手の届かない君に。

平塚冴子

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冬休み

休息日の男達

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その後、新年会で久瀬は大物著名人の何人かに個人的に挨拶をして、僕等と一緒に大広間を出た。

「お疲れ様でした。ありがとう。」
久瀬が僕等に礼を言った。
「さて…帰るか。勉強あるし。」
安東が言った。
「車で送らせるよ。
金ちゃん…皆んな疲れてる。
わかってますよね。」
「僕は1人で帰るよ。」
久瀬が金井先生に釘を刺し、金井先生はすんなり理解した。

翌2日、月曜日朝の5時。
昨日家に着いたのは朝の6時、それから泥のように眠ってほとんど1日が過ぎてしまった。
明日…久瀬と《勉強会》の精査をする事になっている。
金井先生に宣戦布告をしてしまった…。
もう…後戻りなんて出来ない。

僕はポストに年賀状を取りに行った。
其れ程友達も多くない。
年賀状も学校関係者と大学時代の同級生くらいだった。

ブルルルブルルル。
携帯が鳴った。
「ん?」
知らない番号…。
「はい。」
「やった!武本?俺、俺。
中島だよ!中島!教育実習一緒に行ったろ。」
「ああ。中島か。」
中島は大学の同級生で同じ教育課程を学んでいた。
「年賀状見たら。懐かしくなってさ。
知り合いにお前の番号聞いたんだよ。
でさ…飲みに行かねー?」
「えっ…今日か?」
「ダメか?話し聞いて欲しいんだよなぁ。
同じ教師として。」
「構わないけど。」
「じゃあ、待ち合わせしようぜ。」
「わかった。」
僕は久しぶりの同級生との会話をしてリラックスしようと考えた。
明日の《勉強会》の精査をする為に。

夕方6時。
待ち合わせしている駅前の居酒屋に僕は向かった。
「ここ!ここ~!武本!」
「久しぶり。中島。」
僕は中島と向かい合わせに座った。
「とりあえずビールで乾杯な!」
「ああ。」
中島は明るくて誰とでも仲良くなるタイプだった。
優しそうな顔をしているが女受けはあまり良くなかった気がする。

「乾杯!!」
ビールが来て乾杯をした。
「どうよ。武本先生の学校生活は。」
「どうって何とか2年目こなしてるよ。
特進クラスの担任してる。中島は?」
「2年の担任やってるよ。
俺さ~。女子校じゃん。
初めはかなり浮かれてた訳よ。」
「何だよ下心で学校選んだのか?」
「当たり前だろ。
あわよくば女子高生と結婚出来るんだぜ!
まさに、教師の特権!」
「そう簡単に行かないだろ。」
「あ、やっぱりわかる?
武本にはわかるよね~。
理想と現実の違い!幻滅したよ!」
中島は酔いが回りテーブルをバンバン叩き出した。
枝豆が皿の中で踊った。

「荒れてんなぁ~。大丈夫か?」
「うっかり女子高生の誘いに乗ったらよ…。」
「はああ?乗るなよ!危ねえだろ。」
「今考えればそう思うよ。
でも、夢見てたからさ…。
まさか…ハメられて、脅されるなんて…。」
「!!」

田宮 美月と同じ!?
…金井先生が言っていた…。
…世の中の大半の女性が、同じ様なしたたかさを持ってる…。

「中島…もっと堂々としろ。
お前がビクビクすれば相手の思う壺だ。」
「武本ぉ…。お前…変わったな。
一緒に文句言って慰めてくれると思ってたけど…成長してんだな。」
「いや…ウチの学校にも同じような、したたかな女子高生がいて問題になってる。」
「えっ…何処にでもある話しなのか?」
「女子高生が多ければ多いほど有り得ると思う。」

真剣な僕の眼差しに中島の酔いが冷めて来た。
「高校教師なんて…なるもんじゃないな。」
「僕もそう思うよ。
リスクあり過ぎだからな。」
本当にそう思う。

何が普通で安心の職業だ…泥臭くて、危険で、隔離され閉鎖た世界で…最悪の職業じゃないか。

僕だって彼女がいなければ…とっくに教師なんて辞めていただろう。
彼女がいる…それだけの理由でぼくは教師を続けているんだ。
理想も幻想も何1つない中で…君という存在だけが…僕を教師にしている。
それ以上でもそれ以下でもない本心なんだ。

「教師も人間だ。
ダメ元でやるしかないだろ。
運が良ければ定年まで行けるさ。」
「武本…何かカッコイイなお前…。」
「ありがとう。
そんな事言われたの初めてだ。」
僕と中島は大学の頃よりも打ち解けていた。
同士という感じなのかも知れない。
「武本…お前、香苗と別れたんだってな。
彼女いるのか?」
そうだ…中島は香苗をよく知っている。
「あ…。彼女はいない…。
好きな娘はいる。」
「てっきり香苗と結婚すると思ってたからさ。
あれ以上の女がいたのか?いいな。」
「どうかなぁ。
香苗とは全然違うタイプだし。」
「写真ないの?」
「ない。写真撮られるの嫌いで。」
「可愛いのか?」
「か…可愛いよ。僕にとっては。
凄く可愛い…。」
彼女の想像をしただけで耳まで赤くなった。
飲み過ぎたかな…。
「くぅ~~ノロけやがってー!」
「…すまないな。」
そんなこんなで深夜12まで呑んでしまった。

…明日…大丈夫かな…?
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