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第四章
国境越え、いざアルバ国入国へ②
しおりを挟む「まったく迷惑な話しだ。
国内でトラブルだとかで入国審査員がたった一人だとか。
なんだか知らんが、国の中枢機能が麻痺してると言ってるらしいが、はた迷惑な事だ!
こっちはアルバ国なんぞに長居したい訳じゃないんだぞ。」
「団長、落ち着いて。
その分入国審査は緩くなるでしょうし、もう少しの辛抱です。
焦って国に入って密入国で捕まったらそれこそ、こんな辺境の国に長居させたられますよ。
あすの夕刻くらいには順番が回って来そうですし。」
「単なる通り道にすぎない国なのに、全く。」
テントのそばまで怒号が聞こえてきた。
この国のドタバタ一切の元凶の本人は私の傍らで舌を出していた。
あまり深入りして、抜け出せなくなるのはイヤだからなるべく触れない様にして来たが、なんだってアルは国を出たのだろう。
目的が未だに垣間見えない。
デルアビド王に助けを乞うって言うなら、充分理解できるが、お互いに顔を合わせていないところを見るとそうではないらしい。
何も考えていない…可能性はなきにしもあらずだが、そこまで無責任という感じはしない。
アルは一体何を考えているんだ?
掴める様で掴めない、まるで雲の様な男だアルは。
そおっと入り口を覗き込むとテントの中にはでっぷりとした腹で頭は禿げて、白髭を蓄えた団長と呼ばれる男が椅子に落ちそうなスタイルで座っていた。
隣には妖艶な踊り子の衣装を着た若い女性が立って団長をなだめていた。
アイツが団長ね。
ん~、ますますアノ手は使いたくないぞ!
私は嫌な想像をして、ブルっと体を震わせた。
「アル、交渉は私が。
上手くいく保証はありませんが、アルよりは口が上手いですから。
その分アルは黙っていてください。
いいですね。」
「おう!口にチャックだへな。」
私はフードの箸をクイッと引き外し、背筋を伸ばしてテントの入り口にてを掛けた。
「失礼します。
旅の者ですが、折りいってお願いがありまして。」
腰を低くして、なるべく低姿勢をこころがけた。
アルは腰巾着の様に私の後ろにピタリとくっついていた。
「おや、これは随分と色の白い優男だ事。
サーカスにいると団長以外はほぼ筋肉ダルマしかいないの。
後でお茶でもどう?」
「あ、いえ、私は団長とお話が…。」
「ミランダ!さっさと道具の手入れに行け!」
あからさまに焼きもちを焼き、ミランダを追い払う団長に嫌な予感がした。
女ってのはどうしてこうも、物事をややこしくするんだよ。
参ったな、これで一層交渉が難しくなった。
そそくさと逃げ出すミランダにアルがぶつかりそうになる。
いぶかしげに、上目遣いで団長は私達を品定めする様な仕草をした。
「はん!大方、国境越えしたいからサーカスに入れてくれってこったろ!
よくいるんだよ、そう言う楽して国境越えようなんて輩は!
帰った帰った!
お前らみたいな、若くて生っ白いのはサーカスじゃ役に立たん!」
「お見通しって訳ですね。
正直に言いましょう、その通りです。
ただ、私達はアルバ国内に入りたいだけなので、そこの入国審査さえ抜けられればいいのです。
多少の金額は手持ちにあります。
交渉いただけないでしょうか?」
私は疑い深い団長に、あえて嘘など付かず正直に交渉に出た。
悪い話では無いと思う。
彼らはそれ程アルバ国に滞在予定ではないはず。
長居しないと言う事は、万が一後日トラブルが起きても、この国を去ってしまった後ならば、被害を被るリスクは少ないはず。
そう、私は考えた。
効率的に1番良い策だった。
団長は金がすぐに手に入り、私達は簡単に国内に入る事が出来る。
しかし、人間というものは何故こうも感情という非効率なものに左右されるのだ!
理解不能だ!
「確かに良い話ではあるがな。
さっきのミランダの様に団員に色目を使われたら、たまったもんじゃない!
お前らの様な若僧はお断りだ!
さっさと出て行け!
このテントに近寄るな!」
女難の相でも出ているのだろうか?
色ボケジジイの言動に多少イラッと来たが、ここでトラブルを起こしても何ら特にはならない。
これはもう、アレだなぁ。
はあ。アレ…かぁ~。
「…相当気が立ってるべな。」
アルは心配そうに私に耳打ちして来た。
「仕方ありません、一旦引いて策を変更しましょう。
はぁ。変更…。」
私達は奥歯を噛み締めつつ、一礼をしてテントを後にした。
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