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2学期
教師と男と後夜祭
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田宮への想いで欲求不満の僕は、イライラしながら見廻りをしていた。
人混みから出たくて、グランドの方に出た。
グランド裏のクラブハウス辺りを散歩がてらに歩く。
ガタッガタッ。
クラブハウスの一室から物音がした。
猫でも入り込んだのか?その部屋の扉が少しだけ空いていた。
一応、覗いて見ると…。
げっ!岸先生!
「愛してるよ。」
「先生!私も!」
これは、真っ最中だった。
僕は顔を押さえた。
忘れてた…。マジヤバだろ~。
岸先生と佐藤ゆかりは完全にデキてしまってる。
僕はそおっと、その場を離れた。
佐藤ゆかりは岸先生を、教師ではなく1人の男として愛してるのだろう。
田宮が…僕を教師ではなく、男として意識してくれる日は…多分来ない。
僕は…こんなにも君を…女性として見てるのに。
岸先生の事は、やっぱり清水先生に相談するのが1番だと思い、職員室に向かった。
事か表沙汰になると面倒な事になる。
佐藤ゆかりは3年だ。
後もう少しで卒業だから、せめてそれまで何とかごまかせれば…。
職員室にはもう、ほとんど教師が残ってなかった。
清水先生が見当たらない。
もう、移動してしまったのだろう。
放送室か…。
昨日のように田宮美月がいない事を祈った。
清水先生は放送室内に腕を組んで立っていた。
朝の打ち合わせの最中だった。
田宮美月の姿はない。
「よかった。」
田宮美月に知られたくない。
下手に知られて奴に企まれたりしたら、たまったもんじゃない。
僕は打ち合わせが終わるのを待って、清水先生に声をかけた。
「清水先生!」
「あん?何だ武本?」
「不機嫌そうに、返事しないでくれます?
僕だってへこみます。」
「大した用じゃないなら…。」
「岸先生の事で…。」
ガシッ。
言いかけた瞬間、清水先生は僕の腕を掴み、歩き出した。
「ち!ちょっと…清水先生!どこ行くんですか?」
「他人に聞かれちゃ、マズイ話だろ!」
「!!」
清水先生は、知ってるのか!?
いつから…。
会議室に鍵を掛けて、僕と清水先生は向かい合って椅子に腰掛けた。
「岸先生が付き合ってる…女性の事ですが…。」
言いかけた時、清水先生が被せるように返答した。
「佐藤ゆかり、だろ。」
「やっぱり、知ってたんですね。」
「ああ。」
「どうして、知っててやめさせないんですか!?」
「やめさせるって…岸と佐藤は本気で付き合ってる。それをやめさせろってのか?」
「本気って!岸先生が懲戒免職になるかもしれないんですよ。」
「懲戒免職ねぇ。そんなの承知の上にきまってるだろ。」
清水先生はサラッと言い放った。
「はあああ?」
「覚悟の上だって言ってんだよ。
お前とは違う。」
「違うって!そういう問題じゃ!学校中に噂が広まったりすれば、2人だけの問題じゃなくなります!周りの迷惑だって!」
「武本!!」
清水先生はいきなり僕を怒鳴った。
「噂が何だよ、周りが何だよ。
問題はそこじゃねー!岸は何よりも、誰よりも佐藤を1番に考えてる。
お前なんかのヘタレとは大違いなんだよ!」
カッチーン!
何でヘタレ呼ばわりされなきゃならないんだよ。
「ヘタレって何すか!?訳わかんない!常識的な事を言ってるのは僕の方でしょう。」
「常識的、周りの迷惑…。
そんな事言ってるから…。
お前は…。はぁ。
岸の件は、なるべく表沙汰にしないように、俺から注意しておく。
これでいいな!」
「…随分と岸先生には優しいんですね。」
僕と田宮の事には目くじら立てるくせに。
「お前と田宮の場合は別だ!一緒にするな!」
「そうですか…判りました。
とりあえず、校内でイチャつくのは、やめるように言ってください。」
「ああ。」
僕は吐き捨てるように言うと、その場を後にした。
田宮へのヤキモチのイライラから、清水先生のヘタレ発言にさらにイライラしていた。
まさか、清水先生が岸先生と佐藤ゆかりの関係を肯定するとは思わなかった。
何で…岸先生はよくて、僕と田宮はダメなんだよ。
くそっ。
僕は廊下の壁を蹴り上げた。
午後を過ぎて、後夜祭前。
僕と田宮は保健室にいた。
左手の湿布を交換して貰う為だ。
彼女はゆっくりと包帯を外した。
「南山高校の学校祭だが…。
田宮の会と彼奴らと時間を合わせないといけないんじゃ…。」
「そうですね。
多分、お昼位が丁度いいんじゃないかしら。
久瀬君も午後から休憩に入るみたいだし。」
やっぱり…会いたいんだ。
「そいつらも、久瀬と同じ幼馴染み?」
「まぁ、そんなところです。」
田宮は、意識的に僕の左手を捻らないように、ゆっくりと湿布を貼り変え、包帯を巻いていく。
「包帯がキツかったら言ってください。」
岸先生の件もあって、僕はどうしても聞いてみたくなった。
「…田宮から見て…僕は…どんな男だ?」
「えっ…?」
彼女は少し、戸惑った表情をして考え込んだ。
「プッ。変な先生ですね。」
いきなり彼女は肩を震わせて笑い出した。
「はああ?失礼だな!しかも笑いながら!」
「ごめんなさい。でも、おかしくって。」
「もういいよ。ったく。」
男って聞いたのに…やっぱり先生って…答えられてしまう。
僕は澄ました顔を作りながらも、心の中は涙目だった。
彼女の中の僕は『先生』なのだ。
決して、それ以上にはならないだろう。
彼女は包帯を巻き終えた。
「先生、後夜祭…始まりますよ。
花火、ここから見えるかな。」
「えっ…。外で観れば?」
「外は生徒でいっぱいでしょう。
銀ちゃんも石井君と一緒だし。
ここなら、1人でゆっくり観られる。」
「そうだな。ここなら窓も大きいし、観やすいな。」
彼女は窓辺に駆け寄った。
「楽しみー。」
パチン。
僕は保健室の電気を消した。
「先生…?」
「この方が、綺麗に見えるだろ。」
「ああ。そうですね。」
「それと、こんないい場所、独り占めはずるいな。僕も一緒に観るよ。」
窓辺の彼女の隣に腕を組んで腰掛けた。
暗がりの祭り灯りに照らされた彼女と僕は同じ時間を共有した。
ヒュ~。バンバン。
花火が打ち上がった。
外は歓声で騒がしかったが、僕と彼女は無言で花火を観た。
時折、視線を合わせて、笑顔を交わした。
僕が1番欲しかった空間がそこにあった。
時間を止められるものなら…。
僕は、そう願わずにいられなかった。
人混みから出たくて、グランドの方に出た。
グランド裏のクラブハウス辺りを散歩がてらに歩く。
ガタッガタッ。
クラブハウスの一室から物音がした。
猫でも入り込んだのか?その部屋の扉が少しだけ空いていた。
一応、覗いて見ると…。
げっ!岸先生!
「愛してるよ。」
「先生!私も!」
これは、真っ最中だった。
僕は顔を押さえた。
忘れてた…。マジヤバだろ~。
岸先生と佐藤ゆかりは完全にデキてしまってる。
僕はそおっと、その場を離れた。
佐藤ゆかりは岸先生を、教師ではなく1人の男として愛してるのだろう。
田宮が…僕を教師ではなく、男として意識してくれる日は…多分来ない。
僕は…こんなにも君を…女性として見てるのに。
岸先生の事は、やっぱり清水先生に相談するのが1番だと思い、職員室に向かった。
事か表沙汰になると面倒な事になる。
佐藤ゆかりは3年だ。
後もう少しで卒業だから、せめてそれまで何とかごまかせれば…。
職員室にはもう、ほとんど教師が残ってなかった。
清水先生が見当たらない。
もう、移動してしまったのだろう。
放送室か…。
昨日のように田宮美月がいない事を祈った。
清水先生は放送室内に腕を組んで立っていた。
朝の打ち合わせの最中だった。
田宮美月の姿はない。
「よかった。」
田宮美月に知られたくない。
下手に知られて奴に企まれたりしたら、たまったもんじゃない。
僕は打ち合わせが終わるのを待って、清水先生に声をかけた。
「清水先生!」
「あん?何だ武本?」
「不機嫌そうに、返事しないでくれます?
僕だってへこみます。」
「大した用じゃないなら…。」
「岸先生の事で…。」
ガシッ。
言いかけた瞬間、清水先生は僕の腕を掴み、歩き出した。
「ち!ちょっと…清水先生!どこ行くんですか?」
「他人に聞かれちゃ、マズイ話だろ!」
「!!」
清水先生は、知ってるのか!?
いつから…。
会議室に鍵を掛けて、僕と清水先生は向かい合って椅子に腰掛けた。
「岸先生が付き合ってる…女性の事ですが…。」
言いかけた時、清水先生が被せるように返答した。
「佐藤ゆかり、だろ。」
「やっぱり、知ってたんですね。」
「ああ。」
「どうして、知っててやめさせないんですか!?」
「やめさせるって…岸と佐藤は本気で付き合ってる。それをやめさせろってのか?」
「本気って!岸先生が懲戒免職になるかもしれないんですよ。」
「懲戒免職ねぇ。そんなの承知の上にきまってるだろ。」
清水先生はサラッと言い放った。
「はあああ?」
「覚悟の上だって言ってんだよ。
お前とは違う。」
「違うって!そういう問題じゃ!学校中に噂が広まったりすれば、2人だけの問題じゃなくなります!周りの迷惑だって!」
「武本!!」
清水先生はいきなり僕を怒鳴った。
「噂が何だよ、周りが何だよ。
問題はそこじゃねー!岸は何よりも、誰よりも佐藤を1番に考えてる。
お前なんかのヘタレとは大違いなんだよ!」
カッチーン!
何でヘタレ呼ばわりされなきゃならないんだよ。
「ヘタレって何すか!?訳わかんない!常識的な事を言ってるのは僕の方でしょう。」
「常識的、周りの迷惑…。
そんな事言ってるから…。
お前は…。はぁ。
岸の件は、なるべく表沙汰にしないように、俺から注意しておく。
これでいいな!」
「…随分と岸先生には優しいんですね。」
僕と田宮の事には目くじら立てるくせに。
「お前と田宮の場合は別だ!一緒にするな!」
「そうですか…判りました。
とりあえず、校内でイチャつくのは、やめるように言ってください。」
「ああ。」
僕は吐き捨てるように言うと、その場を後にした。
田宮へのヤキモチのイライラから、清水先生のヘタレ発言にさらにイライラしていた。
まさか、清水先生が岸先生と佐藤ゆかりの関係を肯定するとは思わなかった。
何で…岸先生はよくて、僕と田宮はダメなんだよ。
くそっ。
僕は廊下の壁を蹴り上げた。
午後を過ぎて、後夜祭前。
僕と田宮は保健室にいた。
左手の湿布を交換して貰う為だ。
彼女はゆっくりと包帯を外した。
「南山高校の学校祭だが…。
田宮の会と彼奴らと時間を合わせないといけないんじゃ…。」
「そうですね。
多分、お昼位が丁度いいんじゃないかしら。
久瀬君も午後から休憩に入るみたいだし。」
やっぱり…会いたいんだ。
「そいつらも、久瀬と同じ幼馴染み?」
「まぁ、そんなところです。」
田宮は、意識的に僕の左手を捻らないように、ゆっくりと湿布を貼り変え、包帯を巻いていく。
「包帯がキツかったら言ってください。」
岸先生の件もあって、僕はどうしても聞いてみたくなった。
「…田宮から見て…僕は…どんな男だ?」
「えっ…?」
彼女は少し、戸惑った表情をして考え込んだ。
「プッ。変な先生ですね。」
いきなり彼女は肩を震わせて笑い出した。
「はああ?失礼だな!しかも笑いながら!」
「ごめんなさい。でも、おかしくって。」
「もういいよ。ったく。」
男って聞いたのに…やっぱり先生って…答えられてしまう。
僕は澄ました顔を作りながらも、心の中は涙目だった。
彼女の中の僕は『先生』なのだ。
決して、それ以上にはならないだろう。
彼女は包帯を巻き終えた。
「先生、後夜祭…始まりますよ。
花火、ここから見えるかな。」
「えっ…。外で観れば?」
「外は生徒でいっぱいでしょう。
銀ちゃんも石井君と一緒だし。
ここなら、1人でゆっくり観られる。」
「そうだな。ここなら窓も大きいし、観やすいな。」
彼女は窓辺に駆け寄った。
「楽しみー。」
パチン。
僕は保健室の電気を消した。
「先生…?」
「この方が、綺麗に見えるだろ。」
「ああ。そうですね。」
「それと、こんないい場所、独り占めはずるいな。僕も一緒に観るよ。」
窓辺の彼女の隣に腕を組んで腰掛けた。
暗がりの祭り灯りに照らされた彼女と僕は同じ時間を共有した。
ヒュ~。バンバン。
花火が打ち上がった。
外は歓声で騒がしかったが、僕と彼女は無言で花火を観た。
時折、視線を合わせて、笑顔を交わした。
僕が1番欲しかった空間がそこにあった。
時間を止められるものなら…。
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