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傾向と対策のパズル

第5話

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 それから何時間寝てたのか…気がつくと、奈落は机の上でパソコンを開いて仕事をしているようだった。
 パソコンの向こうの相手と話していた。
 テレビ電話みたい…。

「クライアントへのプレゼンには新生院 直もキチンと出席するんだろうな。」
『条件は一緒だ。
 特別扱いをしない前提でこの仕事に就かせた。
 選別から今回の仕事に入っていない分、彼の方が不利だとは思うけどな。』
「でも、情報網は新生院のが使えるんだろ?」
『いや、それもこちらのルールに従って貰ってる。
 天童にも調査対応は平等にするように言ってある。』
「じゃあ、調査は天童さんの個人事務所が一括で請け負ってんのか?」
『だな。
 ま、奴ならこれくらいはやりこなせる仕事だ。
 独立して家を出たとは言え、元 華京院 幹部なんだからな。
 ひいき無しで協力して貰ってる。』
「マジで…条件一緒のタイマン勝負って訳だ。
 今月末のプレゼンで顔をしっかりと拝んでやる!」
『ガン飛ばすなよ。
 クライアントの前だ。
 表向きは冷静でいろ。』
「わかってるよ。
 これでも客の前での営業スマイルには定評があるんだぜ。
 客受けも仕事上では重要事項だからね。」

 どうやら爽さんと話してるみたいだ。
 
『ヤッホー。奈落。
 テレスだよ~ん。』
「うわっ!何だよ、なんでテレスがそこに居るんだ?」
『運動会の日程調整だよ。
 今年の実行委員だからさ。
 奈落の活躍、楽しみにしてるよ~ん。』
「そっか…アリスとテレスが実行委員だっけ。
 手加減しろよ。
 みんな、翌日は通常勤務なんだからな。」
『何言ってんの!せっかくのストレス解消の場なんだから、今年も魅せますよ。
 ま、期待しててよ。
 奈落は絶対出席!…って爽に頼んでおいたから。』
「勝手だなぁ。
 ま、主役がいないとダメだろう。
 今年も俺の華麗な技を見せてやるぜ!」
『期待してるよ。
 一応、梅雨明けの7月頃になるよん。
 じゃーね。バイちゃん!』
「バイちゃんって…変だぞ、それ!」

 アリスとテレスって凄い名前…双子かな?
 彼らも華京院かな…全部で何人いるんだろう。
 そういえば奈落も双子で神楽っていうお姉さんがいたっけ…会ってみたいな…。

 僕は布団の中で奈落の話しを聞き耳を立てて聞いて、あれこれ想像していた。

『ま、テレスの事は置いておいて。
 頼まれていた、被験者の母親の再就職先のメドがついた。
 とりあえず、ゴールデンウィーク明けに面接をして欲しいとの事だ。
 こちらが身元保証人というのであればと、快く引き受けて貰った大型保育園だ。
 詳細を後で手渡しする。
 バイト先の住所、電話番号、給料明細の準備もしてある。
 いつでも対応可能だ。』
「サンキュー!爽!
 さすが、上層部きってのやり手ジジイだ!
 仕事が早いねー!」
『誰がジジイだクソガキ!
 とにかく、今のペースは俺の理想通りだ。
 落ち着いてやれば、お前は出来る奴だ!
 頑張れよ。』
「おう!任せとけ!」

 もう早、僕の希望を次々と叶えてくれてるんだ。
 それが奈落の仕事なんだろうけど…仕事への意欲が半端ない家族なんだなぁ…。
 それだけやりがいが感じられるって事か…。
 イメージしか湧かないけど…きっと、切磋琢磨し合える環境なんだろうな。
 自分の成長を感じられる…。
 奈落と会ってからの僕も、少しは成長した気がするけど…もっと、快感になるくらいの成長と実績を手にする事が出来る家業なんだろうなぁ。
 
 ああ…運動会かぁ…。
 話しを聞いてるだけでワクワクする。
 本当に…もっと奈落の事やその家族の事を知りたくなってしまう…。
 何て魅力的な人達なんだろう…華京院って…。
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