手も足もだせん。5月7日(木)の蠍座の満月の日に綻びが生じるまで待つしか無いのぅ。)

智恵(ぢゃがそれ以上に気掛かりなのが・・・どれ様子を見に行くかのぅ・・・。)

麻綾(智恵はそう思うと私のいる竹取砦を目指す。大胆にも魔獣族の区域を突破してきた智恵と魔獣族の返り血を浴びた私と対面する。)

麻綾「・・・智恵?・・・此処数日の記憶が・・・それに身体が・・・。」

智恵「御主には迷惑を掛けたのぅ。済まなかった。ぢゃがもう少しの辛抱ぢゃぞ。順当に行けば6月6日(土)の射手座の満月(部分月食)の日に叡知が御主を訪ねる。その時は思う存分甘えるが良い。」

麻綾「・・・叡知・・・叡知・・・叡知・・・。」

智恵(今は叡知の居場所を言わん方が良いな・・・実質、白虎との戦いは始まっておるしのぅ・・・。)

智恵「叡知の代わりにはならんぢゃろうが、暫く儂が側にいてやろう。先ずは風呂に入って身形を整えんとな。その後は飯ぢゃ。」

麻綾(智恵は傷ついた私に寄り添う。一方、桃矢と叡知は、本格的に魔切り法の特訓が開始される。)

桃矢「良いか叡知。今回の白虎戦は、白虎と同化した美里を俺達のもとに誘き寄せる事が重要だ。その上で、狂戦士状態になった麻綾が乱入する前に決着をつける必要がある。」

桃矢「晴れて美里を解放して救出して意識を回復させれば指紋が戻って来る。後は天后と対面すれば奇門遁甲の勝利の活用術その6(通霊術)が使用可能になる。」

桃矢「今から人の想念をはね返す観音経。悪霊祓いの陀羅尼品を唱えてもらう。先ずは、観音経を100回読み上げだ。」

叡知「呪詛諸毒薬(しゅそしょどくやく)、所欲害身者(しょよくがいしんじゃ)、念彼観音力(ねんぴかんのんりき)、還著於本人(げんじゃくおほんにん)。」

麻綾(叡知は観音経を100回読み上げた。)

桃矢「良し次は、陀羅尼品だ。」

叡知「痤(ざ)誓螺反、隷(れい)一、摩訶痤隷(まかざれ)ニ、郁枳(うつき)三、目枳(もつき)四、阿隷(あれ)五、阿羅婆第(あらはて)六、涅隷第(ねれて)七。」

叡知「涅隷多婆第(ねれたて)八、伊緻(いち)豬履反、呢(に)九、韋緻呢(いちに)十、旨緻呢(しちに)十一、涅隷緻呢(ねれちに)十二、涅犂穉婆底(ねりちはち)十三。」

麻綾(叡知は陀羅尼品を100回読み上げた。)

桃矢「まあ良いだろう。勇樹に彗が殺され、後を引き継ぐ形で室宿曜星(はついぼし)の宿曜師になった。」

桃矢「お前にとって彗は最愛の妻であり、恋人あり、母親。当然、復讐心に駆られているだろう。」

桃矢「だが、しかし、彗の復讐を果たし、晴れて天帝の座についたとしても、古き因習は勇樹によって破壊され、新たな秩序の構築が必要になるだろう。」

桃矢「これまで通り、月神(シャトラ)の眷属の支配による秩序か・・・自由の名の下に実力者が成り上がれる混沌か・・・。」

桃矢「俺がお前なら後者を望むが、残念ながら俺にそんな資格は無い。さあ、お前はこの先どうするつもりだ?」

叡知「選択肢はもう1つあるで。月神(シャトラ)の眷属が、他の者に寄り添う。これなら、月神(シャトラ)の眷属の沽券も維持しつつ、お前の言う実力者も活躍出来るやろ。」

桃矢「要は中庸の道か・・・悪くは無い。お前にとっては、秩序と混沌の狭間で踠き苦しんで、見出した光明だもんな。」

桃矢「だが、事此処に及んで、古い因習に囚われている者一定数はいるもんだ。」

叡知「保守派(亜里沙派)の事か?亜里沙はともかく、元春、美樹、仁、美緒、康史、美言、一樹、亜矢はそうは思わんけどな。」

桃矢「真悟が自分達の楽しい場所さえあれば良いように、その8人に関しては、自分達の区域内の安全さえ保証されればそれで良いが、亜里沙にとっては以前の体制そのものが全てだった。」

桃矢「それが瞬く間に失ってしまった。その一端がお前にもあるとなれば、尚更心穏やかでは無いだろうよ。」

叡知「それは性交渉してる時にも感じてた。手に余るからと言う理由で、大人の都合で消されそうになってたとは言え、あれが月神(シャトラ)の眷属の支配による秩序に綻びが生じる事になったもんな。」

桃矢「その事で亜里沙は確実に不幸になったかもしれんが、鈴夜を始め他の連中は寧ろ感謝しているぜ。あの時、お前の行動が無ければ、とっくの昔に大和は滅んでいたかもしれんしな。」

叡知「桃矢・・・。」

桃矢「中立派(叡知派)は言うまでもなく、革新派(鈴夜派)のみんなはお前に好意的。保守派(亜里沙派)も亜里沙以外は、お前に好意的。」

桃矢「そこで提案だが、月神(シャトラ)の眷属以外の連中で、この戦いを生き抜いた実力者の中で選りすぐりを一員にすると言うのはどうだ?」

桃矢「純潔至上主義の亜里沙には面白く無いだろうが、どの道このままでは月神(シャトラ)の眷属の種の衰退一直線。」

桃矢「そもそも、月神(シャトラ)の眷属の祖先も、優秀な多種族と交わる事で今日に至る訳だ。行く行くはお前の言う理想にも繋がるがどうだ?」

叡知「それで行こか。」

桃矢「良し、それに相応しい九星八門符は天心開門符。明日から、十六夜平原の放牧地帯に出てもらう。その辺を踏まえてもう一度一対一だ。」

叡知「ありがとうな桃矢。」

麻綾(2人は再び一対一の戦いを始める。そして、胃宿曜星(えきへぼし)の紋章が六壬神課式盤に刻まれる。)
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