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第四章
国境越え、いざアルバ国入国へ⑤
しおりを挟むテントの中の人数をまずは外からサーチをかけてみた。
今の魔力ならそれも造作もない事だ。
どうやら、団長1人で酒を呑んでいるようた。
「大丈夫だな。
酒を食らって、うつらうつらしてる。
これなら私の支配下に置くのも数秒、いや瞬時に可能だな。」
問題は効力がありすぎて、どこまで効くかだ。
そして、どうにかして闇に呼ぶ事も必須だった。
私は腕組みをして、少し考えながら視線をテントに沿わせた。
すると、テントの脇に水桶と柄杓が置かれているのが目に付いた。
「これだな。」
私は柄杓を手に取ると、テントを柄杓の柄の部分の棒でなぞり始めた。
ジジジ。
ジャージジジジャー。
分厚いテントの布をなぞると、引き攣った音が鳴った。
その音は他のテント内まで響くほどではないが、中にいる人間なら気になってしょうがなくなるほどの雑音だ。
ジジジ、ジジジジャー。
「だ、誰だ?
誰かそこにいるのか?おいっ!」
テント内部から震える団長の声が漏れてくる。
私はホラーやサスペンスの物語のように無言のまま音を鳴らし続けた。
「おい!悪い悪戯はやめろ!
早く何に入って来い!
おいい~!」
団長の恐怖心があからさまに高まっているのが手に取れるようだ。
私はそれでも尚、無言のまま柄杓の柄でテントをなぞり続けた。
ジジジ。
ジャージジジジャー。
「やめろ!やめろ!
だ、誰だ!悪戯だろ!
いい加減にしろ~!」
耳を塞ぎ、目を瞑ったままテントから、でっぷりとした腹を上下に揺らして飛び出して来た。
私は団長の前にすかさず立ち塞がった。
「お前は、昼間の…。」
黄金の瞳は団長の目を捉えて離さない。
『闇の覇王に従事し、従え下僕よ!』
コンマ何秒か、団長の周りの空気が凍りついた。
その後、瞬時に団長の表情が恐怖から、恍惚の表情に変わった。
「あああ、何と!
昼間の青年!
旦那ぁ、わざわざ私に会いに来てくれるとは。
ささ、テントの中へ。
夜風はお身体にさわりますよ。」
あーもう!触ってんのはテメェだろうが!
団長は私の手を両手で愛しそうに触りながら顔を近づけてきた。
酒臭いんだよぉおお!
加齢臭と酒の匂いが混ざって、最悪の混合臭をかもし出してるんだよ!
誰かにこんなところ見られでもしたら黒歴史だろ!いや既に真っ黒歴史だ!
自分でも、ハッキリ自覚出来るくらいに顔を引き攣らせながらも、何とか笑顔を保った。
「外では人目につきやすい。
中に入ってから話すぞ。」
「あんん。」
私は団長の手を軽く払うと、人目につかないうちにテント内へ入った。
テント内は外国製の茶器や、アクセサリーが並べられていた。
衣装部屋も兼ねているのか。
確かにサーカスで金目の物と言ったら衣装が1番だろう。
「丁度、東南の国からの商人から買ったハーブティーがありますよ。
今、お茶をお入れします。
ふふふ。」
「結構。
入国審査を通過できるように計らって欲しいのだ。
要件を素早く了解して欲しい。」
ふふふ、じゃね~んだよジジイ!
ウィンクすんじゃねーっての、胃液が上がってくるだろうが!
額の血管がヒクヒクと波打つのをさすがに止める事が出来ない。
「いけずう~。
アルバ国に入るなら噂話の1つや2つ、と思ってたのにぃ~。」
「…‼︎今、アルバ国の噂話と言ったか?」
早々に、入国審査に紛れ込むよう取り計らって貰い、戻るつもりだったのに。
これは…食い付きたくはないが、団長の話しに食いつくしかないのか~?
数分間、自分のプライドと葛藤したものの、興味本位が勝ち残ってしまった。
「はぁ、手短に聞かせて貰う。
後、お茶はぬるめで頼む。
熱いのは苦手だ。」
プライドなんて物に、それほど価値がない事を経験上悟っている私は、目的の為にこの小太り親父とお茶を酌み交わす羽目になってしまった。
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