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冬休み
道化師の新年会
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「どういう事だよ!聞いてねーし!」
店を出て車に乗った僕は久瀬を問い詰めた。
「あ、ああ。ごめんごめん。
でも、他2人にも詳しく言ってないんだ。
利用させて貰いたいんだ。
言葉は悪いけど…。」
「利用って…ただ事じゃないな。」
「金ちゃんは予想外なんだけどね。
言ったろ。著名人が来るって。
俺1人だと、親になんだかんだ利用されちまう訳なの。
…で、知り合いが来てる事を理由に席を早く外せるようにしたかったんだ。」
「利用って…。」
「母親の事じゃないよ。父親の方。
俺が、成長してから利用したがってね。
権利の足しに出来ると踏んでるんじゃないかな。
こっちはゴメンだけどね。」
「そうね…子供が親の所有物である期間は永遠じゃないもの。
利用出来ると気が付けば集中した期間にした方がいいと考えるでしょうね。」
「さっすが田宮!理解早ぇ!
…てな訳で皆様よろしくお願いします。」
「仕方ねーな。」
久瀬に下手に同情の言葉なんか要らないと僕にはわかっていた。
そして…田宮もまた。
そう思ってるに違いなかった。
バックミラーに後方の金井先生の車が映る。
さっきのファミレスで僕は、金井先生の嫉妬の圧を感じていた。
当たり前だ…クリスマスイブも初詣も横取りされた形になってるんだ。
殴られても仕方ないくらいだ。
それでも僕は…後悔なんてしていない。
あの想い出を他の奴には渡す事は出来なかった。
僕も僕の心に眠る僕も…。
彼女は疲れたのか、僕の隣りでウトウトし始めた。
もう午前2時だ…。
「田宮、寄りかかって着くまで寝てろ。」
「あ…でも。」
「遠慮すんな。ほら!」
僕は彼女の肩を引き寄せた。
肩を抱いたまま、窓の外に視線を送った。
「はい…。」
安東が少し驚いた顔を見せたが久瀬が口に人差し指を当て内緒の仕草をすると、納得したかのように目を伏せてくれた。
久瀬はこうなる事を全部知っていたかのように頷くだけだった…。
久瀬の家に着くと、煌びやかな客が沢山出入りしていた。
「驚いた?新年の挨拶とかでやたらと媚を売りに来るんだよ。」
久瀬が車から降りる際に言った。
「病院経営の医者だけにしては大規模だな。」
「あ、言ったなかった?
母親も美容外科医でね。
芸能人とかに顧客がいるんだよ。」
「げっ!…やっぱりお前…整形?」
「なんでだよ!逆だよ!
麗華は自然な俺が好きなの。厄介だろ。
人工的な物ばかり見て来てるからそう思うらしい。
後で本人みてみろよ!整形ババァだから。」
「整形ババァって…。」
自分は整形しまくってるのか…。
母親の精神は病んでるんだろうな…。
そして…それに久瀬が付き合わされてる…。
なんだか…久瀬が安東を好きになる理由が少しだけわかった…。
安東の育った環境は久瀬がどんなに大金を叩いても手にする事の無い物だから。
安東ごとそれを感じていたいんだ…。
「先生…。行きましょう。」
田宮に袖を引っ張られた。
「ああ、行こう。」
僕等は久瀬について屋敷の中に入った。
金井先生も後を追うように入って来た。
大広間の方で立食形式の新年会が開かれていた。
僕等をビュッフェの方に案内すると、久瀬は向きを変え人混みに分け入った。
久瀬はその人混みをスタスタと歩いて、主催者の父親の元に辿り着いた。
「おお。和也。遅かったな。」
「ええ。友達と一緒だったので。
今もあそこに…。」
久瀬がこちらを指差した。
「あ。ああ、そうか。
しかし、皆様に新年のご挨拶はしてくれよ。」
「わかってますよ。
貴方の顔をわざわざ潰すほどバカじゃない。」
「助かるよ。お前が息子で。」
切ないような蔑むような視線を父親に送ると、久瀬はマイクスタンドの方に歩き出した。
マイクスタンドの横にはワインレッドのセクシーなドレス姿に派手なウェーブの長髪
のナイスバディな女性が立っていた。
久瀬に抱きつきそうな仕草をしたが、久瀬がそれを払いのけた。
そして、マイクスタンドのマイクを手に取った。
「皆様。あけましておめでとうございます。…。」
久瀬は淡々と形式上の挨拶を始めた。
「辛そうですね。久瀬君。」
金井先生がいつの間にか僕の隣りに来ていた。
「そうですね。
本当はやりたくないんでしゃうね。」
「安東先輩…久瀬君が帰って来たら、先輩から飲み物を渡してあげて下さい。」
田宮が安東にグラスとおしぼりを手渡した。
「あ、ああ。そうだな。わかった。」
安東は深く考える事をなくそれを受け取った。
でも、それは田宮が久瀬に今1番必要な事だと判断したからだ。
田宮には久瀬が見えている…同じように僕の事も見えている。
僕自身が見えずに、葛藤している僕を彼女は知っている…。
久瀬が挨拶を終えてすぐに、安東が飲み物を持って駆け寄った。
「ありがとうございます。」
久瀬がまるで小さな子供のような笑顔を見せた。
「金井先生…僕は…謝りません…。」
僕は久瀬と安東の方を見ながら、金井先生にそう言い放った。
「望むところです…。」
金井先生も真っ直ぐにそう答えた。
「真朝君。僕の送った香水。
付けてくれたんだね。」
「それしか持って無いんです。」
「じゃあ、今度一緒に選ぼう。」
金井先生が彼女の腰に手を回していた。
クリスマスプレゼントは香水だったのだろう。
前の僕ならきっと動じていたはずだ。
けれど…もう…動じたりしたくない。
僕は2人から視線を逸らす事をしなかった。
店を出て車に乗った僕は久瀬を問い詰めた。
「あ、ああ。ごめんごめん。
でも、他2人にも詳しく言ってないんだ。
利用させて貰いたいんだ。
言葉は悪いけど…。」
「利用って…ただ事じゃないな。」
「金ちゃんは予想外なんだけどね。
言ったろ。著名人が来るって。
俺1人だと、親になんだかんだ利用されちまう訳なの。
…で、知り合いが来てる事を理由に席を早く外せるようにしたかったんだ。」
「利用って…。」
「母親の事じゃないよ。父親の方。
俺が、成長してから利用したがってね。
権利の足しに出来ると踏んでるんじゃないかな。
こっちはゴメンだけどね。」
「そうね…子供が親の所有物である期間は永遠じゃないもの。
利用出来ると気が付けば集中した期間にした方がいいと考えるでしょうね。」
「さっすが田宮!理解早ぇ!
…てな訳で皆様よろしくお願いします。」
「仕方ねーな。」
久瀬に下手に同情の言葉なんか要らないと僕にはわかっていた。
そして…田宮もまた。
そう思ってるに違いなかった。
バックミラーに後方の金井先生の車が映る。
さっきのファミレスで僕は、金井先生の嫉妬の圧を感じていた。
当たり前だ…クリスマスイブも初詣も横取りされた形になってるんだ。
殴られても仕方ないくらいだ。
それでも僕は…後悔なんてしていない。
あの想い出を他の奴には渡す事は出来なかった。
僕も僕の心に眠る僕も…。
彼女は疲れたのか、僕の隣りでウトウトし始めた。
もう午前2時だ…。
「田宮、寄りかかって着くまで寝てろ。」
「あ…でも。」
「遠慮すんな。ほら!」
僕は彼女の肩を引き寄せた。
肩を抱いたまま、窓の外に視線を送った。
「はい…。」
安東が少し驚いた顔を見せたが久瀬が口に人差し指を当て内緒の仕草をすると、納得したかのように目を伏せてくれた。
久瀬はこうなる事を全部知っていたかのように頷くだけだった…。
久瀬の家に着くと、煌びやかな客が沢山出入りしていた。
「驚いた?新年の挨拶とかでやたらと媚を売りに来るんだよ。」
久瀬が車から降りる際に言った。
「病院経営の医者だけにしては大規模だな。」
「あ、言ったなかった?
母親も美容外科医でね。
芸能人とかに顧客がいるんだよ。」
「げっ!…やっぱりお前…整形?」
「なんでだよ!逆だよ!
麗華は自然な俺が好きなの。厄介だろ。
人工的な物ばかり見て来てるからそう思うらしい。
後で本人みてみろよ!整形ババァだから。」
「整形ババァって…。」
自分は整形しまくってるのか…。
母親の精神は病んでるんだろうな…。
そして…それに久瀬が付き合わされてる…。
なんだか…久瀬が安東を好きになる理由が少しだけわかった…。
安東の育った環境は久瀬がどんなに大金を叩いても手にする事の無い物だから。
安東ごとそれを感じていたいんだ…。
「先生…。行きましょう。」
田宮に袖を引っ張られた。
「ああ、行こう。」
僕等は久瀬について屋敷の中に入った。
金井先生も後を追うように入って来た。
大広間の方で立食形式の新年会が開かれていた。
僕等をビュッフェの方に案内すると、久瀬は向きを変え人混みに分け入った。
久瀬はその人混みをスタスタと歩いて、主催者の父親の元に辿り着いた。
「おお。和也。遅かったな。」
「ええ。友達と一緒だったので。
今もあそこに…。」
久瀬がこちらを指差した。
「あ。ああ、そうか。
しかし、皆様に新年のご挨拶はしてくれよ。」
「わかってますよ。
貴方の顔をわざわざ潰すほどバカじゃない。」
「助かるよ。お前が息子で。」
切ないような蔑むような視線を父親に送ると、久瀬はマイクスタンドの方に歩き出した。
マイクスタンドの横にはワインレッドのセクシーなドレス姿に派手なウェーブの長髪
のナイスバディな女性が立っていた。
久瀬に抱きつきそうな仕草をしたが、久瀬がそれを払いのけた。
そして、マイクスタンドのマイクを手に取った。
「皆様。あけましておめでとうございます。…。」
久瀬は淡々と形式上の挨拶を始めた。
「辛そうですね。久瀬君。」
金井先生がいつの間にか僕の隣りに来ていた。
「そうですね。
本当はやりたくないんでしゃうね。」
「安東先輩…久瀬君が帰って来たら、先輩から飲み物を渡してあげて下さい。」
田宮が安東にグラスとおしぼりを手渡した。
「あ、ああ。そうだな。わかった。」
安東は深く考える事をなくそれを受け取った。
でも、それは田宮が久瀬に今1番必要な事だと判断したからだ。
田宮には久瀬が見えている…同じように僕の事も見えている。
僕自身が見えずに、葛藤している僕を彼女は知っている…。
久瀬が挨拶を終えてすぐに、安東が飲み物を持って駆け寄った。
「ありがとうございます。」
久瀬がまるで小さな子供のような笑顔を見せた。
「金井先生…僕は…謝りません…。」
僕は久瀬と安東の方を見ながら、金井先生にそう言い放った。
「望むところです…。」
金井先生も真っ直ぐにそう答えた。
「真朝君。僕の送った香水。
付けてくれたんだね。」
「それしか持って無いんです。」
「じゃあ、今度一緒に選ぼう。」
金井先生が彼女の腰に手を回していた。
クリスマスプレゼントは香水だったのだろう。
前の僕ならきっと動じていたはずだ。
けれど…もう…動じたりしたくない。
僕は2人から視線を逸らす事をしなかった。
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