手の届かない君に。

平塚冴子

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2学期

旧理科室の君と僕

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「さっきのメールは旧理科準備室からでしたか。」
田宮の帰宅を確認して職員室に戻ると金井先生が待っていた。
「そこが引っかかるんですか?もう。
勘弁して下さいよ。」
「いえいえ。武本先生の反応が面白いので、からかっただけです。」
なおタチ悪いだろ!それ!
「わかりました。
ここは、魔女を油断させる為に、僕は真朝君の誘いに乗りましょう。
その方が彼女には危険が及びません。」
「じゃあ。魔女の動向は…。」
「そこは、清水先生に任せましょう。確か案内役をするとさっき言っていましたので。」
「わかりました。あと…。
久瀬に連絡を取りました。
土曜日に金井先生と僕で午後1時過ぎに久瀬宅に行きましょう。」
「ありがとうございます。
でも…本当は武本先生のマンションを見たかったんですがね。」
「はああ?何で僕のマンションなんか。」
「真朝君がマンションを知っていた事が気になってまして。」
うわー。今更それ持ち出すのかよ!
「あ!えっと。やましい事はないです!
1度、清水先生が連れて来ただけです。」
僕は必死に弁明した。
「ヘェ~。そうですか。」
何か言いたそうな顔だよ!まったく!
この調子だと土曜日が思いやられる。

明日、金井先生と田宮がどう過ごすのか本当はかなり気になっていた。
今夜…眠る事が出来ないかもしれない。
僕は、結構ヤキモチ焼きだからな。
彼女はそんな事、知らないだろうけど…。

翌朝、出勤準備をしているとメールが入った。
また、久瀬じゃないだろうな…。
「あ…。田宮からだ…。」

『おはようございます。
急にすみません。
朝、少しだけお話ししたい事があるので旧理科室に来てもらえませんか?』

話しって…多分、金井先生を誘い出す件だろうな。
僕は急いで支度をして学校に向かった。

僕のマンションの方が学校に近いので田宮よりも先に着いた。

『先に旧理科室で待ってる。』

僕は彼女にメールを送った。

暖房のスイッチを入れて彼女を待った。
しばらくして、足音が聞こえて来た。
彼女の足音だ。

ガチャ。
彼女がドアを開けた。
「おはようございます。鍵、職員室からわざわざもって来たんですか?」
「おはよう。あ、ああそう。」
本当は持ってました。ずっと。
彼女はコートを脱ぐと、おもむろにコンビニの袋から肉まんを取り出した。
「朝ごはん食べました?」
「あ、いや。」
めっちゃ、急いで来たから。
彼女と僕は丸椅子を横に並べて座った。
「どうぞ。お話し聞いてもらうお礼です。」
「どうも…。」
僕はホカホカの肉まんを頬張った。
彼女は2つに割ってから食べ始めた。

「話しって…?」
「金井先生って…変わってますよね。」
「えっ、まあ。」
「そもそも、私を好きって言うのも違う気がして。どうやったら、そんな考えに行き着くのか…。
普通に会話するのは別にいいんですけど。
あんまり、好きって連発されると…。」
「あのな…田宮。お前さ、何でも理屈で考え過ぎなんじゃないか?」
「どういう意味ですか?」
「…田宮は好きっていう気持ちわからないかな?」
「そうですね。好きも嫌いもあまり…。」
「だから…どう言えばいいかな。
離れると不安で近づくと安心出来て…。
触れたくなって…。」
抱きしめたくなって、離したくなくなって…。
「んん?ドキドキするとか?」
「そう。それ!」
「…やっぱり、わかりません。」
ガクッ。落とすなよ!
「何でだよ!まったく!」
「でも、金井先生はそうなんですかね。私といてそう思うんでしょうか。」
「…そうだよ…。」
僕もだよ…。
「難しいなぁ。武本先生みたいだったら良かったのに…。」
「えっ…。」
田宮の口から出た言葉に動揺した。

「あんまり考えてない感じが…。」
「お前!ひとに相談させといて何だよその言い草は!」
「ふふふ。すぐ怒るし。面白い。」
「僕で遊ぶな!」
なんか、やっぱり田宮といるの楽しいな。
この時間がたまらない…。

「ありがとうございました。
少しだけ気が楽になりました。」
ああ、そうか…金井先生を誘い出すのに勇気が欲しかったんだな。
「いい先生だろ。僕は。」
「ええ。授業中以外は。」
「だから!一言多いんだよ!」
そんな会話をして、僕は気分よく職員室へと向かった。

昼休みと放課後、金井先生と過ごす彼女を想うと少しだけヤキモチは焼くけど、朝の出来事が僕を幸せにさせてくれた。
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