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冬休み
僕が僕である為にその1
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とうとう、久瀬と話す日がやって来た。
あの《勉強会》での答えを見つけなければ。
僕は昨日の酔いを醒ますようにシャワーを浴びた。
中島の話しで、逆に僕自身の気持ちに気づかせて貰った。
僕は元々教師に理想や幻想は持ってなかったんだ。
普通だの安心だの楽になる方を選んだだけだ。
下心で学校を選んだ中島の事を軽蔑出来ない。
今の僕だって、彼女の事しか考えていない。
結局、教師だって人間だし、欲望は持ってるんだ。
午後1時。
久瀬がこっちに来るまで、まだ時間があった。
…声を聞いても…平気だろうか?…。
いや…自分がどうしたいか…。
僕は…彼女の声が聞きたかった…。
僕は携帯を手に取って田宮に電話を掛けた。
「はい。武本先生?
どうしたんですか?何かありました?」
彼女は心配そうな声で僕の名前を呼んだ。
「何もないよ。」
「えっ?何もない…ですか?」
「そう。田宮の声が聞きたかったんだ。」
「声ですか?もしかして…死んでるとか思ったんですか?」
死んでって…何で、そっちにしか話が行かないかな。
「違うよ。本当に声が聞きたかっただけなんだ。…ダメだったか?」
「いいえ。よくわかりませんが、武本先生がそれで納得してるのであれば。」
「なぁ…好き…って言ってみてくれないか?」
「好き…ですか?」
「うんうん。もう1回。」
「好き…好き…これ何のゲームですか?」
「いや…何でもない。」
《好き》という言葉を彼女の声で聞きたかっただけだった。
「変な先生。来週から3学期ですから、しっかりして下さいね。」
「わかってるよ。当然だろ。」
「じゃあ切りますね。」
「うん…また来週に…。」
「はい。また来週に。」
僕は電話を切った携帯を抱きしめた。
彼女の《好き》を頭の中で何度もリプレイさせていた。
午後2時過ぎ…そろそろ久瀬が来る時間だ。
ピンポンピンポン。
ガチャ。
「お待たせ!おじゃまします。」
「今、コーヒー入れるよ。」
「おっ!なんかあった?口元緩んでるよ。」
「何もないよ。」
「ふ~~ん。何か最近の武本っちゃん色っぽいな。」
「下らない事言ってないで。
コーヒー入ったぞ。」
僕と久瀬はリビングのソファーに腰を下ろしてコーヒーを一口飲んだ。
「あのさ、ちょっと手詰まりな気がしたんで…武本っちゃんに内緒で過去の事を調べてみたんだ。
個人情報だから少ししかわからなかったけど。」
「調べた?」
「小学校の名前でね。
生徒名とかはわからないままだけど…。」
「けど…?」
「中学校の方で事件があったらしい。」
「事件…!?」
「詳しくはちょっと…傷害事件で武本っちゃんも多分、直接関わってる。」
「傷害事件…。」
傷害事件…傷…血…流れ出る血…。
『うぉああああ~!』
『言ったろ…僕は狂ってる。』
『なんて事したんだ!』
『僕の心を壊したのは君だ…。
僕の事は忘れろ…大嫌いだ…。』
『知らない!僕は知らない!こんな事望んでた訳じゃない。』
『知らないなら!初めから知らないフリしてろよ!』
ザーザーザー。
雨が降る…。君を追い詰めた…。
助けるフリして君を苦しめた…。
ザーザーザー。
記憶の一部が映像として脳裏に浮かんだ。
そして…耳に響く雨の音。
「はぁはぁ。田宮の…言った通りだ。
助けるつもりだった…。助けてるつもりだったのに…僕が追い詰めた…。はぁ。」
「武本っちゃん!無理すんな!」
苦しい…違う…これは彼の苦しみ…。
偽善者の僕への怒り…。
逃げちゃいけないんだ…。
彼からも…自分からも…。
「ダメだ!武本っちゃん一旦切り替えろ!精神崩壊するぞ!深呼吸して!」
「はぁ。はぁ。…。」
『泣かないで…大丈夫。』
田宮…本当だ…僕は泣いていた…ずっとずっと泣き続けていた…。
そこにいないはずの田宮の細く長い指先が僕の頬を包む。
『ほら…大丈夫だから。』
「どう?落ち着いた?」
30分くらい横になっていた。
頭の中を掻き回されたような感覚にクラクラしていた。
「大丈夫だ。何とか。」
「良かった。もう止めようか?」
「いや…手間が掛かるだろうけど、もう少し…。」
「わかった。
田宮親子についてこれは多分答えは…意外に簡単だったんだ。」
「簡単?」
「田宮親子が何よりも大切なのは…。」
「大切なのは…?」
「自分自身。」
「はああ?」
「どう、考えても最後はそこに行き着く。」
「それと僕に何の関係があるんだ?」
「言ったろ…武本っちゃんは自分自身を見ていない。」
「答えは…自分自身を愛していないって事なんじゃないかな。」
「つまり…自分自身を愛すれって事か?」
「そこなんだよね。なんか今ひとつ…。」
「結局、答えは僕の中なんだな。」
「うん…。あと一歩かと思うんだ。
記憶の方も…友達の名前を思い出せば…繋がった記憶が出て来るんじゃないかな。」
「顔は…ハッキリ出てるんだが…名前がどうしても…思い出せないんだ。」
あの《勉強会》での答えを見つけなければ。
僕は昨日の酔いを醒ますようにシャワーを浴びた。
中島の話しで、逆に僕自身の気持ちに気づかせて貰った。
僕は元々教師に理想や幻想は持ってなかったんだ。
普通だの安心だの楽になる方を選んだだけだ。
下心で学校を選んだ中島の事を軽蔑出来ない。
今の僕だって、彼女の事しか考えていない。
結局、教師だって人間だし、欲望は持ってるんだ。
午後1時。
久瀬がこっちに来るまで、まだ時間があった。
…声を聞いても…平気だろうか?…。
いや…自分がどうしたいか…。
僕は…彼女の声が聞きたかった…。
僕は携帯を手に取って田宮に電話を掛けた。
「はい。武本先生?
どうしたんですか?何かありました?」
彼女は心配そうな声で僕の名前を呼んだ。
「何もないよ。」
「えっ?何もない…ですか?」
「そう。田宮の声が聞きたかったんだ。」
「声ですか?もしかして…死んでるとか思ったんですか?」
死んでって…何で、そっちにしか話が行かないかな。
「違うよ。本当に声が聞きたかっただけなんだ。…ダメだったか?」
「いいえ。よくわかりませんが、武本先生がそれで納得してるのであれば。」
「なぁ…好き…って言ってみてくれないか?」
「好き…ですか?」
「うんうん。もう1回。」
「好き…好き…これ何のゲームですか?」
「いや…何でもない。」
《好き》という言葉を彼女の声で聞きたかっただけだった。
「変な先生。来週から3学期ですから、しっかりして下さいね。」
「わかってるよ。当然だろ。」
「じゃあ切りますね。」
「うん…また来週に…。」
「はい。また来週に。」
僕は電話を切った携帯を抱きしめた。
彼女の《好き》を頭の中で何度もリプレイさせていた。
午後2時過ぎ…そろそろ久瀬が来る時間だ。
ピンポンピンポン。
ガチャ。
「お待たせ!おじゃまします。」
「今、コーヒー入れるよ。」
「おっ!なんかあった?口元緩んでるよ。」
「何もないよ。」
「ふ~~ん。何か最近の武本っちゃん色っぽいな。」
「下らない事言ってないで。
コーヒー入ったぞ。」
僕と久瀬はリビングのソファーに腰を下ろしてコーヒーを一口飲んだ。
「あのさ、ちょっと手詰まりな気がしたんで…武本っちゃんに内緒で過去の事を調べてみたんだ。
個人情報だから少ししかわからなかったけど。」
「調べた?」
「小学校の名前でね。
生徒名とかはわからないままだけど…。」
「けど…?」
「中学校の方で事件があったらしい。」
「事件…!?」
「詳しくはちょっと…傷害事件で武本っちゃんも多分、直接関わってる。」
「傷害事件…。」
傷害事件…傷…血…流れ出る血…。
『うぉああああ~!』
『言ったろ…僕は狂ってる。』
『なんて事したんだ!』
『僕の心を壊したのは君だ…。
僕の事は忘れろ…大嫌いだ…。』
『知らない!僕は知らない!こんな事望んでた訳じゃない。』
『知らないなら!初めから知らないフリしてろよ!』
ザーザーザー。
雨が降る…。君を追い詰めた…。
助けるフリして君を苦しめた…。
ザーザーザー。
記憶の一部が映像として脳裏に浮かんだ。
そして…耳に響く雨の音。
「はぁはぁ。田宮の…言った通りだ。
助けるつもりだった…。助けてるつもりだったのに…僕が追い詰めた…。はぁ。」
「武本っちゃん!無理すんな!」
苦しい…違う…これは彼の苦しみ…。
偽善者の僕への怒り…。
逃げちゃいけないんだ…。
彼からも…自分からも…。
「ダメだ!武本っちゃん一旦切り替えろ!精神崩壊するぞ!深呼吸して!」
「はぁ。はぁ。…。」
『泣かないで…大丈夫。』
田宮…本当だ…僕は泣いていた…ずっとずっと泣き続けていた…。
そこにいないはずの田宮の細く長い指先が僕の頬を包む。
『ほら…大丈夫だから。』
「どう?落ち着いた?」
30分くらい横になっていた。
頭の中を掻き回されたような感覚にクラクラしていた。
「大丈夫だ。何とか。」
「良かった。もう止めようか?」
「いや…手間が掛かるだろうけど、もう少し…。」
「わかった。
田宮親子についてこれは多分答えは…意外に簡単だったんだ。」
「簡単?」
「田宮親子が何よりも大切なのは…。」
「大切なのは…?」
「自分自身。」
「はああ?」
「どう、考えても最後はそこに行き着く。」
「それと僕に何の関係があるんだ?」
「言ったろ…武本っちゃんは自分自身を見ていない。」
「答えは…自分自身を愛していないって事なんじゃないかな。」
「つまり…自分自身を愛すれって事か?」
「そこなんだよね。なんか今ひとつ…。」
「結局、答えは僕の中なんだな。」
「うん…。あと一歩かと思うんだ。
記憶の方も…友達の名前を思い出せば…繋がった記憶が出て来るんじゃないかな。」
「顔は…ハッキリ出てるんだが…名前がどうしても…思い出せないんだ。」
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