忘却の魔法

平塚冴子

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脳内記憶研究所

第20話

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時間をかけてようやく目的付近まで来た。
小さな集落を抜けて、車は人里離れた山間の道をどんどんと進んだ。
そして…、目の前に大きな門が現れた。
『脳内記憶研究所』

「よし、時間もちょうどいい。
仁科 加奈子に電話をかけるぞ。」
ドキドキしながら震える指で電話を掛けた。

ピッ
「はい。『脳内記憶研究所』所長、仁科です。」
キター!
「初めまして。フリーライターの梶 塔矢です。
新生院 桔梗さんから指示がありまして、こちらに電話を…。」
「わかりました。今から門を開けさせます。
中に入って、左手奥に受け付けがあります。
受け付け近くに駐車場がありますので、車はそこに。
受け付け後はスタッフが案内に行きますので、渡されたIDカードを首から下げてお待ち下さい。」
「わかりました。よろしくお願いします。」

ピッ
電話を切って、門の開場を待った。
ギギギ…。
門が自動で開き、車はゆっくりと中に入った。
道を左手に曲がり、奥まで進むと研究所の入り口が見えて来た。
車を駐車場に入れて、俺と鈴が車を降りた。
「気をつけて。」
金井が車内から声をかけて来た。
「ああ。鈴!行くぞ!」
俺が受け付けへ行こうとすると、鈴が金井の所に行って一言言った。

「…泣きたい時は泣いていいって…大丈夫だって…。」
「…酷い人だな…君は…。」
俺は金井が泣くのを始めて見た。
声を押し殺し、天を仰ぐ様に泣いていた。

鈴が俺の元に駆け寄って来た。
「あいつの恋は辛い…恋だったのか?」
「違う…素敵な恋だよ…。」
鈴は受け付けの階段をそう言いながら上っていった。
全てが終わったら、金井と飲み明かそう。
俺はそう心で約束した。
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