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パン屋のマリ

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王都の商店街には色んな店が立ち並んでる
その中に夫婦でやっている小さなパン屋さんがある。
名前は「マリベーカリー」
看板娘のマリが生まれた時に開業したからマリベーカリー
夫婦に愛されて、商店街のみんなにも愛されて育ったマリ
サラサラの薄黄色の髪に長い睫毛
色素の薄い瞳とピンクの頬と唇。
マリが笑えば周りのみんなも笑う。


俺が恋焦がれてるマリ


「はぁー。マリ好きすぎる」
窓からこっそり中を眺める俺の名前はバシュ。マリとは同じ商店街で育った幼なじみだ。
俺は商店街の中にある魚屋の息子

小さいときからずっと好きな相手だ。
ずっと見てきた・・・

そんなこと考えてたからマリが外に出てきてると気付かなかった。
「バシュ?何してるの?」
「わっ!!マリ!こ、これ。父さんがお前のところに持ってけって」
ずいっとマリの目の前にバケツを差し出す。
「わぁ!沢山のお魚!!いつもありがとう!」
ふわりと笑うマリに俺の心臓が跳ねる
今日も可愛い


「バシュ?学校に行かないの?」
「い、行く!」
「バシュ・・・勉強道具も持たないでどうやって行くわけ?」
「あ。」
「もう。待っててあげるからとってきなさいよ!」
「ごめん!すぐ行くから商店街の入り口で待ってて!!」

慌てて家まで戻る。
俺とマリが行ってる王立学校は、平民が通う学校で、下は7歳から上は18歳までの大きな学校で、俺たちは今17歳。 
来年には卒業して、俺は卒業後は家の仕事を手伝う。
優秀な生徒は王宮勤めも出来るらしい。

国王様が教育熱心な方で平民こそ学問を修められるようにとその年頃の王民の子どもは全員無料で入れる。
なんともありがたい制度だ。
昼は給食も出るから貧しい家庭の子どもも、学校に行けば1日に1度は必ず腹が満たせる。

ちなみに貴族様の子どもが通う王立学園もあるが、そちらは2年間だけらしい。
貴族様方は金がかけられるからそれまでは家に先生が来るんだとか。
俺たち平民には関係ないけど。


「マリ!お待たせ!」
「いいわよ!行きましょ!」
商店街から学校は近い。
入り口から学校までは徒歩15分程だ。

俺は幼なじみだからマリと一緒に学校へ行ってる7歳の頃から。
羨ましいと言われて優越感に浸れるし、少しでもマリといられるのは素直に嬉しい。
嬉しいけど、幼なじみから抜け出せない。
もし、告白なんてして断られたらとか考えたらゾッとする。


「ねぇ!バシュ?聞いてるの?」
「えっ!あ。ごめん」
「もう!最近ちょっと変じゃない?」
「いや、本当ごめん、何?」
「あのね!私の友達のリザいるでしょ?」
「あぁ、リザの親父さんは漁師だよな?」
うちに魚卸に来る親父さん。
時々リザも手伝ってるから知ってる。
「そうそう!そのリザ!」

ニコニコと嬉しそうに話すマリに胸が高鳴る。
「そのリザがね!あのお堅いマルコと付き合ってるのよ!!」
「えっ!マルコ?マジかよ。」
マルコとは俺と同じクラスのやつ。
すごい真面目で成績優秀。
あまり喋らないが、嫌な奴ではない、と思う。

ちなみにマリとリザは隣のクラスだ。
「あの、マルコが・・・」
「ね!驚いたでしょ?」
なんか、すごくショックだ。
あのマルコですら恋人が居るのに。

そんな話をしていたら教室についてしまった。
「あ。バシュ!」
「どうした?」
教室に前で別れて部屋に入ろうとしたらマリに声をかけられた
「今日一緒に帰ろ! テスト勉強見てあげる!」
「お、おう!」
帰ってからも、まだマリと一緒にいられる。
そう思うだけで嬉しくて口元が緩む。
好きだ。マリ。
その言葉が身体中を駆け巡る。
でも、言えない。
壊したくない。この関係を。



あっという間に帰りの時間になった。
マリに参考書を借りる為に図書室へ行くから待っててと言われてマリの教室で待つ。

あ。トイレに行きたい。
入れ違いにならないようにノートの端っこを千切って
『トイレ行ってくるから待ってて』と書いて念の為教科書の入った鞄も置いた。



ふう。スッキリ
ハンカチとか持ってないからパタパタと手を振りながら教室に戻る。
あれ?帰ってきてない。
流石に遅いだろうと図書室の方へ向かう。
図書室に入って本棚の間を探す。
「マリーどこだー?」
小声で呼びかけてるが返事がない。



「俺、マリの事好きなんだよね。付き合ってよ。」
・・・え。
ドキッとした。
身体中の毛穴から汗が噴き出る感覚がする。
マリに告白してる奴がいる
声のする方をチラリと覗くとマリは顔を赤くしてる。
告白してる奴は、最近よくマリに絡んでる奴だ!

マリ、なんて言うんだろ。

「ごめんなさい。」
ホッ・・・
「私には好きな人が居るんです。」

え・・・
マリに好きな人。
ショックすぎて後ずさったら本棚にぶつかってバサバサと本が落ちてきた。
音にびっくりしたのか2人がこちらを見る

「!!バシュ!!」
「は、はは。ごめん。俺、お前がなかなか来なくて。 ごめん!!」
「バシュ!!」
誰だよ!!誰だよ!!マリの好きな奴って!!!!
俺いつも一緒にいたのに全然きづかなかった。
「・・・情けなすぎ。」
おれ、明日からマリと学校行かない。
視界が歪む
「っ!!う。うぅぅ・・・」
泣く男なんて情けない。
でも、俺はずっと誰よりマリが好きなのに。


家に帰ると母さんが店の手伝いしろってキレてる
「うるさいな!俺は今感傷に浸ってんだからほっといてよ!」
バタバタと2階の自分の部屋に入ってベッドに倒れ込む。

あ。鞄忘れた
・・・良いや。どうでも、それよりこれから顔合わすの嫌だな。


母さんのうるさい声が聞こえる
「バシュー!マリが来てるよー!!」
一階から叫ぶ母さん。

「はぁ!?いないって言えよ!!」
部屋から叫んで掛け布団を被る。
今マリにどんな顔して会えって言うんだよ。
そんな事考えてたら部屋が開いた。


バフッ
「痛っ!」
なんか投げられた。
ガバッと布団から出たら鞄が乗ってた。
「鞄。」
「バカバシュ!!」
前を見たら涙目のマリ

「マ、マリ。」
「なんで先に帰るのよ!」
「だ、だって」
あんなとこ見て平気でいられるかよ
「あんた!私が告白されてんのよ!」
「知ってるよ!」
「だったら、間に入ってきなさいよ!!」
「なんで!?」
そう言ったらマリがボロボロ泣き始めた。
なんで恋人でもない俺が、俺だって言いたいよ!!
てか、泣きたいのは俺だよ!

「バシュは・・・。っ私が好きなんじゃないの?!」
真っ赤な顔して泣きながらこっちを見てくるマリ
こんな時なのに可愛いって思う自分に苦笑いしてしまう。
でもマリの言葉に驚いた
「は、はぁ!!!」
「ぅ~・・・好きって言いなさいよ!!言ってよぉ。」
俺の胸をバシバシ叩くマリ
え。もしかして。
顔が熱くなる
え、え?いやいやいやいやいやいや。
で、でもこれってそうだよな?

「マ、マリ。お前。・・・俺が好きなの?」
ピタッと手が叩くのをやめた。
下を向いてるマリの顔はわからないけど耳が赤い、、
ヤバ・・・可愛い
キュンと胸が切なくなる。

「マリ。」
「・・・きよ。」
「え?」
よく聞こえなかった。

バッと赤い顔のマリがこっちを見て叫ぶ
「好きよ!!大好きよ!だから止めて欲しかったの!!」
もういい!と帰ろうとするマリの手を反射的に掴んだ。
背中から抱きしめる。
「バ」
「俺も好き」
マリをこちらに向かせる
「俺もマリが好き。ずっと前から、マリしか見てない」
ドキドキと心臓が飛び出しそうになる。
マリを掴んでる手も脈打ってるみたいに震えてる気がする。

「バシュ。」
「マリ、俺と付き合って欲しい。」
出来たら結婚だってしたい。

俺がそう言ったらポスっと俺の胸に頭を引っ付けてくるマリ
「うん、うん。付き合う。好き」
そう言うマリをぎゅーっと抱きしめる。

「ずっとマリしか見ないから」
「バシュ・・・」


「あのー・・・」
バッと声のする方に2人で顔を向ける
「あんた達まだ付き合ってなかったのね!」
「マリ!うちのバシュを頼むぜ!」
うちの両親が覗いてた。

「父さん!母さん!あっち行って!!!」
近くにあったクッション投げたら下の階に逃げていった。
下では「息子に恋人が出来たセール」とか言って魚の安売りの声が聞こえる。

「あの、バカ両親・・・」
すっかり空気がいつも通りになっちゃったじゃないか。
「ふふふ!私おじさんとおばさん大好き!」
「そうか?俺はマリのおじさんとおばさんの方が仲良くて好きだけどな」
うちの家は母さんが父さん尻に敷いてるし。
「どっちの親も仲良しだから、私達もきっと仲良しな夫婦になれるわね」
「あぁ。・・・え?」
マリの方を見た

チュッ

「幸せにしてよね。」
ギュッと抱きしめられる
「マ・マ・・・マリ」
顔熱い
絶対心臓の音聞かれてる
それを誤魔化す為に叫んだ
「絶対!絶対幸せにする!!!」

きっと俺、尻に敷かれるんだろうなぁ。って思った。
まぁ、マリにならいいか。
そう納得してからマリに口付ける。
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