しあわせの魔王〜ポンコツ勇者と天才魔王のふしぎな建国記録〜  アルバ国攻略編

平塚冴子

文字の大きさ
18 / 61
第四章

国境越え、いざアルバ国入国へ⓷

しおりを挟む

「いゃ~、参っただなぁ。」
「全然困った言い方じゃないですよねそれ。
 そもそも、アルは今でも本当は戻りたくないと思ってるんですよね。
 あ、すいません。
 忘れて下さい。」

 つい、テントを出て苛立ちをアルにぶつけてしまった。
 アルは悪くないのに。
 苛立つ自分にさらに苛立ちを覚えた。
 
「ありがとうな。
 本当は何故国を抜け出したのか聞きたいんだべ?
 ナナシはオラに気を遣って、ずっと理由も聞かずにいてくれただな。
 けんど、もう少しだけ待ってけろ。
 もう少しだけ。」
「わかってますよ。
 気にしないでください、本当に。
 それに、気を遣ってるわけじゃなくて、単に揉め事に巻き込まれるのがゴメンなだけですよ。
 私は他人に親身になれるほど、優しい人間ではありません。」
「そか。
 でも、オラはそれでもナナシはいい奴だと思うべな。」

 数々のテントを掻き分けて、少し離れた場所に移動した。
 
「さて、このままではどうしょうもありませんね。
 団長の気持ちが落ち着くまで、少し時間を稼ぎましょう。
 夜に再度交渉に行きますよ。
 腹一杯、睡眠欲が出ると、判断力が鈍りますからね。
 そこを狙って、交渉しましょう。
 あ、今度は私1人で行きますね。
 アルも夜はそれ程強い方ではないですし。」
「わかっとるべな。
 朝早いのは得意だども、どうも陽が落ちるとやっぱり自分でも、行動が遅くなるだべ。
 アルに任せるだよ。
 頼むだよ。」

 やんわりと程のいい言葉を並べてアルに交渉の場から離す事を促した。
 
 いや、本当は全然そんな理由じゃないんだよ、考えてもみろ、私が例のアノ力を使い団長を骨抜きにしたとしたら…物凄い地獄絵図だよ。
 何故に私が、中年小太り男と…おぞましすぎる。
 絵面的にも完全アウトな世界だ。
 団長とのラブシーンなんて、笑えるどころか、ドン引きして人々が静かに潮の如く去っていく、冷ややかな映像だろ。
 私にだって好み趣向は無くはないんだよ、無心の境地を極めた宗教人供とは違うんだ。
 貧しい中、身売りをしなければならない女ってのはこういう気分なのか?
 いや!死んでも呪われても貞操だけは守るぞ!
 
 今から後遺症になりそうな自分を奮い立たせる為に、とにかく腹一杯食べて、ある意味夜の戦場へ向かう準備をしなければならない。
 とりあえずその場に腰を下ろして、持ってきた加工したヤギ肉を少し切り、市場で買った野菜を頬張った。

「つかぬ事を聞きますが、デルアビド王とはその、仲が良くなかったのですか?」
「んん?んにゃ、むしろ1番仲良かったべ。
 頭がいい奴だからオラに色々教えてくれたり、神経質な所もあって世話焼きだし。
 変わり者ではあったけど、いい奴だべよ。」
「ですが、それ程仲が良いようには見えませんが。
 アルに会おうとすらしていない、そんな感じが。」
「オラだって、よくわかんねーだ。
 魔王倒したのはええんだけんど、その後国分けやら何やらでゴタゴタして。
 互いの国への干渉は控える事になったべ。
 確かに、簡単に連絡はするなって言われたけんど、忙しいから余裕がねぇだけだと思うけんど。」
「そうですか…。」

 人間の感情にそれ程詳しい訳ではないが、本当にそうなのだろうか?
 まあ奇才という種類の人間は気難しい者が少なからずいる。
 理解不能なのが当たり前なのかもしれない。
 アルの言う通り、あまり深くは意味がないのかもしれないな。
 でも、逆にアルがデルアビド王を頼れなかったのはそこら辺の事情なのか?
 本来なら頼りたかった…とか。
 やめよう!
 人間関係に深入りして、得した者の話など聞いた事がない。
 魔物や魔族はそこら辺は単純明快だし、物事ハッキリ言うからこういう、グダグダした関係は扱い方がわからない。
 そういう面では自分が魔族であった事は良かったのかもしれない。
 アルの話しも淡々と聞いてられる。
 
 仲間か…生きていればいつか出逢えるだけで、羨ましい。
 それだけで…私なら充分だ。
 
 「オラ、ちょっと食い終わったら、さっきの異国の土産物売ってたテントの子守たのまれたで、行ってくるべな。」
「唐突ですね。
 しかも突然頼まれて受けたんですね。」
「子守りしながらの商売は大変だべ。
 少しの間でも手助けになるし、食後の運動にちょうどいいべな。」
「とか言って、逃げないでくださいよ。
 国王誘拐犯指名手配!
 なんて言いがかりつけられたら目にも当てられない。」
「もう!大丈夫だって、ちゃんと帰る気はあるべな。
 なんとかなりそうだし。」
「……?」
「じゃあ、行ってくるべな。
 ナナシには少し休んで欲しいべな。
 夜が怖ければ、昼なら眠れるべ。」

 アルはまだ口の中でヤギ肉を踊らせながら立ち上がって、キャラバンのテントの波に消えていった。
 アルなりに気を遣っているのか。

「プッ、なんだか幼い子供に心配されてる大人みたいだな、今の私は。」

 確かに夜よりは昼間の方が少しは楽に寝られる。
 私は鞄から出した麻袋をゴザがわりにして、マントで陽を遮り横になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処理中です...