手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

恋の戦友

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彼女の言った通り、金井先生が入れ違いに入って来た。
「大丈夫ですか?よく倒れる人ですね。」
「すいません。ご迷惑をおかけしました。」
「あの…金井先生。
本当は金曜日まで待つつもりでしたが…このメモを…。」
僕は葉月からのメモを金井先生に渡した。
「すぐに見て下さい。
何かあって消されてからでは遅いので。」
「…わかりました。」
金井先生はそう言って胸ポケットにメモを入れた。

「真朝君が…あなたが倒れた時、私のせいでと言ってました。
どう言う意味でしょうか?」
探るように金井先生が問いかけて来た。
「あ!えっと…ちょっと相談事をして、それを気にしてると思ったんでしょう。
勘違いですよ。彼女の。」
僕はお茶を濁すような言葉でごまかした。
「そう…ですか。
武本先生…僕は先生にお礼を言おうと思ってまして…。」
「はっ?えっ?お礼?」
「真朝君が少しづつ打ち解けて来てくれてます。
彼女の時間は本当にゆっくりなんですね。
それに合わせると、彼女がよく笑ってくれて。
以前より会話も弾むようになりました。」
「あ…そうですか。」
「…そして…更に彼女を好きになりました。」
「…!」
やっぱり…。そんな予感はしていた。
彼女に近づく方法を知ってしまうと、どんどんと好きになっていく。
それは…僕が体験していてよくわかってる事だ。

「不思議な気分です。
彼女が側で笑うだけで、こんなにも幸せなんだと感じられて…。
あんなにも彼女を無理に欲しがってた自分が、バカらしくさえ思える。」
「それ…わかります。
でも、逆に彼女が側にいなくなると不安でたまらなくなる…。」
「そうですね。本当に。 
好きで…好きでたまらなくなる。
離れれば離れるほど…彼女を好きな自分に気付かされる。」

ああ…。
やっぱり金井先生も本当に彼女を愛し始めてる。
でも…だからと言って僕はもう…彼女無しでは生きられない…。
もう…僕の全ては彼女のものだ…。

「金井先生…。
僕はもう…逃げません。
彼女をあなたに譲ったりなんかしません。
僕は彼女を誰よりも…愛してますから。」
僕は金井先生にそう、キッパリと言い放った。
金井先生は逆に嬉しそうな顔をした。
「やっと闘う気になりましたね。
僕だって負けませんよ。
スタートは遅かったかもしれませんが。
彼女を想う気持ちは、武本先生に負けてないと思ってます。」

金井先生はそう言って左手を差し出した。
「恋の戦友ですね。僕等は。」
「はい。」
僕はその左手を握って握手した。
戦友で…ライバルで…親友だ…。


僕はその後すぐに金井先生と保健室を出て、職員室に戻った。
清水先生は授業へ行っていないみたいだ。
ロバ先生が声をかけて来た。
「また倒れたんですって?
大丈夫ですか?
今度、検査受けて見てはどうです?」
「あ、いえ。寝不足で…すいません。」
「おや!先生ったら若いな~!ぷぷ。」
おい!コラ!ロバ!何下世話な想像してやがんだよ!ちげ~~よ!
僕はロバに背中をバンバン叩かれたあと、授業の道具を持って担当クラスへ移動した。
自習か何かやってるだろうから、代理の先生と交代すれば30分は授業ができるはず。

午後の授業を途中から交代した。
ちょうど1年4組の授業だったので、彼女の様子も伺える。
「武本先生また倒れたの?大丈夫~?」
「夜のお仕事が忙しいんじゃね?はは。」
「若いんだから、しょーがねーよな!」
また4組の生徒のイジリが始まったが、以前のような嫌な気分はしなかった。
「バーカ!
お前等がそうやってイジるから、ストレスで倒れたんだよ!
もう少し、優しく扱ってくれ!」
どっ!
クラスが湧いた。
田宮もクスクス笑った。
よかった、これで心配掛けずに済んだな。
僕は彼女の笑顔を横目で確認すると、すぐに授業に入った。

授業を終えた僕の前に牧田がやって来た。
「武ちゃん、ちゃんと食べてるの?
頼りない男はダメよん!」
「そうだな。気をつけるよ。」
「最近、またニセ学者がよく真朝に近寄ってくんのよ。
真朝が鈍感ちゃんだからホイホイ行っちゃうの。
気をつけてちょ~!」
「お前なぁ。はぁ。」
僕は溜息をつきつつ、出席簿で牧田を軽く叩いた。
そして、小さい声で言った。
「無事に告れた。サンキュー。」
牧田はVサインを出して駆け出して行った。

僕も後について教室を出た。
ふと、目の端に里中 愛里の姿が見えた気がした。
しかし、廊下の角を曲がってしまった。
また…1年の廊下に来ていたのか…?。
いや、また勝手な想像や考察は止めよう。
金曜日に向けて、少し頭の中をリフレッシュしておかないと…また倒れでもしたら、相談するに相談出来なくなってしまう…。
 僕は深く考えないで記憶に残すだけにした。
彼女に心配を掛ける事だけは避けたかった。
僕は自分をコントロール出来るようにならないといけない事に気がついた。
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