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Side - 302 - 6 - みなみのだいきぞく -(挿絵あり)

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Side - 302 - 6 - みなみのだいきぞく -


私の名前はエリック・サウスウッド、エテルナ大陸にあるローゼリア王国の南を守る辺境伯だ。

私たち夫婦は跡取りの息子が生まれた後、なかなか子供に恵まれなかった、だが、長男が生まれてから6年後、ようやく娘が生まれた、妻が欲しがっていた待望の娘、私たちは娘をとても可愛がった。

しかし、あまりにも可愛がり過ぎて、娘の教育を間違ってしまった、外は危ないからと家の中で大事に育て、悪い虫がつかないように男との接触を避けさせた。

だからなのか・・・15歳になったある日、使用人の男と家を出た、駆け落ちだった、書き置きには「大事に育ててくれたことは感謝しているが、息苦しい家はもううんざり、私は愛する人と一緒に幸せな家庭を作る、探さないで」と書かれていた。

探さないでと言われて探さない親などいない、しかもここは辺境、森には魔獣が出る、私は家の兵を使い娘を探したが、・・・3日後、駆け落ちした男と娘の死体が森で見つかった、・・・魔獣に襲われたようだ。

息子や私も悲しんだが、妻の悲しみは見ていられなかった、部屋に引きこもり、娘の名前を呼び続ける毎日、・・・明るかった屋敷が暗く沈んでしまった。

そんな時だった、陛下から連絡があった、正確には陛下と言っても統一国王陛下の方だ。

今の国王陛下、・・・もうすぐ即位される我が国の女王陛下ではなく友人のギャラン・ローゼリア国王陛下でもない・・・、彼を通じて私に話がある旨を伝えて来た、・・・なんだろう、・・・何かしくじってお叱りを受けるのか、・・・だが心当たりが無い、・・・ギャラン・ローゼリアの国王陛下に聞いても心配するな、悪い話では無い・・・と。

翌日私は転移魔法陣でギャラン・ローゼリアの王城へ、・・・この国に留学していた学生時代、遊びに行った時によく通された王族のプライベートルームだ、・・・そこに私の悪友であるギャラン・ローゼリアの国王陛下と、・・・統一国王陛下、・・・それから・・・小さな女の子、・・・眼帯をして魔法使いのような・、・・いや・・・魔法騎士団のローブを着た女の子が居た。

私は統一国王陛下の前に跪き、礼をとった、・・・悪友の陛下は・・・する必要ないな、・・・奴には散々な目に遭わされたからな・・・。

「おいおい、相変わらずだな、僕には礼をしてくれないのか」

「・・・ではついでに」

「ついでって言うな!、この野郎・・・」




「さて、まずはお悔やみを、昨年娘さんが残念なことになったと聞いた・・・」

統一国王陛下が口を開いた。

「勿体ないお言葉です、その節はギャラン・ローゼリアより見舞金を頂きありがとうございます」

「あー、あれは僕のプライベートな財布から出したやつ、国からじゃないよ」

悪友がそんなことを言った、聞いてないぞ・・・。

「そうだったのか、・・・すまん、感謝する」

「いやいや、君、娘さんを溺愛してたからな・・・、僕も君の憔悴ぶりを見ていて辛くてね、何かできないかって思った、それで国からって事で出したんだ、恩着せがましいことはしたくなかったから」

「待て、お前が恩着せがましくなかった事なんてあったか?」

「さぁ・・・何の事かな、見た感じ少しは元気になったようだね、よかった、・・・で、お節介かと思ったんだけど、少し提案したい事がある、これは王命でもなんでもないから嫌なら断ってくれてもいいし、この提案で気を悪くしたのなら謝る、詳しいことは大伯父上から聞いてくれ」

まずい、統一国王陛下を放置して昔のノリで悪友と話してしまった・・・。

「こほん、本当に彼と君とは仲良しのようだ、では私の話も仲良しの伯父として気楽に聞いてほしい」

「・・・はい」

「ここにいる彼女はリーゼロッテ・シェルダン、知ってるとは思うが白銀の大魔導士って呼ばれてる人物だ」

なかなかお目にかかれないと言われている王国の最高戦力・・・、こんな小さな子が、・・・いや実際の年齢は300歳を超えているらしいが・・・。

「お目にかかったのは初めてです、・・・お会いできて光栄です」

「・・・」

無言でぺこりとお辞儀をした、・・・目つきは鋭いが可愛いな。

「それで、彼女は子供を亡くした親に、その代わり・・・と言ってはなんだが、心を癒す必要のある親たちの為に、人工生命体(ゴーレム)を開発していてね、それがほぼ実用段階に来ている」

「えぇ、大魔導士様はゴーレム開発の権威だと、・・・最近では「アラーレ」が様々な場所で運用されていますね」

「その通り、今回の人工生命体(ゴーレム)はその「アラーレ」の次の世代になる、名称は「リン」だ、・・・入ってきたまえ」

隣室のドアが開いて、また小さな・・・だが大魔導士様よりは大きな、黒髪の女の子が入って来た、統一国王陛下のところに小走りで駆け寄って。

「お父様!」

抱きついた、・・・そして陛下の膝の上で、胸に頭を擦り付けてゴロゴロと甘えて・・・陛下も頭を撫でている、小動物みたいで可愛いな。

「彼女はエテルナ・ローゼリア初代女王だったリィンフェルド・フェリス・ローゼリア、96歳で亡くなったが、その彼女の記憶や行動を学習させている、外見も15歳の時の彼女を元に作っている」

驚いた、私の目の前にいる白いワンピースの女の子、彼女が人工生命体(ゴーレム)だと・・・、どう見ても本物の人間にしか見えない・・・。

「驚きました、・・・本物の人間にしか見えませんね」

「そうだろう、リンちゃん、お願いできるかな」

「はい」

そして彼女は統一国王陛下の膝から降りて私のところに歩いてきます、そして私の目の前に立って、え、待ってくれ・・・ワンピースを脱ぎ始めたぞ!。

「ちょっ・・・ちょっと待ってくれ!」

「心配いらないよ、よく見てて、僕が何をしても絶対に手を出すなよ」

悪友が悪そうな顔をして私に言った。

服を脱いだその子は、・・・とてもえっちだった!、・・・いや、ブーツと手袋は履いたままだが・・・全身をピッタリと覆うグレーの服、胸の真ん中には赤い石、・・・魔石を丸く研磨したものかな・・・。

「リンちゃん・・・戦闘モード」

白銀の大魔導士様が何か呟いた、・・・なんだろう、・・・そう思っていると悪友が立ち上がり傍に置いていた剣を抜いて・・・おい!、何するんだよ!。

ガキッ!

彼女に向かって剣で斬りつけた、彼女は反応して右腕を盾にするように剣の刃を、何だと・・・剣を腕の側面で受け止めた、・・・斬られてない。

「彼女の着てる・・・っていうか人工皮膚は耐刃、耐魔法に優れててね、斬りつけられてもこの通り、傷ひとつ付かない」

悪友が自慢げに言った、お前がすごいんじゃないだろ、その自慢そうな顔腹立つからやめろ。

「どうかな、彼女は」

統一陛下が私に尋ねた、脱いだワンピースを回収した彼女は服を抱えたまま陛下の膝に座って甘えている。

「どう、・・・と申されましても、・・・凄いとしか・・・」

「人工生命体(ゴーレム)としては出来過ぎていてね、この子を見た者達は皆欲しがり売ってくれと言ってうるさい、白銀の大魔導士殿の意向としては使う者によっては危険なものとなる為一般販売はしない、技術も公開しない、・・・と頑なに拒んでいた、だがあらゆる方面から圧力をかける者達が居てね、あまりに鬱陶しいから貸し出しという形なら・・・という条件で大魔導士殿を納得させた、今までは私のところで暴走しないか、危険がないか検証を重ねていたんだが、私だけでは不十分だ、だから他の人間が使った場合、あるいは・・・あらゆる条件下に置かれた場合の検証データが欲しい、例えば溺愛して甘やかしたり、魔獣と戦わせたり・・・いろんなデータがね」

「聞いた事があります、最新型の人型ゴーレムが凄いと、・・・なるほど、それで私にお話が・・・」

「そう、察しが良くて助かる、この子を貸し出すにあたって条件があってね、まず絶対に必要なものは魔力量の多い人間、貴方はかなり多いと聞いた、それから・・・信頼できる人間、この子を悪用しない、虐待しない・・・その点はギャラン・ローゼリアの国王陛下がとても信用できる人間だと保証している、それから、こちらの都合で申し訳ないが、・・・この子の戦闘能力も検証したい、貴方の領地は魔獣が多いだろう、その点でも最適だ、皆が欲しがるこの子を預かってはくれないか、細かな条件は後で話そう、どうかな」

「そのような理由でしたら、お受けいたします、将来的には私どものような子を亡くした親の・・・心の支えにもなるでしょうし、私の家族でお役に立てるなら・・・」

「ありがとう」

「・・・ただ、娘を亡くした妻がこの子を気に入り、そちらに返却する時に悲しむのではないかと懸念します、・・・2度も娘を失うのは流石に・・・」

「それは心配いらない、貸し出し期間は無制限だ、いらなくなったら返してもらえればいい、もちろんこちらからお願いしているのだから貸し出し費用や定期メンテナンス、消耗品、それらの費用は全て無償、気に入ったのなら子や孫に引き継いでもいい、私も白銀の大魔導士殿も寿命が無いから、2人が生きている間はこの契約が有効になる」

「それでしたら・・・妻も喜ぶと思います・・・」

「そうか、じゃぁ貸し出しの機体だが・・・リンちゃん、お願いできるかな」

「・・・はい」

リンちゃんと呼ばれた人工生命体(ゴーレム)が隣の部屋に行き、そして連れて入って来たのは・・・双子のようにそっくりなもう一人。

「このリンちゃんは大魔導士殿の娘でね、私もお気に入りなんだ、だから貸し出しはできない、そちらの子が量産型の「リン」初号機だ、一応契約書にサインをしてもらうけど、それから貸し出し条件の詳しい説明だね、それが終わったら今日にでも連れて帰ってもらって構わないよ、取扱方法と注意事項を説明するために白銀の大魔導師殿と補助として別の人工生命体(ゴーレム)2体を3日ほどそちらの家に滞在させるが、構わないかね」

「はい、もちろんです、国の英雄、白銀の大魔導士殿に滞在いただけるのは我が家としても光栄です」




そして統一国王陛下は退席し、悪友と白銀の大魔導士様立ち会いの元、私は最初に出てきた「リン」さんによって「リン」初号機の説明を受けています。

「取扱説明書はこちらです、分厚いので全部読まなくても構いません、分からないところがあった時にお読みください、それから、通常貸し出しの機体は人工皮膚の色がグレーと赤の2色が選べるようになっています、この初号機はグレーですが希望されるなら次回のフルメンテナンス時に赤に変更してお渡しする事も可能です」

「いや、どちらでも構いません」

「この「リン」は貸し出しとはいえ、今日から貴方の家の所有物になります、どのように使って頂いても構いません、初期設定は「ご主人様に言われた通りの人格で振る舞いなさい」、これは変えてもらっても構いません、娘として大切に育てても、メイドとして仕事をさせても、それから・・・兵器として使ってもいいです」

「但し「人間」に対して危害を与える行動は禁止されています、もし破ると「リン」の身体に激痛が走るようになっていて、痛みで泣き叫びます、あと「戦闘モード」というものがありまして、主人の命令で切り替わります、訓練などで相手に対し剣を向けて寸止めさせるように命令すれば「危害」とは認識されませんので兵士の訓練に使ってもいいでしょう、外的要因で受けた痛みは遮断されるので感じません、ただ、「戦闘モード」以外の時に蹴ったり殴ったりすると痛がって泣きます」

「痛みを感じるのですか」

「人間と同じで痛覚はもちろん触覚や熱、冷たさに対しての感覚もあります、ちなみにくすぐればくすぐったがって悶えます」

今説明をしている「リン」さんも表情が豊かだが、横に居る量産型?初号機?の「リン」も可愛いな、ニコニコと説明を聞き、時々首を傾げたり、私の顔を見たり・・・落ち着きなく天井を見上げたり・・・これからこの子と一緒に生活する事になるのか。

「食べ物や飲み物は与えないで下さい、消化器官が無いので・・・、それから、生殖器もありませんので夜の相手はできません、命令すればお口でならできると思いますが、・・・感情があるので嫌がるかと・・・」

「知識は初代女王陛下の記憶を学習させていますから一通りのマナーや礼儀作法は身に付いています、戦闘に関しては簡単な自己防衛ができる程度ですので、そちらで訓練して頂けるとるとありがたいです、尚、訓練して習得した戦闘技能はサウスウッド家の許可無く他の個体には転用しませんのでご安心ください」

「髪は切らないでください、普通の髪ではなくブラックドラゴンの髭を加工したものです、切るとハサミの方がボロボロになります、邪魔な時は束ねるよう指示をすれば自分で工夫すると思います」

「1日1回、朝でもいいですし、夜でもいいので魔力の補充を行ってください、1日経過後も魔力が供給されないと人間でいう「眠った」状態になります、起こす時は胸の魔石に魔力を流して目を開けたら口から魔力を流し込んで下さい」

「・・・口・・・ですか?」

「そうです、相手は人工生命体(ゴーレム)ですので特に問題ないかと」

「・・・恥ずかしいのですが」

「リン」さんの隣で悪友の陛下が、「いい歳したおっさんが恥ずかしいとか」って爆笑してる、畜生!、腹立つなぁ!。

「オプションとして口以外に魔力を補充する端子を設けることはできますが・・・あまりお勧めはできません」

「なぜでしょう」

「・・・えと、オプション端子は・・・お尻の穴になるので・・・お口より恥ずかしいかと・・・つけますか?」

「・・・いえ・・・いりません」

「リン」さんの隣で悪友の陛下が「尻!、尻の穴!」って手を叩いて爆笑してる、今のがツボにハマったんだろう、あいつは昔からそういう奴だった、人生楽しそうで羨ましいぞ。

「「リン」の行動は魔石に記録され、今後の開発に役立てられます、この子の悲しい、楽しい、嬉しい、痛い、などの感情も記録され、定期的に私や白銀の大魔導士様が閲覧します、あまりにも酷い虐待が確認できた時には貸し出しを中止する場合があります」

「日常生活でのプライベートな記憶も保存されますが、白銀の大魔導士・・・リーゼロッテ様はサウスウッド家の許可無く必要事項以外のプライベートな記録は閲覧しないという誓約書を用意しました、・・・こちらです、お受け取りください」

「バックアップは半年に1回、200日を目安に胸の魔石を交換してください、交換した魔石はこちらに送ってもらい、データとして保管しますので、この子の身体が完全に破壊されても遡ってバックアップが取られた日までの記憶や感情は復元できます、逆にバックアップをとっていないと破壊された時の復元が不可能になりますので注意してください」

「それから絶対に忘れさせたくない日などは200日経っていなくてもバックアップをとってもらって構いません、こちらもなるべく多くのデータを取りたいのでバックアップを頻繁に行う事は歓迎いたします」

「たとえば頭が吹き飛んでも大丈夫なのですか」

「はい、破損時は残骸を可能な限り回収して送ってもらえれば、こちらの予備の機体にバックアップのデータを入れた状態でそちらにお送りします」

「・・・すごいですね」

「はい、実際に使われた感想や要望がありましたら遠慮なくご連絡ください、今後の開発に役立てますので」






そして・・・

「帰ったよ・・・」

「お帰りなさい父上、あれ、そちらの方達は・・・お客様?・・・って同じ顔・・・三つ子?」

「いや、これから説明する、母さんを呼んできてくれるかな」

「はい・・・」






「・・・というわけで、統一国王陛下とギャラン・ローゼリア国王陛下の提案を受けて彼女達と白銀の大魔導士様を我が家にお連れした、だがお前達がどうしても受け入れられないというのなら私が陛下に頭を下げてお断りするつもりだ、・・・断ってもらっても構わないという話だったからな」

「いえ、僕は構いません、あの子の代わり・・・というわけには行きませんが、新しい妹ができて嬉しいです」

息子が戸惑いながらも受け入れてくれた。

「・・・私も、問題ありません、まだ悲しいのですが、受け入れて前に進まないといけませんものね」

妻も了承したが・・・あまり乗り気では無いようだ・・・。





・・・そんな事を考えていた時も私にはあった、・・・翌日はお互い恐る恐る・・・といった感じだったが2日目には・・・。

「さぁミリアちゃん、お母様とお揃いのドレス、とってもよく似合ってる、可愛い!」

「ありがとうございます、お母様、とても綺麗なドレス・・・嬉しい・・・」

妻はミリア・・・亡くなった娘の名前を与えられた人工生命体(ゴーレム)をとても気に入ったようだ、そしてミリア・・・彼女も母親と呼んでとても懐いた、たとえそう振舞う事が彼女に与えられた仕事・・・だとしても・・・。





「さて、一通り操作手順と注意事項はお話ししました、魔力の供給は当主様とご子息様が交代で行われるのですね」

「この家であの子に渡せるだけの魔力量を持った人間は私と息子だけですから、当日魔力を多く使う可能性が低いか、時間が空いている方が臨機応変にやろうという事になりました、・・・まだ2人とも照れるのですが・・・」

「そこはお気になさらず、人間ではなく魔道具・・・人工生命体(ゴーレム)ですので、それで、魔力を満たした時にはどれくらい減った感じがしますか」

「魔力量は息子より私の方が多くて、それで5分の1程減ったかな、息子は4分の1程度、それにしても本当に人間と変わらないですね、口の中にちゃんと唾液も出てたし、・・・舌や唇も柔らかかった・・・いや、失礼」

「・・・父上、舌・・・入れたの?」

横にいた息子が私に尋ねた。

「・・・え、あれって入れるもんじゃないのか」

いかん・・・妻と息子の視線が冷たくなった。

「もう彼女はこの家の所有物ですのでどのように扱われても結構ですが・・・魔力供給の後は口内を水で濯ぐように指示しておく事をお勧めします、でないと当主様とご子息様が・・・その、間接キスという・・・」

「わぁぁ!」

息子が心底嫌そうに口を押さえた、・・・くそう、なんか腹立つな、そうだな・・・確かに昨日は夕方に私が、それから今日は先程息子がやったんだった

「それから、一緒に生活していて情が移るでしょうが、例えば当主様達ご家族が誰か・・・人間か、魔獣に襲われた時、彼女は身体を盾にしてでも守るでしょう、・・・その時は決して彼女を助けないようにお願いします、彼女を助ける為に人間である貴方達が命を失っては意味がありません、彼女は身体が損傷してもバックアップを定期的に残している限り何度でも再生が可能です、できれば、彼女を盾として放置し、安全な場所でどの程度の戦闘能力があるか、どのような攻撃を受ければ破損するか、などをよくご覧になってその状況をこちらに連絡して頂けるとありがたいです」

「えぇ、分かっています、・・・だが思わず助けようと体が動いてしまうかもしれないですな・・・」

「少し酷い話になりますが、例えば「思わず」彼女を助けてしまい、それが原因で当主様がお怪我をされた場合、彼女がどのような反応をするのか興味深いです、推測出来るのは相手が魔獣の場合は錯乱して原型を留めなくなるほど攻撃するか、・・・泣き叫んで使い物にならなくなるか、・・・白銀の大魔導士様は怪我をしませんのでその辺りの検証が不足しているのです、でもわざとお怪我をなさる必要は全くありません、機会があれば、そして余裕があれば確認してもらえるとありがたい、というだけですので」

「はは、確かに無いに越した事はないですね・・・」

「最後に、こちらは通信用の直通転送魔法陣、そして緊急呼び出し用の転移魔法陣を魔石に入れたものです、これを当主様にお渡しします、通信用は質問事項を紙に書いて送って頂くと回答して返送します、記憶の魔石の発送にもお使いください、それから緊急呼び出し用のものについては、この魔石を地面に置いて魔力を流すと白銀の大魔導士様がこの魔石に転移して来ます、但し、入浴中だったり睡眠を取られている場合は少し到着が遅れます」

「これを使うと・・・大魔導士様が来て下さるのですか・・・」

「はい、寝起きの時は若干不機嫌だと思いますが、できるだけ早急に転移して参ります・・・「リン」に関してだけではなく、魔獣が大発生して手に負えない場合、呼び出してもらっても結構です、「リン」の検証に協力頂いている謝礼・・・のようなものですので、ただ、用も無いのに呼び出したり、あまりに頻繁に呼び出されますと・・・大魔導士様は気難しく人嫌い、それに短気なお方ですので・・・」

・・・とんでもないものを持たされてしまった、・・・緊急呼び出し・・・余程の時以外は使わないようにしよう、・・・と心に決めた。

「それではあと残り1日、ご自由に使って頂き、分からないところがありましたらお尋ねください、私どもは用意して頂いたお部屋におりますので、・・・あ、そうだ、白銀の大魔導士様が南の大森林を見たいと希望しておりまして、帰る前に少し森の中を見せて頂く許可が欲しいのですが・・・」

「もちろん構わないですよ、護衛にうちの騎士達を付けましょうか」

「お気遣いありがとうございます、ですが白銀の大魔導士様はランサー大陸の魔の森に住まわれていますので、ここに出る魔獣が束になっても危険はありません、護衛・・・ではなく、あえてお願いするなら、不幸にも遭遇してしまった魔獣の死体はこちらにお持ちすれば処理してもらえますか?、それから森の地理に詳しくないので案内できる方を一人手配頂けるとありがたいです」

「あぁ・・・そうでした、とてもお強いのだから必要ないですね、もちろん魔獣の死体は大歓迎です、肉は食材、内臓は薬の素材、魔石は資源、それから骨は観光土産としても人気があるのですよ、しかも森から大量に湧いてきて討伐が大変なので1匹でも減らしてもらえると助かります、・・・解体した後の素材のお金もお支払いしましょう、それから案内役として騎士団の誰か・・・副団長が詳しいので頼んでおきましょう、私とは長い付き合いの友人で、信用できる男ですから遠慮なく使ってください」

「ありがとうございます、でもお金は必要ありません、森に放置すると不都合があるので処置だけしてもらえれば・・・処置場を教えてい頂けたらそこへ死体を転移させて送りますので」

「転移で・・・ですか?・・・凄いですね・・・」

そして翌日、大魔導士様が副団長を連れて森に出かけられた後、処理場に首と胴体が分かれた巨大なドラゴンやオーガが転送されて来たと、騎士が私の執務室に飛び込んで来るのだが、それはまた別の機会に・・・。

「それにしても困ったな、・・・皆があらゆる手を尽くして欲しがる最新型の人工生命体(ゴーレム)が家にやって来て、白銀の大魔導士様とのコネが出来た、・・・これが知られたら・・・他の貴族家に嫉妬されるだろう、・・・あの悪友め、俺が困惑してるのを今頃笑ってるだろうなぁ・・・今回の件は感謝してるが・・・覚えてろよ・・・」


ミリアさん=メカリィンさん量産型初号機


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