手の届かない君に。

平塚冴子

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2学期

嫉妬の苦しみ、微かな喜び

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「そこはぁ!押し倒さなきゃでしょー!普通!奥手にも程があるって!」
「だから!別に僕はそんな関係を求めてない。
しかも、寒かったし。」
久瀬が金井先生の動向を気にして電話をしてきた。
僕は生徒指導室に入り、他人に話しを聞かれないようにした。
「せめて、キスのひとつやふたつ!
なんなら濃厚ディープキス!
大人なんだから。」
「僕は大人でも、彼女は違う。
もう傷つけたくないんだ。」
「はああ。そういう事いうから…。
金井先生は戦線布告してんだぜ。」
「それは…田宮が決める事だ。」
「あのさ…。格好いい事いってるけど…。
武本っちゃん、実際何かあったら超ヘコむじゃんか!」
久瀬に痛いところを突かれた。
「…それは…そうだけど…。」
「それに!武本っちゃん、ちゃんと田宮相手に、身体は反応してんだろ?」
「…お前なぁ。
身もふたもない事言うなよ。」
「男はさぁ、理屈だけの恋愛はできないんだよ。溜まっちまうぞ。」
「お前、さっきから下品だな。」
「あ…俺も欲求不満かな…。
そうだ!なんなら武本っちゃんの抜く手伝い…。」
プッ。
久瀬の電話を切った。
エロ話しばっかしやがってー!

そりゃ…出来るもんなら…。
でも、彼女は別に僕を好きって訳じゃないんだ。
好きでもない相手にキスとか…されたって心の傷になるだけだ。
どんなに僕が彼女を好きでも…。

生徒指導室を出て旧理科準備室へと直行した。
田宮は来ているだろうか?
旧理科準備室に入って、小瓶の飴を一口、
人骨標本のモモちゃんから白衣を剥ぎ取り羽織った。
中扉の小窓を覗いて見た。
そこに、田宮は来ていなかったが…。
金井先生!!

金井先生が田宮のスケッチブックをパラパラとめくっていた。
田宮を待ち伏せしてるのか?
くそっ!
金井先生にこの場所が知られてるのは痛いな。まさか待ち伏せするとは…。
まぁ…僕も似たようなものだけど。
ガチャ。

田宮 真朝が入ってきた。
スケッチブックを手にしている金井先生に不快感を表していた。
「あまり他人物を勝手に物色するのは、好ましいものではありませんが?」
「これは失敬。つい、真朝君の情報を得たくてね。」
「返して頂けますか?」
金井先生は素直にスケッチブックを彼女に手渡した。
「どうも、ありがとう。
だいぶ参考になったよ。
絵はその人の心を写すからね。」
「そうですか。」
彼女はスケッチブックを棚にしまおうと歩き出した。
怒ってるのか表情が硬い。

「そのスケッチブック。
実在の人物は1人しかスケッチされてないね。」
「モデルになる人がその人しかいなかったからです。基本、人物画は苦手なので。」
「ふ~~ん。ねえ!!」
グッと金井先生は棚に彼女を押して、自分の顔を近づけた。
「この時に…キスしたの?」
「!」
おい!金井!何してんだよ!
キスの事は聞くな!
僕は中扉のこっち側で拳を力強く握りしめた。
「武本先生と…。」
「…何の事でしょう?」
金井先生は彼女の耳元まで口を近づけた。
「そう。どんな事しても…守りたいんだね君は。」
やめろ…!逃げろ田宮!
「あっ…やっ。」
金井先生が彼女の耳を噛んだ。
ガッ!!
「痛っう!!」
彼女は持っていたスケッチブックを金井先生のアゴに下からヒットさせた。
ナイスー!田宮ナイス!
「スケッチブックってこういう使い方出来るんですね。勉強になりました。」
「つぅ。厳しいね。」
アゴを押さえながら金井先生は丸椅子に腰掛けた。
「もう、からかうのはやめて下さい。」
「冗談でしょ。僕は本気だよ。
本当は君も判ってるはずだ。」
「私には、その気はありません。」
「君の存在は武本先生にとって負担になる…気づいてるだろう。」
何で僕をダシに使ってんだよ!
「…何を言ってるのかサッパリです。」
「君が僕と付き合えば…その負担も軽減するとは思わない?」
「……帰って下さい。」
「わかった。でも、じっくり考えてくれ。
悪い話しじゃない。
僕は君を幸せにする自信がある。」
「……。」
田宮を…幸せにする…自信か…僕には無い自信だ…。
「じゃあ、また明日ね。」
金井先生は彼女の髪にキスをして立ち去った。

彼女はスケッチブックを棚にしまうと、棚の天使の人形に手を伸ばした。
実験台の上に5体の人形を並べ始めた。
丸椅子に座り、目線を人形に合わせた。
つついたり、動かしたり人形遊びを始めた。

僕は中扉のこちら側でうな垂れた。
確かに金井先生は強引だった。
けれど…正直に真っ直ぐに彼女を観ている。
僕のような大嘘つきじゃない。
彼女を幸せにする自信も持ってる。
田宮にとっては…金井先生と付き合った方がいいのかもしれない。
「はあぁぁ!」
久瀬の言う通り。
僕は金井先生の行動力を目の当たりにしてかなりヘコんだ。

帰宅後、シャワーを浴びてビールを口にした。
あまり酒は好きじゃないし、強くもない。
けど…。今日は呑みたかった。
ブルルル。
携帯…?また久瀬か?
「えっ…田宮!」
僕は慌てて電話に出た。
母親に何かされたとか?
「はい。どうした?何かあったのか?」
「いえ、明日のお弁当ですが、おにぎりでもいいですか?」
えっ…そんな用事なの!?
「お弁当箱だと何回も清水先生に渡すの不自然に思われるから。ダメですか?」
明日も僕の分を作ってくれるって事だよな。
それって!嬉しいいい!
「だ…ダメじゃない!おにぎり好きだし。」
田宮の作ったものなら何でも食べる!
「よかった。」
「あ…ありがとう。助かるよ。」
「じゃあ…おやすみなさい。」
あ…今、おやすみなさいって…。
「お、おやすみなさい。」
プッ。
録音しとけばよかった…。
田宮のおやすみなさいなんて、絶対に僕には言わないセリフと思ってたから。
可愛い声だった。
もう一度聞きたいな…。
そしたら、いい夢が見れる気がする。
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