手の届かない君に。

平塚冴子

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2学期

終業式そして…。

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翌日、とうとう終業式になった。
明日の祝日を挟み明後日からは冬休み。
しかもクリスマスイブ。

体育館で腕組みして清水先生と壁に背を向けて、生徒の方を見ながら僕は立っていた。
清水先生が僕を肘で突いた。
「お前…クリスマスイブ本気で金井先生に譲る気なのか?」
「場所わきまえて下さい。
終業式の最中ですよ。
…まぁ。仕方なくですが。」
僕は言いながら1年4組の列に並んでる田宮を見つめてた。
「仕方ないってなぁお前。
精神状態おかしくなるなよ。」
心配そうな声で清水先生は言ってくれた。
「大丈夫ですよ。
鍛えますから。」
僕は清水先生に笑顔を返した。

そうだ。大丈夫だ。
何故なら今日…僕はまさに精神を鍛える。
《勉強会》で僕はもっと自分を知る。
だからクリスマスイブが彼女と過ごせなくても、金井先生と彼女が付き合う事になっても平気だ。
きっと大丈夫。大丈夫なんだ。

終業式の間中、僕は《勉強会》の事ばかり考えていた。

終業式を終えて僕は担任クラスの生徒を誘導しながらホームルームの為に1年3組に向かった。

1年3組のクラスに入り、成績表を配布した。
「今週末から冬休みに入る。
高校生として恥ずかしくない生活を心がけて、ハメを外し過ぎないように。
では、来年1月に会おう。」
挨拶を済ませて、僕は早々に補習の為の準備に職員室へと向かった。

終業式後に行われる補習最終日は午前中迄に終わらせなければならない。
そして…昼食後に…《勉強会》が始まる。

補習最終日、僕は精神統一さながら無心と冷静を心がけて向かった。
「えー。今日で補習最終日です。
2学期の復習をここで完璧にし、冬休みに入って下さい。」
そう言って4人にテストを配布した。
「田宮は昼食後午後から職員室に。
生徒指導室にて指導を行う。」
「はい。」
素直に返事が返ってきた。
《勉強会》への準備が彼女の方にも出来ている。
僕はそう感じ取った。

彼女はテストを淡々とこなしていった。
僕はヘタな事をしないように教壇から離れなかった。
遠くで彼女を眺めるだけに留めた。

テストを10分前に回収して採点をその場でした。
4人共規定の点数をクリアしていた。
「よし。これで英国補習は終わりだ。
数学は午後からここで。
残り補習のないものは解散。以上!」

とりあえずの山場を越えた僕は、職員室に戻った。
「おう!待ってたそぞ!飯行くぞ飯!」
清水先生が僕が戻るなり肩に手を回してきた。
「そうですね。
さすがに今日は食堂は1時迄ですけら。
行きましょう。」

清水先生と僕は食堂に着いた。
ふとデールの方を見ると金井先生と田宮が向かい合って食事をしてるのが眼に入った。
「お。お二人さん来てるな。大丈夫か?」
「問題ないですよ。」
僕は笑顔を見せて、焼肉定食を注文した。
清水先生はちょっと僕の反応に不満そうだった。

僕等は金井先生や田宮とは離れた席に着いた。
「えっ、これから指導するのか?
初耳だぞ!それ。」
「まぁ、ちょっとした事情もありまして。
あと、この前の葉月との写真の件も話せていないのでついでに。」
「葉月の奴、あれから大人しくなったか?」
「さぁ。どうでしょう。
しつこく携帯番号やら住所やら知りたがりましたが、教えていません。」
「厄介な上にしつこいって1番タチの悪い女だな。」
「冬休み中に彼氏でも出来てくれれば良いんですけどね。」
「…すっげぇ、初歩的な質問だが…お前のどこが良いんだろうな?」
清水先生は僕をまじまじと見つめた。
「酷いな。
ま、自分でもそう思いますけど。」
「どう見ても、お前と相性合うとは思えないんだよなぁ。」
「確かに…ああいう強引過ぎるのはちょっと。」
「田宮の時はそうは感じなかったけどよ。」
…先生とは…合わないわ…ふふふ…
「あ…。性格は僕と田宮は似てるところがあるようで…同類項的な…。」
「ああ。そうだな。確かに。
面白い事言うな。」

田宮も…僕も…欠けているし…人が怖い…。
今思えば、なんて共通点が多いんだろう。
記憶を取り戻せば僕はもっと…君の心に寄り添えるのだろうか…。

この後の《勉強会》…。
僕は彼女の言葉1つ1つを取りこぼさないようにしなければならない。
これは僕にとっての絶対の義務なんだ。
苦しくても辛くても…もう自分の中に逃げたりしない為に。

「お前…田宮の意思は確認してるのか?」
「えっ?…田宮の…意思…?」
手を組んで肘をついた清水先生が僕を真っ直ぐ見据えて問いただしてきた。
「お前は、金井先生に丸投げしようとしてんじゃないか?」
「丸投げだなんて…そんな…。」
「それだって…逃げてるうちに入るんだぞ。」
「それは…。」
僕はそれ以上何も言えなくなった…。
田宮の意思なんて…彼女の気持ちがわからないのに…そんなの…。
ただ…僕は彼女に幸せになって欲しくて…。

そのまま会話が出来なくなって、無言のまま、僕と清水先生は職員室に戻った。
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