手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

スキー体験合宿3日目その3

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塚本の爆弾発言に僕は緊張した。
これは…僕1人ではどうにも出来ない内容だ。
売春斡旋それをもし…田宮 美月が行ってるとしたら…。

「そのお誘い…銀子ちゃんに来たよ。」
また牧田が爆弾発言をした。
えええ~~!
「うちの学校、バイト禁止だから、お金欲しくない?
とか、えっ…とお金に困ってる1年知らない?
とか、聞かれたかなぁ~。」
「通りすがりに聞かれた気がしたなぁ。
んと、すぐにヤダーって言ったら逃げてっちゃったから、顔は覚えてないよ。」
マジですか~?
頭痛え!!そこ等へんの不良よりタチ悪いだろう!それは!

「塚本、その話しは今後誰にも話すな。
いいな。」
「単なる噂ですよ。」
「…お前らが危なくなるんだよ!」
僕には心当たりがある…もし、奴なら教師に情報を漏らしたのかバレたら塚本に何をするかわからない!
僕の真剣な表情にさすがの塚本も黙ってうなづいた。

「ウリ…?なんですか?」
田宮は気がつかないって事はこの件には関係していないようだ。
「気にすんな。
お前には関係ない。」
僕は彼女を安心させる為に頭を撫でた。
とにかく、清水先生に早急に相談しなければならない案件なのは間違いない。
そして…金井先生の協力も必要だ。

告白前に厄介な事を聞かされた…。
かと言って告白を諦めたくはない。
とりあえず、牧田に協力を仰がなければ。

昼食を終えて、席を立ったと同時に牧田の袖を引っ張った。
「あんん?」
「ちょっと…。」
僕は牧田を引っ張って食堂を出た。
田宮が気にしてたが、そのままホテルのロビーまで連れて行った。

「何よぉ?武ちゃん。」
「協力してくれ。
夜に田宮を呼び出したい。」
牧田の眼が急に輝き出した。
「ほお~!やるじゃん!」
「消灯時間後の10時に…そうだなロビーは目立つしな…。
出来れば外がいいかな…寒いけど。」
「じゃあ、最上階ラウンジの廊下の反対側の長~いバルコニーあるの知ってる?」
「えっ…バルコニー?」
「そう。
銀子ちゃんは昨日、石井君といた。」
「よし!じゃあ、そこ。
田宮にコート着せてこっそり抜け出させてくれ。」
「OK!ふふふ。
武ちゃん、いよいよ告るんだね~。」
「ま…まぁな。」
くそっ!妖怪恋愛アンテナにはバレバレだなぁ!
「この銀子ちゃんに、まっかせなさい!
ちゃんと真朝行かせるよーん。
同室の子にも気づかせないから安心してちょ!」
「よろしくお願いします!」
僕は牧田に頭を下げて、そのまま急いで清水先生のところへ走った。

よし!これで告白の準備は出来た!

僕は清水先生を探した。
大広間でレクリエーションの打ち合わせをロバ先生としているのを見つけた。
「清水先生!ちょっと…!」
僕は清水先生のジャージの裾を引っ張った。
「ん?…お前は女子か?
何やってんだよ。」
「いいから!来てください!
大事な話しなんですから!」
「わかったから!引っ張るな!
ジャージが伸びるだろうが!」
僕と清水先生は大広間から廊下に出た。

「で、何だよいきなり!
後じゃダメな話か?
姫か?姫絡みなのか?」
腕組みして絡むように清水先生は顔を押し付けてきた。
「田宮 美月かもしれないんです。
…噂でうちの女生徒のウリを斡旋してる人がいるらしいと。」
「何?ウリって…瓜じゃないよな。」
「瓜ちゃうわ!真剣な話しでボケかまさないで下さい!」
「…はああ!ったくどこまで真っ黒なんだよ。あの魔女は!」
「噂なので確証はありませんが、牧田が誘われそうになった事実があります。」
「金井先生に相談する必要があるな…。」
「僕もそう思います。」
「姫は知ってる話なのか?」
「いえ。あの様子だと全く知らないかと。
悪い事をしてるのは知ってるはずですが、全ての内容は把握していないと思います。
魔女も妹づてで事がバレたら元も子もないと考えてるはずです。」
「だろうなぁ。
準備周到な魔女の事だ。
情報共有の相手は選ぶだろうなぁ。」
「にしても、犯罪だぞ。
ったく。頭痛えな!」
清水先生も苛立ちを隠さない。
「とにかく、日を改めてまた3人で相談しましょう。」
「キャバクラかぁ!いいな!」
「そっちがメインじゃねー!」
思わず清水先生に突っ込みを入れて、話しを終えた。

広間でロバ先生に任せっきりだったレクリエーションの準備を手伝った。
実行委員も忙しそうに動き回っていた。
「いゃ~。楽しみですね。新年会。
夏休みのように潰れないで下さいね。」
「あ!いや…その節はどうも。」
他人の事言えるのか!ロバ!
テメぇは久瀬に喰われただろうが!

…でも…夏休みのあれが田宮のファーストキスだったんだよな…。
酒の味しかしねぇ!
最悪のファーストキス!
すまない~~!ごめんなさい~!
僕は罪悪感に苛まれた。

「お前、何を悶えてんだよ。
告白は今夜だろ。
今からそんなんで大丈夫なのか?」
清水先生に思い切り心配されてしまった。
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