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4章 まきしまのちかとし〜かぞくにあおう〜

Side LE - 15 - 35 - おねぇちゃんだ -

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「もう夕方かぁ・・・カリンさんと地下街に遊びに行こうって言ってたのに、邪魔が入ったね」

「そうだな、あいつらも仕事だから気持ちは分かるがあまり秘密を知り過ぎると私が「対処」しないといけなくなる」

「殺しちゃダメだよ」

「殺しはしない、拘束して少し脅すだけだ」

「・・・」

「街の中だけど身体は交代しなくてもいいの?」

「この辺は治安もそう悪くないから大丈夫だし魔女様の弟子に何かしようなんて奴は居ない、レイアもたまには自分の意思で自由に街を歩いてみたいだろう」

「地下に入るのは初めてだけど広いねー」

「ここは雨の影響も無いからな、湿気もローゼリア王国製の空調魔道具を大量に設置しているから快適だ、太陽の光が当たらないのが唯一の欠点だが地上も毎日雨だからな・・・」

「こんな広い場所に空調付けたの?、すごくお金かかったでしょ」

「半分くらいは私の個人資産から出した、だから街の人達からは感謝されているぞ」

「まるで女王様だね」

「・・・まぁな、この街を中心にマキシマ川流域と大森林も含めて一つの独立国みたいなものだ、私の存在を隠したいし外交が色々と面倒だから皇帝陛下に「お願い」してオースター帝国の中に入れてもらっている」

「凄い・・・」

こんにちは、私の名前はレイア・ルミナス、今はユッキィとお話ししながらマキシマの地下街を歩いています。

何度も街には来てるけど、地下街に入るのは今日が初めてです、地下には階層があって全部で5つ、そのうち一番地上に近い1階層に居ます。

全部の階層を見て歩くと1日ではとても終わらないのだとか・・・、本当は今日カリンさんと一緒に地下でお買い物しようと思ってたのに・・・。

ほとんど毎日雨が降っている地上とは違い、ここはとても快適です、天井が高くて広い通路には等間隔で魔導灯が灯いているし、お店も沢山並んでいて明るく賑やか、活気があります。

「ねぇユッキィ、今日はここで泊まるんでしょ」

「あぁ、今から帰っていたら夜遅くなるからな、ただいつもの宿・・・ソドムはあいつらが居るから地下の適当な宿にしよう」

「トリスお姉さんとエルちゃん大丈夫かなぁ」

「飯を置いてきたから勝手に食ってると思うぞ」

「そうだね・・・あ、あのお店、カリンさんが言ってた雑貨屋さんかな?、わーい、可愛いアクセサリーがいっぱいあるよ!」

ガチャッ・・・

魔導灯の暖かい灯りのついた小さなお店、中に入るとアクセサリーやぬいぐるみ、小物など、かわいい物で溢れていました。

「いらっしゃい、ごめんなさいね、今少し混んでるから表に置いてある展示品を見ていてね」

店主らしい初老の女性がカウンターから私に声をかけました、お店の中には私と同じくらいの女の子が4人、楽しそうに商品を選んでいます。

「はーい、確かに商品が沢山置いてあるから5人入ったら窮屈だね、高そうなもの落として壊しちゃっても困るし」

外の棚に置いてある商品を眺めていると先ほどの女の子がお店から出て来ました、4人とも手には小さな紙袋を持っています。

「お待たせ、さ、どうぞ入って、魔女様のお弟子さん」

「あ、私の事知ってるんだ・・・」

「えぇ、回覧板であなたの似顔絵が回って来たからこの街の人達はみんな知ってるわよ」

「わぁ・・・」

「人目につく掲示板に貼り出すと他所から来た人にも知られちゃうからね、街の住民だけで共有したい情報は回覧板で回って来るの」

「そうなんだ・・・」

ガチャッ・・・

「綺麗・・・絵本に出て来る妖精さんがやってるみたいなお店だね」

「あら、ありがとう、お店の内装にはこだわってるのよ」

「あ、これかわいい、これもいいなぁ・・・最近ゆっくりお買い物できなかったから楽しい・・・」





「ふふっ、買っちゃったぁ」

「なぁレイア、そんなの買ってどうするんだ」

お店を出た私は片手で抱えられるくらいの大きさの紙袋を持っています、中にはぬいぐるみ、ペトラさんの手作りで、棚に飾ってあるのをじっと見ていたら少し値引きしてくれました。

「どうするって・・・可愛いからベッドの脇に置くの、抱いて眠るんだぁ」

「そのブサイクでキモい狼のぬいぐるみが可愛いのか?、レイアの可愛いの基準が私には分からん」

「そう?、まぁ人の好みはそれぞれだからね」

「・・・」

「・・・見つかるといいね、ペトラさんの息子さん」

あれから私達はお店で色々と話し、とても仲良くなりました。

ペトラさんは30年以上前に失踪した息子さんを今でも探していて、外国へ行く用事のある人に事情を話して似ている人を見たら教えて欲しいと頼んでいるようです。

「赤に近い茶色い髪に金色の瞳、左頬に焼印があるから髭を生やしている可能性が高い・・・名前はマルコー・ヨウジョスキー、偽名を使っているかもしれない・・・」

「伝言も頼まれたな「死ぬ前に一度でいいから顔を見たい、マキシマの街の雑貨屋ペトラに居るから会いに来て」・・・か」

「うん・・・ペトラさん可哀想だね」








シーマにようこそ、入国手続きをされる方は・・・

3番線の列車・・・次の停車駅・・・

「ふぅ、やっと着いたか、ミシェルの奴はどこ行った?」

「駅の入出国窓口に行ってるよ、あんたリーダーなのに書類手続き全然しないから」

「早くレイアみたいな便利な奴隷が欲しいよな、この街で代わりを見つけねぇと・・・」

「・・・戻ったよ、はいこれ許可証ね、これが兄ちゃんの・・・、これはキャリーので、こっちがアレクス」

「おっ、悪いなミシェル」

「ダメな兄を持つと妹が苦労するの・・・」

「なんだよ、言うようになったじゃねぇか!」

「シェムニ、駅で騒がないでよ、これからどうするの?」

「まずは腹が減ったから飯だな・・・」

俺の名前はシェムニ・ウマァー、ハンターをやってる、今は仲間と一緒にオースター帝国のシーマって街に来た、元はレオーネ王国の田舎街で活動してたんだが、ちょっとやらかしちまって今後1年間、活動拠点のギルドから街への出入り禁止処分を食らった、ムカつくぜ!。

俺達のパーティは前衛の俺、剣士だ、それから妹のミシェルは斥候、俺の恋人キャリー・チータァーは魔法使い、ミシェルの恋人アレクス・シマリスは後衛の弓師、弓と言っても特注のでかい弓を背負い前衛もいける筋肉モリモリマッチョマンだ。

「兄ちゃん、肉串売ってるよ、買ってー」

「ほらよ、金やるから人数分買って来い」

「わーい!」

とてとて・・・

「おい、シェムニ、あれ見ろよ」

突然アレクスが俺の肩を掴んで言った、そんなに強く掴むんじゃねぇ折れるだろうが!、そう思いつつ指差す方を見ると俺達が乗ってきた車両の後ろに連結されてる貴族専用車から人が降りていた。

「なん・・・だと・・・あれはレイアか?」

車両からは護衛らしい騎士が何人か先に降り、その次にやたらと凶悪そうな顔した身なりの良い男、ありゃ貴族だな・・・続いてその悪人顔の男にエスコートされて車両から降りた女は俺達がよく知ってる奴だった。

「何であの車両にレイアが乗ってるのよ!」

キャリーが後ろで騒いでるがそんなの俺が聞きてぇよ!。

「声かけてみるか・・・だがあの護衛や貴族が邪魔だな」

レイアが居なくなって俺達は正直困っていた、掃除洗濯料理、書類仕事に客との交渉、使い走り・・・何かと役に立つ奴だった、その後代わりの奴を入れたがはっきり言って役立たずの無能だったからボコボコに殴った後でクビにしてやった、またあいつをうちで働かせたい・・・。

「こっそり後を尾けてレイア一人になるのを待とうぜ」

アレクスの奴も俺と同意見のようだ、今までレイアに弓の手入れをさせてたから今更自分でするのは面倒だってこの前言ってたもんな・・・。

「賛成!」

キャリーも蹴ったり殴ったり、ストレス発散させる相手が居なくなって最近やたらと機嫌が悪い。

「兄ちゃん達どうしたの、肉串買って来た、え・・・あれって・・・レイア?」

「あぁ、何故か知らねぇが優雅に貴族用の車両に乗ってやがった」

「左手が吹き飛んで契約は無効になったって言ってたよね、もう私達とは関係ないの、早く食べよう・・・」

妹のミシェルは直接あいつをいじめては無かったが、俺達が殴ってるのを無表情で見てたし自分の服も洗濯させてた、それに特に仲良くしてた訳でも無い。

「もう一度契約で縛ってこき使ってやろうかと思ってな」

「ふーん・・・」

「ミシェル、それ食ったらあの連中の後を追え、お前なら見つからずにいけるだろ」

「でも・・・あの貴族っぽい人、なんか怖い」

「あぁ、悪そうなツラしてるよな、貴族相手に揉めるとまずいぜ、あまり深追いしない方がいいかもな」

「あんな良い服着て・・・腹立つなぁ・・・」





それから俺達はミシェルを先頭に、奴らの後を追った、だが護衛が周りに居てなかなか一人にならねぇ・・・そう思ってたら広場に到着して悪人顔の貴族が護衛と一緒に武器を扱う店に入った、レイアは一人で噴水横のベンチに座ってる、今がチャンスだ!。

「よぉ、レイア、高そうな服着て何してんだよ、左手の調子はどうだ?」

「ふふっ、レイア久しぶり、あなたが居なくなって困ってたのよねー、また一緒にお仕事しない?」

「洗濯物が溜まって困ってる・・・戻って来い」

「レイア、久しぶりだね・・・」

「・・・」

「・・・」

「何無視してんだよ!、また俺達が仲間に入れてやろうって言ってんだ、ありがたく思え!」

「・・・」

「おい、レイア!」

無視されて腹が立ったからレイアの肩を掴もうと一歩踏み込んだその時・・・。

「拘束・・・」

ぱぁっ!

レイアが何か呟いた直後、巨大な緑の魔法陣が俺達の目の前に・・・。

「何だこりゃ!」

俺とキャリー、アレクスは咄嗟に躱したが一番近くに居たミシェルの奴が魔法陣に捕まりやがった。

「やだ、兄ちゃん助けて」

「おいレイア、何しやがる!、早くミシェルを放せ、今ならぶん殴る程度で許してやるぜ!」

俺が叫ぶと、あの泣き虫でぽわぽわしたレイアとは別人のような冷たい目をして女が口を開いた。

「・・・黙れクソガキども」

「何を言って・・・」

「待てシェムニ、こいつレイアじゃない!、瞳の色が違う!」

「お前は・・・誰だ」

「ふふっ・・・さて誰でしょう?」

「ふざけるな!」

「私の名前はユリア・ルミナス、レオーネ王国上級貴族、ルミナスの長女で・・・お前達の知っているレイアのお姉ちゃんだ、妹が世話になったようだから・・・お礼をしないといけないね」

「姉って・・・でもレイアと同じ姿・・・」

「私は魔力量が多いから成長が遅くてね、レイアより4つ年上の19歳だ、皆からは双子みたいで可愛いとよく言われていた、だがお揃いじゃなくなった、どこかのクソ野郎が可愛いレイアちゃんの左手を吹き飛ばしてくれたおかげで・・・」

レイアの姉と名乗る女が出してる殺気が強くなった、それと同時に身体に巻き付いた緑の魔法陣が締まってミシェルが叫んだ。

「いゃぁ!、兄ちゃん痛い!、助けて」

「お礼は何がいいかなぁ・・・地べたに頭を擦り付けて謝るならレイアちゃんと同じ左手、それから慰謝料として右足一本くらいで許してあげるけど・・・(ニタァ)」

「この!」

俺が剣に手をかけた時、後ろからも殺気を感じて振り向くと・・・凶悪な顔をした貴族とその護衛が俺達の背後に立っていた・・・全然気配がしなかったぞ!。

「やべぇ!、散らばって逃げろ!、すまんミシェル、必ず助ける!」

捕まっているミシェル以外の3人が別方向に逃げた、衛兵を撒く時によく使う手だ。

「やだ・・・兄ちゃん置いてかないで!」

「お嬢・・・」

「しばらく泳がせましょう、リーダーの男はクロームとマクセルに追わせて、見つからないようにね」

「はい!」

「大丈夫だったかい、ユリアちゃん、一人で対応するって言うから心配したよ・・・」

「大丈夫だよアミー様、私強いからあんな奴らには負けないわ、知ってるでしょ」
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