手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

黒い世界その2

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昼休みに入って、僕と清水先生は食堂に移動した。
3年の登校が少ないせいかそれ程食堂は込んでいなかった。
「ほれ!栄養つけろ!天丼!」
「あ!」
清水先生に勝手に天丼にされながら、テーブルの方へ向かうと、牧田に声をかけられた。
「シミ先こっち!こっち!」
げっ!金井先生と田宮も一緒じゃないか!
清水先生が肘で僕を押した。
くそっ!
金井先生と田宮を正面に、こちら側は僕を中心に左側に清水先生、右側に牧田が座った。
牧田がわざと僕を田宮の正面に座らせたようだ。

「お邪魔します…。」
「邪魔するぞ!ははは。」
笑うなよ!
清水先生の無意味な笑いが寒さを誘った。

「どうですか。
3年の外部受験者はカウンセリングの申し込みが多いでしょう。」
僕は金井先生に自然に話しかけた。
「そうですね。
緊張を解す方法とかよく聞きに来ますね。」
「どうやって答えるんです?」
「緊張するのは、まだ自分の力が足りてないと自分が思い込んでるからです。
緊張を超えるくらい勉強しておきなさいってね。」
「…それって。
単なる勉強させてるだけですよね。
暗示にかけて…ふふふ。おかしい。」
田宮がウケてた。
「そうだよ。
でも、緊張も解れて勉強の質も上がる一石二鳥の方法なんだ。」
「サギまがいですねー。
先生のカウンセリング。ふふふ。」
金井先生と楽しそうに話す彼女に少しだけ嫉妬した。

僕はそっと自分の足で田宮の足を突いた。
視線を逸らし、知らん顔してみた。
「!」
彼女は気づいたものの、何も言わずに軽く突き返して来た。
僕はちょっと図に乗って自分のスネを彼女のスネにすり寄せた。
彼女が僕の足を軽く踏んだ。
僕はおかしくなってソッポを向いたまま、口元を押さえた。
「武ちゃん…何笑ってんの?キモいよん。」
牧田に突っ込まれた。

その後、彼女の足が僕の足の上に乗ったまま、僕と彼女は食事をした。
テーブルの下でこっそりと触れ合う事に、僕はドキドキして幸せを感じていた。

食事を終えて、僕は一旦職員室に戻りパソコンを借りて旧理科準備室を目指した。
周りを意識して誰も居ないのを確認した上で、旧理科準備室に入った。
寒いので先に暖房を付けてからコーヒーを入れて、パソコンを接続した。

パソコンを立ち上げ、インターネットに繋いぎ、葉月からもらったURLにアクセスして、暗証コード:night moon 321を入力してログインしてみた。

「これは…!!」
それはおそらく、会員制JK専用の出会い系サイト?…かなり隠語があるようだ。
ハッキリとした売春行為の金額などは読み取れないが…。
顔は隠されてるが、制服姿の写真がハッキリ映っていた。
ん?ちょっと待て!
これは…ウチの全員制服姿!
20人近くいるぞ!
しかも…年齢が…16歳限定!?
えっ?ええ?なんで16歳なんだ…。
もしかして…!金額が違うのか?高額設定!?
どれも全員16歳になってる。

ん?なんだ…変な感じがする。
16歳は高額設定だけの為の意味か?
何か裏がありそうな…。
理由が他にもあるのか?

「うっ!」
まただ…田宮の母や…田宮 美月に感じた…そして自分自身にも感じた…吐き気がする。
不快なドス黒いものが自分の中に入って来そうな…。
この…汚い物を許せない感じ…。
グツグツと煮えたぎる汚物が…。
気持ちが悪い…。

僕はログアウトしてパソコンを閉じた。

僕は体調不良のままパソコンを持って旧理科準備室を出た。

足が重い…黒い沼を歩いてる感じだ。
膝まで浸かって歩きにくい…。
身体が重い…沈みそうだ…。
暗くてドス黒い沼に引きずり込まれそうだ…。

「先生…先生…。」

田宮の声が聞こえて来た…。
でも…前が…暗くて…見えない…。

僕はその場に沈むようにしてゆっくりと意識を失った。


目が覚めると保健室にいた。
「あれ…。どうして…?」
「大丈夫ですか?パソコンは大丈夫みたいですよ。」
田宮がベッドの上の僕を覗き込んだ。
「金井先生が先生を運んでくれました。
後でお礼を言っておいて下さい。」
「あ、えっと。今は時間…。」
「後五分で午後の授業です。
そろそろ私も行かなきゃ。」
「あの…なんで倒れたんだ?」
「えっと…おそらく、キャパオーバーかと。」
「キャパオーバー?」
「すいません。
《勉強会》のせいですね。
あれは本人が気がついてる以上に思考を使いますし、ストレスも多いので…先生の場合、欠けてる分の容量が無いので、他のストレスと重なるとキャパオーバーになるのかと…。
先生…。お仕事で悩んでませんでした?」
「あ、ああ確かに…。
ストレスはかなりかかってたかな…。」
「《勉強会》の事は一旦置いておいて下さい。
お仕事が終わってから…。」
「そのつもりだったんだ…無意識のうちだったのかもしれない…。
気を付けるよ。」
「では、もう行きます。
金井先生が入れ替わりに来ますので。」
彼女はそう言って出て行った。

「くそ!メンタル弱えーな!僕は!」
保健室の天丼に向かって叫んだ。
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