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Side - 15 - 20 - もりのくまさん -(挿絵あり)

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Side - 15 - 20 - もりのくまさん -


「ちょっとそこの君達、お姉さんとお話ししようか・・・」

・・・シャルロットさんが道の真ん中でジ⚪︎ジョ立ちして男の子達の行く手を塞ぎます、あれかっこいいのです!、理世のお父さんの本棚にあったジョジ⚪︎の漫画は私にはちょっと絵柄が濃くて最後まで読んでないのですが、あの独特のポーズは知っているのです!、その中の花京院立ちというやつなのです!。

「・・・なんだよ!、ってすげぇ美人の姉ちゃんだ!」

「胸小ぃせぇけどすげぇ!」

「私より小さい・・・」

カッ!

シャルロットさんが目を見開いて殺気を放出します、・・・泥だらけでこちらに走って来ていたのは、男の子2人と女の子1人、3人ともすごい震えてますね、生まれたての子鹿みたいなのです・・・。





「なるほど・・・、そんな感じでトシくんをみんなで殴る蹴るの袋叩きにしていたら、突然泥を顔に投げつけられて返り討ちにあった・・・と」

「・・・はい」

「聞いた話だと5人で行ったそうっすけど、なんで3人なんっすか?」

「他の2人は・・・隣町に居た悪そうな2人組に金払って連れて来たんだ・・・好き放題殴らせてやるって・・・」

「あ?」

「・・・いえ本当にすみませんでした、もうしません」

「で、残りの2人はどこっすか?」

「殴られてブチ切れてたな・・・」

「あぁ、持って来た魔獣寄せを撒いて殺してやるとか・・・」

「なんでそんなヤバいもん持ってるんっすか!、君ら自分が何やったか分かってるんっすか!」

「え、でも俺らやってないし・・・」

「そんなの持ってる奴ら街に連れて来た時点で重罪っすよ!、・・・って君ら今、慈悲の星いくつっすか?」

「みんな3つあるけど・・・ってまさか・・・」

「ヤバいっすね、トシくんタコ殴りの時点で傷害罪、多分未成年で初犯だったら恩情出るからそれは大丈夫っしょ、でも街の生活圏内で魔獣寄せ撒いたのは確実に星一つ消えるっすね、それと軽くて3年くらい監獄行きっすかね」

「・・・そんな」

「街の人たちの命を危険に晒したんだから当然っす!、それと隠れて色々悪さやってたみたいっすけど、それ全部バレたら合計で10件超えてるっすか?」

「・・・多分超えてる・・・かな?」

「軽犯罪は合計して10件超えると星一つ消えるっすよ」

「「「・・・え?」」」

「綺麗にハモったっすけど。大人から習ったでしょ、さては真面目に説明聞いてなかったっすね!、だ・か・ら!、君らそんな若いのにもう3つの星のうち2個消えるっす、それってもうどこも雇ってくれないっすよ・・・ってそんな事やってる場合じゃないっす!、魔獣寄せ撒いたら下手すると大惨事っす!、君らすぐに街に行って衛兵に正直に話して人を手配してもらうっす!、急いで!」

「・・・なぁ、でもここでこいつら殺っちゃったら俺らのした事バレなくね?、こっち3人だし」

「あぁ、そうよね・・・」

「やっちゃう?、殺した後で崖から落とせば事故ってことになりそうだし」

「何バカなこと言ってるんっすか、うちら貴族っすよ!」

「もっとマシな嘘言えよ姉さん、そんな品のない女やガキが貴族なわけ無いだろ、怖くなって嘘つくならもっとマシな嘘つけよ」

「・・・貴方達のこと思って言ってるのに・・・絶対に後悔するからやめなさいって言ってるんっす!」

シャルロットさんと3人の話を横で聞いてたら3人が刃物を出しました、え、何でみんなこっちを見るのです?。

「おい!、そっちのちっこいの人質にしろ!」

「おう!」

・・・待って、ナイフを持った男の子が私に向かって来るのです!、私が死んだあの時の男達のような目をして・・・。

「・・・やだぁ・・・やめて・・・、来ないで・・・怖いよぅ」

ふんっ!

どす!

ぐほぉ!

シャルロットさんの華麗な後ろ回し蹴りがキマりました!、男の子の顔に直撃して一人目が失神しました。


ほぁたぁ!

きゅう・・・

シャルロットさんの裏拳が女の子の顎にキマりました、シャルロットさんにナイフを向けていましたが頭を強く揺らされて崩れるように倒れて失神します。


うらぁ!

へぶっ!

シャルロットさんの華麗なジャーマンがキマりました、2人目の男の子が地面に叩きつけられて失神します。

「リゼルくん!、この子達を連れて私と街の衛兵詰所に転移することできますか!、本当に魔獣寄せ撒かれてたら急ぎで衛兵に知らせて対応しないと大変なことになるっす」

「・・・うん、できるよ、・・・詰所の裏手の・・・路地のところなら知ってるし、人目が無さそうだから・・・そこでいい?」

「いいっす!、お願いするっす!」

「じゃぁ行くよ、・・・即席魔法陣展開!、・・・転移!」

そして私は4人を転移させました、・・・私を残して・・・。

「・・・だって、トシがまだ丘にいるなら早く行ってあげないと魔獣に食べられちゃうかも・・・凄く嫌な奴だったけど、・・・死んでほしく無いのです!」

林の中の道を抜けると視界が開け、丘が見えました、ここがソラミミの丘でしょうか?、途中の道は禍々しかったけど綺麗なところですね、所々にポプラのような背の高い木が生えている草原、・・・森の向こう・・・遠くには雪山も見えます・・・えと、トシはどこかな・・・って、向こうでおっきな熊さんに迫られているのです!。

怪我をしてるのでしょうか?それとも腰が抜けてるのか、尻餅をついた状態で木を背にして追い詰められています、今は木の棒を振り回してるからまだ食べられていません、熊さんの背後から気付かれずになんとか近づく事が出来ないでしょうか?。

男の人は怖いけど、今の私は無敵の人です!、熊さんは私に傷ひとつ付けることが出来ないのです、ここはカッコよく助けて恩を売っておいてやるのです!、そして私に対する今までの非礼を詫びさせるのです!、リゼル様って様をつけて呼んでもらうのもいいかもしれませんね、土下座も捨て難いし・・・さてどうやって生意気なトシを辱めてやろうかな・・・。

頭の中で理世のお母さんがよく聴いていたセックス・マシンガンズの「森のくまさん」が流れます、私は「ボボボボ・ボンジュール」って呟きながら私は熊さんに気付かれないよう慎重に移動します。

おや、熊さんの背後からじわり、じわりと忍び寄る私にトシが気付いたようです、何か言ってますね、「リゼル!、馬鹿!、に・・・」何でしょう、風が強くてよく聞こえませんが、確かにリゼルはバカって言ったのは聞こえたのです!、せっかく助けに来てやったのに人の事をバカ呼ばわりとは酷い奴なのです!。

ようやく熊さんの背後に到着しました、えらく大きな熊さんですね、私は杖に魔力を込めて鞘を外します、鞘は2つに分かれて地面に落ち、中から鋭い剣が姿を現しました。

この杖はシルベスター叔父様が討ち取ったブラックドラゴンの骨を使って職人さんが杖に仕上げたものに、じぃじが勝手に剣を仕込んだ仕込み杖なのです、怖いから剣は使わないって言ってじぃじには悲しい顔をさせてしまいましたが、ようやく使う時が来たのです!、じぃじ・・・お空から見守っていてくださいね(生きてるけど)。

杖を持つ手に力を込めて・・・

えい!

ぷす!

熊さんのお尻の穴に突き立てました、あれ、少ししか刺さらないのです!、私が非力すぎるからでしょうか、思ってたのとちょっと違うのです!、って思いながら刺した杖をぐりぐりしてると・・・。

あ、振り向いた熊さんと目が合いました、そんなに見つめられると照れるじゃないですか・・・。

がおー

あれ、熊さんがとても怒っているのです、少しは効いたようですね、トシが這いながら私の所に来て熊さんの前に出て庇おうとしてくれます、ここで小説のヒロインなら「ドキッ・・・」とか「・・・トクン」って惚れるのでしょうが、相手はトシのクソ野郎なのです、しかも前世は24歳彼氏無しの処女だったのです、死ぬ直前に奪われちゃいましたが・・・、それはさておき、私の恋愛感情は枯れ果てているのです、「・・・トクン」ってなる訳がないのです!。

熊さんが大きく息を吸い込み、首の後ろの鬣が赤く染まります、どうやらこの熊さんは火を吐くフレイムベアーさんだったようです、おっとダメなのです!、私は大丈夫なのですが、トシはブレスを吐かれたら死んでしまうのです!。

私はトシを突き飛ばします、その直後、私は熊さんのブレスを浴びて火だるまになりました、熊さんは火と同時に燃料も口から吐くからよく燃えるのです、トシが何か叫んでいますが炎の勢いが凄くてよく聞こえません。

そうだ、熊さんに抱きつけばダメージを与えられるのでは?って考えた私は火だるまの状態で熊さんの足に抱きつきました、おっと効果がありましたね、熱くて熊さんが暴れています、私は振り飛ばされないように大しゅきホールドでしがみ付きます、炎が毛皮に燃え移って熊さんも火だるまです。

炎が熊さんの顔まで達して呼吸と共に体内の燃料に引火したようで、一層激しく燃え上がります、まるでテレビで見た炎の祭典、阿含の星祭りみたいですね、キャンプファイヤーにも見えますがあくまでも星祭りなのです!、キャンプファイヤーは良い思い出が無いので・・・特にフォークダンスはクソなのです!・・・あのぼっちに対する卑劣極まりない残酷な行事は国際法で禁止すべきなのです!。

・・・話が逸れましたね、熊さんは最後の力を振り絞って逃げようとしていますが、残念ながら途中で力尽きてしまいました、森の入り口で倒れ私は熊さんの下敷きに・・・。

私の上半身が倒れた熊さんの下になりうまく出られません、重いのです!、せっかく不死身になったのに熊さんの死体に挟まれて餓死なんて冗談じゃ無いのです、・・・そうだ、転移して逃げればいいのです!って思いましたが・・・、トシが近くに居るだろうから転移魔法陣を使ってるのを見られて私の正体がバレたらまずいのです!。

熊さんの下でジタバタしていると足音が近づいてきてトシの声がしました。

「お前、・・・何で?」

「・・・出られない・・・引っ張って・・・」

私はお願いしました、トシのクソ野郎にお願いなんて屈辱ですが魔法を見られるよりはマシなのです!。

「おう」

トシが答えます、痛いのです!、左足を引っ張られると傷が痛むのです!、・・・左足の感覚は無いけど、この忌々しい呪いは苦痛だけはご丁寧に私に与えて来やがるのです!。

「・・・痛い、・・・左足・・・ダメ・・・右足でお願い」

「すまん」

トシが私の右足を引っ張って熊さんの死体の下から引っ張り出してくれました・・・。

「ぷは!、・・・やっと・・・出られたのです・・・」

私の目の前にはトシが居て顔を真っ赤にしているのです、手には私の右足、仰向けに倒れている私を凝視しているのです、どうしたのでしょう?。

「え、・・・な、・・・何で全裸なのですかぁ!」

そうなのです!、熊さんの炎で服が全部燃えて今の私は全裸なのです!、それにお母様と一緒に作った大切な眼帯も燃えていて無いのです!、悲しいのです!、恥ずかしいのです!、眼帯が無いから醜い左目をトシに見られてしまうのです!。

「・・・見ないで・・・うぅ・・・ぐすっ・・・お願い・・・」

私は両手で顔を覆い泣き出してしまいました。

「・・・お前、女だったのかよ」

何でバレたのでしょう、・・・ひぃっ!、そういえば私は全裸!、顔を隠して股間を隠さず状態だったのです!、トシのクソ野郎は何でまだ私の右足を抱えているのですか!、早く離しやがるのです!、この事は絶対にバレちゃダメなのです、私は言い訳を考えました。

「・・・違う、・・・僕は男・・・だよ・・・」

「でも付いてない・・・」

「大怪我を・・・した時に・・・おちんちんも・・・切られたの・・・ぐすっ・・・」

「・・・は?」

ちょっと言い訳が苦しかったでしょうか、いえ、ここは勢いで押し切るのです!。

「・・・よく見るのです・・・切られて・・・おっきな・・・穴が開いたのです・・・僕は・・・男の子・・・女の子・・・違う・・・いいね」

「・・・おう」

信じてくれたようなのです!、男の子は全裸を見られても恥ずかしがってはいけないのです!、そう思っているとトシの後ろから・・・。

「・・・トシくぅーん、うちのリゼルくんを何で襲ってるんっすかぁ」

コメカミに青筋をピキピキと浮かべてシャルロットさんが立っていました・・・。

「・・・トシロー、・・・お前って奴は・・・」

同じくコメカミに青筋を浮かべたマスターも立っています。

「待て、違うんだ!」

ようやくトシが私の右足を離してくれました・・・ひぃっ!、向こうから衛兵さん達が走って来てるのです!、私は全裸!、流石にこんなに沢山の人に見られたら恥ずかしいのです!、思わず私は蹲りました。

「・・・凄い、・・・背中にも・・・傷」

蹲ったから背中の傷も見られてしまいましたぁ!、トシが私に追い打ちをかけます、酷い傷なのは私が一番よく知っているのです!、本当に何なのですかこのクソ野郎は!、せっかく助けてあげたのに恩を仇で返されたのです!、もう許さないのです!。

「嬢ちゃ・・・いや坊主、これ着ろ」

私がフルフルと震えながら泣いているとマスターが着ていたシャツを貸してくれました、顔はいかついけどとてもいい人なのです、トシのクソ野郎は叔父様を見習うのです!、そういえばマスターさん、どこかで見た顔だと思ったのですが、お父さんが持ってたコマンドーのDVDに出てたベネットさんを少し太らせた感じなのです、とても似ています、お髭がかっこいいのです!。

全裸におじさんシャツを着てシャルロットさんの方を見ます、ひっ!、お・・・怒っているのです・・・お顔が怖いのです、きっと私だけ残って一緒に転移しなかったの怒っているのです!。

「うぅ・・・ひっく・・・ぐす・・・シャルロットさん・・・あの・・・ごめん・・・僕・・・」

「・・・いいっすよ、トシくんが心配だったんっしょ、次からは何かするとき私にも言ってくださいよぉ、・・・心配したんっすからぁ」

シャルロットさんがまた泣いています、申し訳なくて私も涙が出て来ました。

「・・・本当にごめん・・・ぐすっ・・・」

向こうではトシがマスターに顔面を鷲掴みにされて「痛い」「やめろ」って泣き叫んでいますが・・・いい気味なのです、そうだ、私、トシに謝らなきゃ・・・、嫌なことは早く済ませておきたい性格なのです!。

私はまだマスターに顔面を掴まれて痛がっているトシの所に行きました、杖がまだ熊さんのお尻に刺さってるから歩くのが不恰好でコケそうなのです!。

「・・・あの、・・・トシ・・・昨日・・・ぐすっ・・・叩いちゃって・・・ひっく・・・ご・・・ごめん・・・僕・・・叩くつもりじゃ・・・なかったの・・・許して・・・欲しいの・・・」

マスターがトシの背中を叩いて私の目の前に連れて来ました。

「・・・い・・・いいぜ!、許してやらぁ・・・俺も・・・今日・・・命・・・助けてもらって・・・あ・・・ありがとうな、・・・これで貸し借りなしって訳にはいかないが・・・」

何でなのです!、命まで助けてやったのにまだ叩いちゃった借りが残るのですか!、なんて欲深い奴なのでしょう!、トシのほっぺたは命より重いって言いやがるのですかこのクソ野郎は!。

「・・・じゃぁ、・・・僕は・・・トシの・・・子分で居れば・・・いいの?」

うぅ・・・仕方ないのです・・・このクソ野郎に何をさせられるか分かったものじゃ無いのでこちらから先手を打つのです!、嫌だけど仕方ないからトシの子分でいてやるのです!、感謝するのです!、・・・そう思ってトシの顔を上目遣いで見上げると、満面の笑顔で・・・。

「・・・お・・・おう!、子分で居させてやるよ、兄貴分としていろんなところに連れて行って遊んでやるから覚悟しとけ!」

これで一安心です、でもとても疲れましたぁ・・・悩み事が多くて最近寝不足だったから今日こそぐっすり寝ましょう・・・。

「・・・あれ?、でも・・・何か重大な事、忘れてるような・・・何だっけ?」






その夜・・・

「ちょっと待つのです!、今日私とトシが助かったのはこの防御結界の腕輪があったおかげで・・・例えば過去に戻って腕輪を付けないように過去の私に忠告してしまうと・・・、今日私とトシは熊さんに襲われて死んでしまうんじゃ・・・、えと、・・・でもトシを叩いたのは腕輪をからかわれたからで・・・、それだと私はトシを探してなくて・・・トシは一人丘で5人に絡まれて、熊に食べられて死んじゃう?・・・」

「過去を変えたら、・・・トシが死んじゃう?、・・・嘘、・・・この腕輪・・・うぅ・・・私、・・・一生・・・このままだぁ・・・」

ぐすっ・・・今夜も眠れなくなりましたぁ・・・。

私はチベットスナギツネみたいな表情で泣きながらお布団に潜り込んだのです・・・。


コルトの街
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