しあわせの魔王〜ポンコツ勇者と天才魔王のふしぎな建国記録〜  アルバ国攻略編

平塚冴子

文字の大きさ
21 / 61
第四章

国境越え、いざアルバ国入国へ⑥

しおりを挟む

 隣に座りたがる小太りジジイを、正面に座らせて、私はハーブティーを口に含んだ。

「旦那ぁ、アルバ国にご執心なんて、珍しいですよ。
 確かに、勇者の治める国として始めは盛り上がっていましたよ。
 民衆の期待値はMAXでしたからね。」
「単純だな。
 勇者といえど万能な訳なかろう。
 そもそも、元々の国の価値もあるだろう。」
「冷静に考えてみれば、その通り当たり前の事ですがね、あの時あの時代は狂気でしたからねー。」
「狂気?なんでだ?
 魔王を討伐したんだろ?」

 て、いうか、私だよ。
 討伐されて落ちぶれたのは目の前にいる、この私。

「だからですよ。
 魔王統治から解き放たれた民衆は、あからさまに『勇者ハイ』だったんですよ。」
「ぶほっ!ゲホ!うぉえっ。」

 思わず、ハーブティーを噴き上げてしまった。。
 
 勇者ハイだって?
 正気な判断が出来なかったのか?浮足立ち過ぎて。
 民衆の期待は想像以上に膨れ上がっていて、その中アルは国王として祭り上げられたって事なのか?

 予想以上にヘビーな話しに、既に気力の3分の1を奪われてしまった。

「あらー!大変!
 お洋服が!」
「だー!拭かなくていい!
 自分で拭く!話しを続けろ!」

 タオルを手に、ドサクサ紛れに身体を舐め回す様に弄ってきた団長を一喝した。
 握った拳をグーパンしそうになり、フルフルと振るわせると団長は引き下がった。
 
「ざっくりとした噂ですが、1年と経たずに、国王の人気は下がり非難や不満が国中に広がってしまったとか。
 経済が上手くいってないのが余計に民衆の不満を買ってる。
 それなのに、国庫の為に税金を上げたり、1部の貴族に有利な政治を行うとか。
 勇者も欲にまみれるっていうよくありそうな噂でして。」
「ンな訳ないだろ!ふざけるな!」

 バン!
 思わずテーブルに両手をついて立ち上がってしまった。

 嗚呼クソっ!
 何をイラついてるんだ私は。
 確かにこの噂話でアルは悪者扱いされているようだ。
 しかし、それが私とどう関係すると言うんだ?
 私を討伐したせいで…いやいや、それはアルの問題だ。
 私の問題ではない。
 私がどうこう出来る問題でもないし、立ち入ってよい話ではない。
 落ち着け、落ち着け。
 私はもう魔王ではない。
 人としても不完全な存在なんだ。
 アルバ国に何ら関与できる身分ではないのだ。

「そんなご機嫌悪くなさって、安心して下さい。
 明日の夕刻に我がサーカス団は入国審査で国境を越えられる予定です。
 先に猛獣を乗せた馬車、動物、その後団員の審査がありますが、各まとまりごとに通してもらえるのです。
 ま、疑わしく思われたら一芸でも見せておけば、文句は言われないでしょう。
 審査の効率化らしいですよ。」
 
 私は一呼吸して冷静さを取り戻した。
 
「宜しく頼む。
 もう、噂話はこれ以上結構だ。
 明日の夕刻前にまたここを訪れる。」
「ええええ。
 もうちょっと、話しを。
 あ、なんならお休み所を提供させていただきますよ。」

 潤んだ瞳で私の事を下から舐め回すように見上げる団長に、私も我慢の限界に達した。

「いや、結構だ。
 私も色々と1人で考えたい事もあるので、また。」
「そうですか。
 お邪魔はしたくはないですぅ。
 一時のお別れですね。
 涙でハンカチを濡らして、待ってますぅ~。」
「…ああ、そう。」

 はぁ、めんどくせぇ。

 目を細めながらそう返事を返すと、私は立ち上がって、くるりと向きを変えテントを後にした。
 さて、頭を切り替えよう。
 アルが目覚める前に、通常の私に戻らねば。
 何も聞かなかった事にしなければ。
 キャラバンテントの間を縫うように抜けてアルの眠る小高い丘へ向かった。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...