手の届かない君に。

平塚冴子

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3学期

学者と王子と魔法の解けた魔女1

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安東と別れて、ひとまずマンションに帰宅してから、久瀬にアンケートの答えを送信した。

意味はわからないけど、僕の役に立つ事なんだろう。
『勉強会』か…危険だと、あれほど危機迫った言葉で僕に忠告したんだ。
何か考えがあっての事だろう。

君はぼくを助け出そうとしてる…そして…その君を僕も助け出したい。

そして…その為にはまずは、魔女を完璧に救わないと。
魔女の魔法を解いて、君の呪縛を解き放つんだ。

僕は田宮に会いたい気持ちを抑えて、火曜日の金井先生と田宮 美月とのカウンセリングに気持ちを集中させる方向に向けた。

それが終われば『勉強会』だけど、その前に安東にアドバイスされた事を実践すれば、君の気持ちに近づけるんだから!

 それが、僕にとってのご褒美のつもりで、火曜日まであれこれと田宮 美月の行動や言動を振り返り、その裏側にある淋しや、哀しみ、辛さを考えて相手の立場で話しを聞けるように準備した。

翌日の月曜に一般入試が行われた。
初々しい中学生がそれぞれの中学の制服姿でやって来る。
どの生徒を見ても、あの田宮を見た時の衝撃を感じる事は無かった。

運命とは君は決して認めないだろうけど、僕の中では君との出逢いは運命以外の何物でもない。

その日は順調に入試を終えて、生徒が全員帰宅したのを確認してから職員室に戻った。

「うっす!お疲れー!」
清水先生が職員室の自席で僕に手を振った。
「お疲れ様です。」
「何か、今年の新入生は個性的なのいなさそうだな。」
「今の1年が個性的過ぎるんですよ!」
「確かにな~。
でも、俺はその方が楽しめるんだけど。」
「体力持ちませんよ。
そんなに若くないですよ!」
「うわ!久々に毒吐きやがった。
ま、そんなお前の毒も癖になるんだけどな。
ニシシシ。」
また、いやらしい笑い方をする。

僕は席に座ると、明日の採点の為の準備を始めた。
本当は前倒しでやりたい気持ちがあるが、焦って採点ミスなんて事になったら、それこそ、その夜のカウンセリングなんて出来なくなってしまう。
万全の準備が必要なんだ。

「国語は前倒しで採点ですか?」
清水先生が前倒しで採点していたので聞いてみた。
「俺は、今回責任者だからな。
明日は集計やら何やらで、教頭と夜遅くまでデートだよ。
少しでも負担を分散しなきゃ、それこそ採点ミスしちまう。
お前の言う通り、ジイさんなんでね。」
「引きずらないでくださいよ!
全く相変わらずですねー。
僕は精神を安定させる事に集中しますよ。」
「おう!
そっちは、お前と金井先生に任せた。
最後まで魔女の面倒見てやれ!」
「はい!任せてください!」
「お!いい返事!
コーヒー奢ってやる!」
そう言いながら、机の引き出しからスティックコーヒーを取り出した。

「それ、僕がお歳暮に送ったやつですよ。」
「いーじゃん。
味の保証あるって事だし。」
「本当にいい加減な人だな。ふふ。」
思わず、笑ってしまった。
リラックス出来てる。
この調子なら、大丈夫だ。
僕なら出来る…!
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