現れた運命の番(Ω)がガチムチイケメンなのだが、私は一体どうすればいい!?

桃田産

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元カレ

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 いつもよりも気乗りしない状態でも、仕事はしなければならない。学生の頃が懐かしいと思いつつ、カタカタとキーボードを打ち続けた。


 「うー、んっ!」

 やっと仕事が終わり、背伸びをして立ち上がった。ずっと酒盛りがお預け状態だったから、今日こそは飲みたい。

「おい」

 ガバッと勢いよく立ち上がると、背後から声を掛けられた。仕事だったら許さないぞ、と思いつつ振り返ると、同僚の宇部芳喜うべ よしきが鞄を持ってこちらに来た。とりあえず、追加の仕事じゃなかったことに安堵する。

「何かあったのか?」
「何かって?」
「それを聞いてんじゃねぇか」
「あー、んー」

 私はどう返答したものか、困った。自分でもきちんと把握していないから、どう説明すればいいのか分からない。しかも、この部屋にはまだ他の人たちが働いている。プライベートなことをペラペラと明かす趣味はなかった。

「とりあえず、飲みに行こう」
「明日も仕事だぞ」
「分かってるけど、飲まなきゃやってられないのよ」

 そう言って、芳喜を連れ出した。相変わらず優しい奴なので、ため息を吐きながらもついてきてくれる。

 私たちはチェーン店の居酒屋の個室を陣取った。苦いお酒は嫌いなので、梅酒を頼む。芳喜は明日に響きたくないのか、ノンアルコールビールだ。

「で?」
「で?」
「なにがあったんだよ」

 何かあったことは確実らしい。まぁ、何かあったのだが。
 私ははぁ、とため息を吐き、テーブルにぐでんとなりながら、運命の番が現れたことを話した。

「はぁ?……詐欺?」
「それは私も疑ってるけど」

 大丈夫だと、手でピシっと制しながら伝えた。それなのに、芳喜の眉間には、ぎゅっと皺が付いたままだ。

「番になるのか?」
「うーん、本当だったら?」

 そう言いながらも、全く現実感なんてなかった。もし、フェロモンを感じ取れたなら、すぐにでも番になりたいと思ったのだろうか。フェロモンを感じられない私には分からない。現状の気持ちとしては、運命の相手に対する義務感と同情心しかなかった。

「そんなんで上手くいくのか?」
「そんな先のことを聞かれても、知らんよ」

 今はとりあえず、相手が本当に運命の相手なのか、病院で検査を受けるしかなかった。先の話は、それからだ。
 人に話していると、頭が整理されて気持ちが落ち着いてきた。運ばれてきた焼き鳥を、もぐもぐと食べる。だが、目の前の芳喜は機嫌が悪いままだ。なぜ、お前の機嫌が悪くなるんだ。

「なに?」
「あー……、お前がΩだったらよかったのに」
「殴るぞ」

 眉を顰めて睨むが、芳喜にダメージは与えられなかった。代わりに、じとっと陰気な目で見られる。

「そしたら、項を噛んで、番にしてたのに」
「……」

 部屋の中がしーんと静まり返る中、『はい、お待ちどう様!』と店員が明るい声で、タコ焼きを運んできた。美味いよね、タコ焼き。せっかくの熱々なのに、口の中を火傷させて食べている場合ではない。私は飲んでいた梅酒を、ゴトリと机の上に置いた。

「あんた、馬鹿でしょ」
「なんでだよ」
「私たち、もう終わってんじゃん」

 自分と芳喜を指で指し示す。
 これだから元カレは嫌なんだと思ってしまう。職場が同じじゃなかったら、絶対に連絡を取っていなかった。それなら、職場恋愛しなきゃよかったのにと言われるかもしれないが、気持ちなんて自分の思い通りに動かせるものではない。

「それは、俺が海外に行ったからだろ」

 芳喜はぐいっとノンアルコールビールを飲む。あんた、それじゃ酔えないぞ。と心の中で呟いた。

「えー、俺運命の番ってだけで、お前のこと取られんの嫌なんだけど。だって、お前Ωのフェロモン分かんねぇんだろ」
「そうだけど、そんなこと言っても仕方ないでしょーよ」

 元カレの言い分にうんざりし、タコ焼きを頬張った。少し冷めて、ちょうどいい熱さになっている。運命の番が現れたってだけで悩ましいのに、他にも悩む要素を持ってこないで欲しい。

「俺も会う」
「は?」
「お前の運命の相手に」
「えー」

 告白される前はついてきてもらった方がいいかもしれないと思っていたが、気持ちを知った今は、気まずくてしょうがない。いや、いいよ。と断るが、芳喜の意思は固かった。早朝からお前の家に行ってでも会うと言われ、睡眠を邪魔されたくない私は仕方なく頷いた。



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