手の届かない君に。

平塚冴子

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2学期

補習天国

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「は~可愛いかったな…。」
職員室で僕は天井を見上げて思わず呟いてしまった。
視線を交わす彼女の笑顔が物凄く素直で可愛いかった。
「お前、目がハートだぞ!
また鼻血出そうになるぞ!
その調子じゃ。」
清水先生がタオルで汗を拭きながら自席に座った。
「更衣室…暖房付けられていいですね。
こっちは極寒地獄でしたよ。」
僕は恨めしそうに言った。
「仕方ないだろ…田宮の担当場所だったんだから。」
「えっ…今のって…今回クジ引きじゃなかったんですか?」
「あ。やべえ。」
「まったく職権乱用ですね。
学年主任の。」
「いいだろ別に掃除くらい好きな場所で。」
「好きな場所って…別に場所は好きじゃないですよ。
僕は寒がりなんですから。」
「可愛い田宮見られたの、誰のおかげだと思ってんだよ!
感謝しろ!俺を敬え!」
清水先生が僕の椅子を足でグイグイと押してきたあ。
「小学生ですか!まったく!」
僕は子供じみた清水先生に突っ込みを入れた。
ひとしきり漫才みたいな会話をしてから食堂で昼食を一緒に食べた。

いよいよ補習2日目が始まる。
昨日の様な失敗はしないように気をつけてやらないと…。
今日の補習は個別作業に入る。
なんせ田宮だけ補習のレベルが違うのだ。
生徒も4人しかいなく、個別作業の方が効率が良かった。

僕は教室に入って4人にそれぞれに合わせたプリントを配布した。
とりあえず、問題を解かせその後で個人の弱い所を集中的に指導をする。

「先生…。」
田宮がプリントを見て手を挙げた。
「これは…高1の問題ではないですよね。」
やっぱりバレたか。
「お前の場合、簡単な問題よりそれくらいの方がやりがいあるだろ。」
「そんなに期待されても…この文法…ちょっと。」
彼女は少し困った顔で首を傾げた。
「どれ。教えてやるから貸してみろ。」
僕は田宮の席に椅子を持って行き問題の解き方を教えた。
彼女の手が僕の手と軽く触れる。
プリントに記入する田宮の髪の香りが目の前に広がった。

うっわ。たまんね~。
触りたい…彼女に…触れたい…。

「先生、わかりました。
ありがとうございます。」
彼女はすぐに理解して次々と辞書片手に問題を解いて行く。
素直な返事にさらにキュンキュン来た。
僕は我慢出来なくなって、彼女の頭を撫でた。
「…よく…出来ました。」

僕は自分がまたヤバくなりそうなのでその場を離れ他の生徒の元に移動した。

他の生徒の勉強を見ながら、横目で彼女をチラ見した。
彼女はシャーペンの頭を唇に当てて考え込んでいた。
その仕草が色っぽく感じた。

あの唇に…僕の買った口紅を塗ったら…。
きっと、もっと可愛くなるな…。
思わず想像してしまった。

いかん!いかん!明日はいよいよ終業式と補習最終日…そして…《勉強会》!
耐えろ!
僕は根性で耐えまくった。

補習を終えて、職員室に戻った僕はぐったりして机の上に突っ伏していた。
「欲求不満だ…マジ…。」
自分の欲望の凄さに驚くばかりだ。
教師としては失格だなぁ。

明日は補習最終日だからな。
復習テストで終わりにしよう。
明日、こんな状態になったら《勉強会》どころの騒ぎじゃない。
なるべく軽く済ませてしまおう。

僕は彼女を好きすぎる自分に少し驚いていた。
思ったより重症だ。

その夜マンションに戻った僕は明日の《勉強会》のへの緊張で全然眠れなかった。
眠らなきゃいけないと思えば思うほど目はギンギンに見開いていた。
仕方なく、起き上がって手帳の中の写真を見た。
田宮…いよいよ…明日だ。
そっと写真の唇に触れた。
彼女に謝らなきゃ…。
僕は手帳を枕元に置いて瞼を閉じた。

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