手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

金曜日の偵察

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いよいよ、金曜日だ。
2回目の魔女対策会議が行われる。
僕は朝から万全の体制を取るために、いつもなら食べなかったり、少ししか食べない朝食をしっかり取った。
「今日に限って倒れたら元も子もないからな。」
ネクタイをしめながら、鏡に向かって呟いた。

気合いを入れながらも、早朝に田宮に会いたい衝動で胸がいっぱいだった。
今日も直接、旧理科室へ行こう。
彼女に会うだけで、自分がプラス思考になったと勘違いするくらいに、楽しくなる。
会いに行くまでの間さえテンションアゲアゲだ!
GPSを見ると今日は先に来ているようだ。

僕は昨日倒れた事なんて、まるっきり忘れたかのように足取り軽やかに学校へ向かった。
職員玄関を駆け抜けて、旧理科室へ直行した。

ガチャ。
「田宮…おは…。」
僕は固まった。
目の前には彼女と魔女が向かい合っていた。
「あら。おはようございます。武本先生。
朝から真朝と何するつもりなのかしら。」
いやらしい流し目で僕をからかって来た。
「おはよう。
君には関係ない話しだ。」
僕は田宮 美月に視線を合わせたまま、彼女の腕を引き寄せた。
「…おはようございます。先生。」
彼女が僕の陰で小さく挨拶した。

「まぁ、いいわ。もうすぐ卒業だし。
ちゃんと例の件も黙っててくれてるみたいだし。
あ、安心してちょうだい。
卒業後に先生と真朝の事バラすほどゲスじゃないの。
いずれ、使えるかもしれないし…。
とにかく真朝と仲良くしてちょうだい。
私の為にね。」
「使えるとか使えないとかでしか、人を判断出来ないのか?」
「他人の価値観なんて人それぞれ…。
そうでしょ。」
魔女は薄ら笑いを浮かべた。

「先生…ねぇ…。」
「!」
魔女はいきなり僕の首に手を回し、唇を重ねてきた。
グッ!
僕は魔女を引き剥がした。
「何考えてんだ!」
くそっ!舌まで入れやがった!
僕は口元を袖で拭った。
「あら、やっぱり、真朝じゃなきゃダメなのかしら。
ふふふ。面白いわ。」
魔女は完全に僕をバカにして楽しんでいた。

ガチャ。
「おはようございます。
おや、いつもより多いですね。
ゴキブリが1匹かな…?」
金井先生!
「ちっ!あんたまで、ここに来るのね。」
明らかに魔女は顔色を変えた。
すぐに身を翻して旧理科室を出て行った。

僕はその場にしゃがみ込んだ。
くそっ!最悪だ!魔女に彼女のいる前で…!
僕は犯された気分になった。
「油断しすぎでしたね。武本先生。
まさか…田宮 美月に…。」
金井先生の言葉が僕の心に刺さった。
「言わないで下さい!ヘコんでるんですから!」
僕はテンションダダ下がりで、しゃがんだままで叫んだ。

「先生…ごめんなさい。」
彼女が僕に覆い被さるように抱きしめてきた。
マズい…心配かけてる。
ヘコんでる場合じゃない!
僕は顔を上げた。
「ごめん…大丈夫だ。」
僕は彼女の頭を撫でた。

「偵察ですかね…。」
金井先生が腕組みして呟いた。
「偵察…!?」
「でも…偵察するって事は何かをしてるから…とも取れますね。
用心の必要が無いのに偵察なんておかしいですから。」
確かにそうだ…!
僕をからかう目的だけで、ここに来た訳じゃ無いだろう。

僕は立ち上がり、実験台に寄りかかって腕組みをした。
「田宮、姉さんはここに何をしに来た?」
「あの…武本先生はここにどのくらい来てる?とか…何かを調べてないかとか…。」
彼女はモゴモゴとして言いづらそうにした。
「しっ!」
金井先生が急に僕等はに喋らないように、人差し指を口元に当てると、部屋を物色し始めた。

しばらくして、僕等を手招きして来た。
金井先生はコンセントのタップを急に抜いて、足でぶっ壊した。
ガッガッ!
「金井先生!何を…。」
「盗聴器ですよ。おそらく、カメラもあります。探して下さい。」
僕と金井先生は部屋中を隈なく探して、カメラ3台を見つけた。
「こんなに…!」
僕は唖然とした。
かなりの用心深さだ。
「これを仕掛けに来たんでしょう。
そうですね、真朝君。」
「はい…ごめんなさい。」
彼女は申し訳なさそうに下を向いた。
「田宮…。君は何も悪く無い。」
彼女が何も言えないのは魔女の圧力のせいだ。
魔女はそれを見越してここを盗聴、盗撮しにきたんだ。

「武本先生…今夜が益々楽しみになりましたね。」
金井先生は不敵な笑みを浮かべて僕に言った。
「そうですね。楽しみだ。」
田宮は訳がわからず、僕等の顔を交互に見てオロオロしていた。
「とりあえず、これで終りって事だよ。
気にしないで。」
金井先生が彼女の鼻をツンと突いた。
「はい。ありがとうございます。」
彼女は照れながら下を向いた。
「…僕はもう、行きます。
ミーティングあるので。」
僕は旧理科室を後にした。

途中、水道で口を濯いだ。
魔女の呪いが残ってそうで気持ちが悪かった。
でも…心の何処かで彼女にヤキモチを妬いて欲しい自分もいて複雑だった。
僕は…金井先生が君に触れる度に、こんなにも胸の奥が熱くなるのに…。
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