手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

4回目の勉強会その2

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「とりあえずここまでで記憶が一旦止まってる…あと中学生になってから…事件が起こった。
彼と僕と他の人数人…。」

『うぉああああ~!』
『言ったろ…僕は狂ってる。』
『なんて事したんだ!』
『僕の心を壊したのは君だ…。
僕の事は忘れろ…大嫌いだ…。』
『知らない!僕は知らない!こんな事望んでた訳じゃない。』
『知らないなら!初めから知らないフリしてろよ!』
ザーザーザー。
雨が降る…。君を追い詰めた…。
助けるフリして君を苦しめた…。
ザーザーザー。

「声はここだけしか聞こえないんだ。
これ以上思い出そうとしても。
一時停止したような映像しか見えない…音が聞こえないんだ…思い出そうとしても雨の音だけ響いて。」
「映像…ですか?」
「数人倒れていて…血が流れてる…中央に彼が立ってる…泣いてる…。
僕は多分…腰を抜かしたのかな…低い位置から彼を見てる…。」
「事件ですか…血という事は傷害事件後ですか…?」
「多分…。僕のせいだ…。
僕が彼を狂わせた…。」

「待って下さい。」
彼女は僕の手を優しく握り返した。
「僕のせいですか…?
それはおかしいですね…。」
「おかしい?何が?」
「もし、その彼が先生のせいで怒ってるならば、何故傷ついてるのは他の人なのでしょうか?」
「それは…。」
確かにそうだ…。
彼等は何をしたんだ?どうして怪我を…。
えっと~。

ズキッ!ガッ!
「あ…。」
身体中が痛い!何だこれは!
「先生!?」
思わず彼女の手を強く握りしめてしまった。
「身体中が痛い…。
まるで殴られたり蹴られたりしたみたいな…。」
「先生…もしかして…暴行を受けたんじゃないですか?」
「…暴行!?」
どうなんだろう…記憶はないが…。

「話を変えましょう。
深呼吸して下さい。ゆっくりと。」
僕は彼女の言う通りに深呼吸した。
「先生自身はどんな子供でしたか?」
「僕自身?」
どうだっただろう。
「別に騒がしくもなく、勉強も普通で頭がいい訳でもなかった。
運動も適度な感じで飛び抜けてはいなかったような。」
「いわゆる普通っぽい感じですか?」
「多分…。」

「本当ですか?それ…。」
彼女は不意にイタズラっぽい顔をした。
「前にも言いましたが、普通って何です?」
「えっ…。」
「全てにおいて飛び抜けていない…それが普通ですか?」
「あれ…。」
普通…普通だった?僕は…。
彼女は捻って来てるんだ!
どうだったんだ…考えろ!思考しろ!
全てにおいて飛び抜けていない…?
それは…それは…。

「違う…!僕は劣等感の塊だったんだ!」
「見えてきましたね。先生自身の事。」
僕は彼女の手を握り返した。
ああ、そうだ…!
僕は…だから破滅的な彼に憧れた。
飛び抜けた個性のある彼に!
つまり…それは…自分を嫌いだったって事だ。
僕は自分から抜け出したかった。
変わりたかった自分…。
世界を変えたかった彼…。

僕は自分が欠けてる理由の1つが劣等感が関係してる気がしてきた。
元々の性格は意外と捻くれてるんだ。
その片鱗はあったはずだ。
あのストレスの溜まった時に吐き出されていた毒…。

本当の僕は僕が予想出来ないような人格なのかも知れないな…。
僕は少しだけ不安を覚えた。

「少しだけ休みましょう。
何か飲み物でも買って来ましょう。
先生はブラックコーヒーで構いませんか?」
「あ、うん。じゃあ、これで買って来て。」
僕は小銭を彼女に渡した。
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