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Side - -06 - 2 - あらあらうふふ -

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Side - -06 - 2 - あらあらうふふ -


「マリアンヌがあのクソ野郎に・・・つ・・・連れて行かれただとぉ!」

「はい、申し訳ございません、私どもではお止めすることが出来ず、カーラを同行させるのが精一杯で・・・」

商会で仕事をしているとうちの使用人が俺に用があると言って尋ねて来た、理由を聞けば姉が大変な事になっていた、屋敷から一番近い俺の所に知らせに来たとの事だった。

「親父は・・・仕事だよな、お袋はこの事を知ってるのか?」

「はい、奥様は騒ぎを聞き付けて研究棟から本宅に来られたのですが・・・馬車が出た後でして、あのクソ・・・いえ、ネッコォ家子息様に連れて行かれたと聞いて膝から崩れるようにしてお倒れに・・・」

「なん・・・だと」

「親父の居る商会・・・本店か・・・そこに使いを出せ、クソ野郎が問題を起こしたからすぐ戻れって言えば分かるだろう、俺は屋敷に戻ってお袋の様子を見て来る」





俺の名前はパトリック・ボッチ、この家の長男でマリアンヌの双子の弟だ、親父のドルフ・ボッチはでかい商会の代表でお袋のリリアンヌ・ボッチはこの辺では名の通った凄腕の錬金術師、ちなみに俺は親父の下で商会の経営を学んでいる。

俺たち双子は裕福な家で幸せに育った、親父とお袋は仲が良く、使用人とも家族同然の付き合いをしている、その幸せが崩れたのは俺とマリアンヌが14歳の終わり頃、このローゼリア王国をはじめ、エテルナ大陸中に商会を増やしていた我が家がとある上級貴族に目を付けられた。

代々王国の貿易大臣を務めているネッコォ家だ。

ネッコォ家は先代までは上級貴族の名門で多くの貴族家の代表として敬われていた、だが代替わりして今の当主になってからおかしくなった。

はっきり言えば甘やかされて育った典型的なバカ息子・・・無能な当主だ、遊び人でもあった現当主は短期間で家の財産を食い潰した、国有数の資産家だったのに一代で家を傾けるとは別の意味で才能があるな。

そして家に金が無くなると金がある家から毟り取ろうとした、不幸にも目を付けられたのは我が家と同じく商会を多く持つ下級貴族家だった。

貿易大臣の権限を使い言葉巧みに金を騙し取った、はっきり言えば詐欺だ、そしてその家は多額の借金を抱えて潰れたのだ、当然被害に遭った貴族家は王家に訴えた、だがネッコォ家は権力だけはまだ残っていたからその声は王家に届く前に握り潰された。

次に目を付けられた不幸な家が我が家だ、詐欺の手口は商会の間で知られてしまった為別の手を使った、ネッコォ家の長男を我が家の娘と結婚させる・・・つまり政略結婚だ。

ネッコォ家は我が家の貿易を優遇する代わりに多額の資金援助を要求、本来は賄賂として法律で禁じられている事だが両家が親戚関係になる事でうまく法をすり抜けられると説明された、とてつもなく怪しい話だがな。

我が家としてはそのような限りなく違法に近い商売などする気はないと正式に断った。

だが断られたネッコォ家が今度は我が家の貿易免許を取り消すと言い出した、そんな事をされたらうちの商会は商売にならないし潰れるだろう。

我が家が潰れるだけならまだ良いが、商会に勤める従業員の生活もかかっている、簡単に潰す事などできない、だから我が家は苦渋の決断をした。

ネッコォ家の息子とマリアンヌを婚約させ、ネッコォ家には結婚準備金として多額の金を払ったのだ。

もちろんあの欲深い家がそれだけで済ませる筈がない、うちが潰れるまで金を毟り取るだろう事は容易に予想がついた、婚約期間中・・・結婚前までにネッコォ家が行った悪事の証拠を集めて王家に直訴する、それしか我が家が商売を続ける道は無かった。

結婚は成人・・・15歳になったらすぐにさせたいとネッコォ家は言って来たがマリアンヌが17歳になるまで引き伸ばした、この条件でないと婚約させない、我が家を潰すなら好きにしろ、但し結婚資金は一切払わないぞと親父が向こうを脅して何とか勝ち取ったのだ。

俺とマリアンヌは今16歳だからもう時間がない、証拠は少しずつ集まってはいるが決定的な物が無い、中途半端に敵対すると報復されるから確実に向こうを潰せる証拠を探している所だ。

それまでマリアンヌには耐えて欲しい、そう言って婚約が決まった時、泣いて嫌がるマリアンヌを親父が説得したのだ。

コンコン・・・

ガチャ

「お袋、大丈夫か?」

「うぅ・・・パトリックちゃん・・・マリアンヌちゃんが・・・私のマリアンヌちゃんがぁ・・・」

「落ち着け、17歳になるまで絶対に手を出さない、さもなければ婚約は無効だと契約させただろう」

「ぐすっ・・・でもぉ」

「今親父を呼びに行ってもらってる、もうすぐ帰って来るだろう、どこに行くか使用人のみんなは聞いてないのか?」

「うん・・・連れて行かれたって事だけしか分からないの・・・」

「あのクソ野郎・・・」





今この人私達を路地裏に運べって言ったぁ!・・・路地裏で何されるの?。

「怖いよぉ・・・お父様助けて」

「お嬢様ぁ・・・」

フルフル・・・

「心配しないで、私たちは悪い人じゃないよ」

3人組の中にいる女の人が私達に言いました、でもこの人も只者じゃ無い感じがするの・・・悪い人は普通自分から悪い人だとは言わないの・・・。

「とりあえず泥だらけの服を何とかしないとな、今朝まで雨降ってたから2人とも凄い事になってるし」

「だが共同浴場が開くのは夕方だろう、それにこれだけ泥まみれだと流石に怒られそうだ」

3人組の中の男性2人・・・凶悪じゃない方と凶悪な方が2人で話しています。

「宿は・・・ここは歓楽街だからまともな宿が無さそうね、どうしましょう」

「俺たちで周りを囲んで水場まで行こう」

「待て待て、外でこの娘たちの身体洗わせるのかよ」

「ならどうしろと!」

「あ・・・あの!」

わぁ・・・カーラさんがこの空気の中で発言した、勇気あるなぁ・・・。

「何だ?」

「ここから東に向かえば大通りに出るのでそこから貴族街に・・・貴族街に入ればウンディーネ家のお屋敷が近くにあるので・・・」

「貴方たちはウンディーネ家の関係者なの?、あの上級貴族のウンディーネだよね?」

「いえ・・・お嬢様がそこのご令嬢とお友達で・・・私たちのお家はもっと歩かないとダメだし・・・でもここから知り合いで一番近いのはそのお家なんです」

「そうか、ならそこで風呂を借りるか、友人なら門番も通してくれるだろう」

でもウンディーネ家に行ったら・・・私達のこの姿を見てお姉様なんて言うだろう、説明しないと納得しなさそうだし・・・転んだ事にする?。

「こんな所に居ても良い事は何もない、早く行こう、屋敷までついて行ってやるよ」

「あ・・・ありがとうございます・・・ぐすっ・・・」





「相変わらずでかい屋敷だな」

「これがウンディーネ家の王都邸かぁ、趣味が良いわね」

「さて無事に届けたし、俺たちは帰ろうか」

私達はお姉様・・・ウンディーネ家の前に着きました、ここからは私が門番の人に顔を見せて中に居るお姉様を呼んでもらわなきゃ・・・。

カラカラ・・・

そう思っていると馬車が門の前に止まりました、家の人が帰って来たのかな。

「あらあら・・・どなたかしら・・・ってマリアンヌさん?、どうしたのその姿!」

「あぅ・・・お姉様・・・お姉様ぁ・・・わーん!」

馬車に乗っていたのは私の親友・・・お姉様と呼んで仲良くさせてもらっているアリシア・ウンディーネ様でした。





ざぱぁ・・・

ごしごし

ざぱぁ・・・

「ウンディーネ家の馬車汚しちゃった」

「えぇ・・・中が泥だらけで酷い事に・・・お掃除が大変そう」

「でも私達は歩くって言ってるのにお姉様が乗れって言うし・・・」

私とカーラさんはウンディーネ家のお風呂を借りて身体を洗っています、お洋服もお姉様のを貸してもらえるそうです。

「この後お姉様に説明しなきゃだけど・・・どうしよう・・・」

「正直に話して助けを求めた方がよろしいかと・・・」

「でも・・・いくらウンディーネ家でもネッコォ家と対立したらまずいの、この家も貿易してるし、絶対迷惑かかるの」





「何で俺たちまで屋敷の中に通されるんだよ」

「そりゃお嬢様が親友を送り届けてくださったお礼を・・・って言ってるからだろ」

「このお茶美味しいわぁ・・・」





コンコン・・・

ガチャ・・・

「改めて私の親友を送り届けてくださった事に感謝致します」

「あぁ、気にしないで下さい、偶然通りかかっただけですので」

「・・・ところで、殿下達はそのような格好で何をなさっているのです?」

「ありゃ・・・バレてた」

「変装してたんだけどなぁ」

「そりゃばれるわよ、ノルドちゃんみたいな凶悪な顔した人なんてそんなに居ないでしょ」

「インフィーちゃん酷ぇ!」

「彼女があのような姿になるなんて何があったのでしょう、あの娘、最近私に何か隠しているみたいだし、日に日に表情が暗くなってて心配で・・・」

「何があったと言われても・・・ネッコォ家の馬車から男と降りてきて、一緒にいたメイドが賭博場に連れ込もうとしてる男からお嬢さんを奪おうとしたら突き飛ばされた」

「そうそう、あれは危なかったよな、俺らも助けようとしたけど突然の事で間に合わなかった、あのお嬢さんが車道に押し出されて馬車に轢かれそうになってたメイドちゃんの腕を引っ張って間一髪のところを助けたんだ、転んで泥だらけになったけどね」

「・・・ネッコォ家の馬車から降りて来た男というのは若い男ですか」

「そうだよ、夜会で見た事があるけどあの家の息子だ」

「婚約者が・・・相手の家のメイドを殺そうとしたと?」

「え、あの娘、ネッコォ家子息の婚約者なの?」

「とてもそんな感じには見えなかったわぁ、それに普通は婚約者を賭博場になんて連れて行かないわよね」

「賭博場・・・あの男が賭博場に私のマリアンヌさんを・・・連れて行ったのですか?」

「そう、一緒に中に入ろうとしてメイドがそれを阻止しようとしてた感じだよね」

フルフル・・・

バキッ・・・

「あ、扇子折れた・・・凄い力だねアリシア嬢」

「やはり・・・やはりあの男はクズだったのですね・・・私があの娘に・・・婚約者の評判が良くないと教えても・・・優しくしてくれるから大丈夫だと・・・心配しないでと・・・あれは嘘だったのですね・・・」

ゴゴゴゴゴ・・・

「わぁ・・・怖い」

「マリアンヌちゃん、大丈夫かなぁ・・・俺たちこれ言っちゃって良かったのかな」

「ふー・・・ふー・・・失礼しました、怒りで取り乱してしまいました・・・見苦しいところをお見せして申し訳ありません」





ガチャ・・・

「お姉様ぁ・・・お風呂ありがとうございました・・・」

ゴゴゴゴゴ・・・

「お姉様?」

ゴゴゴゴゴ・・・

「・・・マリアンヌさん・・・お話があります」

「ひぃっ・・・」





「・・・というわけで、今旦那様達は婚約期間を時間稼ぎに利用してネッコォ家を潰す証拠を集めているところでして、それまでお嬢様にはあのクソ野郎の相手は辛いだろうけど我慢して欲しいと・・・」

カーラさんが私の代わりに経緯を説明してくれました、イッヌ様の私に対する扱いや暴言も全部・・・。

「マリアンヌさん、私貴方に言いましたよね、「あの男、評判がよろしくなくてよ」・・・と、その時貴方は私に何と言ったかしら・・・」

「うぅ・・・あぅ・・・ぐすっ・・・おねぇざまぁ・・・嘘をついてごめんなざい・・・ひっく・・・うっく・・・でも・・・迷惑がかかると思ってぇ・・・」

「・・・」

「・・・おねえさま?・・・あの・・・」

「あらあら・・・うふふ・・・舐めた真似してくれますねぇ、あの犬畜生・・・、私の大事なマリアンヌさんに・・・たっぷりとお仕置きをしてあげないといけませんわねぇ・・・うふふふ・・・」





ひそひそ・・・

「ネッコォ家の現当主はやばいが息子はまともだと聞いてたんだがなぁ、外面だけ良かったのか・・・」

「そんな事になっていたとは・・・詐欺に賄賂・・・、親父は何をしてるんだ、あの顔に付いてる目は節穴か・・・」

「貿易大臣変わってから変だとは思ってたけど理由が分かったわ」

「それにしてもアリシア嬢・・・大人しそうなご令嬢かと思ってたが怒らせたらやばいな・・・」
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