漆黒の白魔族~最弱生徒の成り上がり~

sizuma

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一年生編 第一章 オルエイ入学

第五話 オルエイ受験 後編

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木刀と木刀の打ち合う音が周囲に響き渡る。



やつの勢いは止まる事がない。



俺は圧倒的に押されていた。



「クソッ、とっとと落ちろ!!」



相手が焦っているのがわかる。



俺も焦っている。



おそらく、決闘が始まってから1分近くがたった。



一撃でも受けたら負け。



相手は、反撃を受けないように、ひたすらに攻撃を仕掛けて来た。



俺は間一髪で受け続ける。



疲れた苦しいやめたい。でも負けられない。



息ができない、する暇もない。



不意に、相手は無詠唱の火魔法を撃ち放つ。



それは俺に対してではなく地面に対して真っ直ぐ突き進み、衝突すると、砂埃を巻き起こした。



視界が薄茶色になり、辺りを見回しても奴の姿はない。



目隠し? だが何故?



明らかに相手の方が押していた。



このままごり押されていれば明らかに俺の負けだった。



一度視界を錯乱して状況をリセットする意味がわからない。



俺は目が見えないので耳を澄ます。



音で相手のいる位置を大まかに読み取ろうとする。



「離れている???」



さっきまですぐそこにいたのに、何故か俺から距離を取っていた。



何がしたい?



俺は混乱した。



敵の意図が全く読めず、何をすればいいのかわからなくなった。



ひとまず、俺も後ろに下がろうとする。



次の瞬間、砂埃の中から大量の火魔法が飛んできた。



間一髪で気付き、とっさに屈んだ。頭上を数えきれない数の火玉が飛んでいく。



「危ねぇ!」



俺は屈んだまま横へ移動する。そして相手方向に向かって火魔法を撃ち返した。



感触はない。



そりゃそうだ。土煙でほとんど見えていないのだから、当てようにも難しすぎる。



数秒後、こちらに向かって再びやつは火玉を返す。



ひとまず避ける。



俺は悩んでいた。



ここからどうする?



砂埃が収まってきた。



うっすらと相手の輪郭が見えるようになって行く。



向こうが魔法を撃ってくるので、俺も撃ち返す。



しかし、完全に膠着状態だ。



お互いに魔法を撃ち合っても途中でぶつかり合って再び煙で相手が見えなくなる。



近づかなければ。



しかし近づけない。



遠距離魔法一撃喰らって即死だ。



色々考えていると、ふととある事に気付く。



俺は、いつの間にかびっくりするくらい冷静になっていた。



さっきまで焦りによって追い詰められて、ほとんど周りが見えていなかったのに。



魔法の軌道、相手の動き。



ゆっくり、ゆっくり、時が止まったかのように見える。



何が原因かはわからない。



きっと頭に登っていた血が降りてきたのだろう。



俺はとっさに木刀を水魔法で覆い、そして前から飛んでくる魔法を切った。



何をビビっていたんだろう。



冷静になる事によって、今までの自分がバカらしく思えてくる。



確かに相手は強い。前の試験を見ても、入学は確実だろうし、剣も魔法も俺なんかよりずっとできる。



でも確実に言える事がある。



エイリア先生や、半年前に命のやり取りをした男、親友のレオンの未来を奪ったあいつなんかよりは弱い!



あの時の方がよっぽど怖かった。恐ろしかった。



そう考えるとなんだか馬鹿らしくなってきた。



俺は、ヘソからまっすぐ木刀を構えた。



相手をよく見る。



どう動くのか。



どう攻撃してくるのか。



そして、魔法を打ち始めた瞬間、俺は思いっきり地面を蹴って前へ飛び出す。



絶対に負けられない。



決して油断はしない。



でも賭けに出る。



敵は、大量の火魔法を無造作に撃ちまくる。



相手のかざしている手の方向、風向き、距離感。



全てを感じ取って、火玉の来る方向を予想する。



全てを切り裂くのは無理だ。



俺は避けれる分は避け、そして無理な分を切った。



剣にまとわせた水で炎を相殺し、1球1球見極めて切り落とす。



失敗すれば負け。



でも距離を詰めるにはこれしか思いつかなかった。



数秒後、俺は相手の間合いまで入った。



敵は驚いたように目を見開いて棒立ちしている。まさかこんな戦い方をするとは思わなかったのだろう。



俺は全身を振り絞って、渾身の一撃を脳天からぶつける。



「決まれ!」



空気ごと相手を切り裂くように、持てる力をすべて使い、己の全力をぶつけた。



だが、カンッ、と大きな音が鳴り響く。



それは木刀と木刀がぶつかった音であり、俺の全力が相手に届いていなかったことを意味していた。



俺が本気で切りかかったように、向こうも本気で防御したのだ。



クソッ、届かなかったッ



俺は唇を嚙み締める。



完全な実力差を感じた。



どう考えても決めれるシチュエーション。



防がれたのは、俺の剣撃が甘かったからだ。



修行がたりない。



才能が足りない。



己の未熟さを改めて実感した。



でも、だからなんだ。



一度駄目なら何度でもやる!



俺はすぐに切り替えて、上がだめなら左下から一撃を打ち込んだ。



相手が体勢を崩しているうちに、油断が残っているうちに、、、



防がれた。



なら次は右から。



それも防がれる。



しかしまだ立て直せていない。



だから隙を与えずに何度でも攻撃していった。



3撃目、4撃目、5撃目、



6発剣を交わしたのち、7発目で俺の木刀は相手の脇腹を捉えた。



ドンッと確かな衝撃が腕に響く。



当たったのだ。



俺の攻撃が相手に通じた。



「そこまで。」



そこで、試験管から号令がかかる。



「勝者、1405番。」



俺は、つい気が緩んでその場に座り込んでしまった。



決して安心していい結果ではない。



試験はダメダメだったし、今の戦闘も時間がかかりすぎだ。



でも、何故は俺は満足感でいっぱいだった。
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