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3:王様の苦悩とそれから
しおりを挟む「・・・サリアナ、引き離さないでとは一体どういう事だい?」
静かになった部屋にダミアンの優しい声が響く
「私は、7年前に長男ダリルを出産いたしました
。 産後から、30日は共に過ごす事が出来、母としての母性が目覚め可愛い我が子の成長を見届ける喜びを感じていたのに、あの子は・・・将来の王となる為に、乳母と帝王教育のため教育係に取り上げられてしまいました」
溢れる涙も構う事なく言うサリアナにダミアンは眉を下げる
「サリアナそれは」
「会いたくとも、許された時間しか会えぬのです。」
パラパラと涙がこぼれシーツに染みていく
「ダリルは幼いながらも国を背負うべくして生まれて来たような子だと思っております。ダミアン様と私の聡い子です。ですが、母と子の絆を深める事が出来ませんでした。」
「それはこれからでも遅くないではないか、まだ幼い子なのだ」
「その幼い頃から帝王学を学ぶ為に日夜勉学に励む忙しい子と、どのように絆を育むのですか? ダミアン様は毎日長く接しておられますが、女人である私は政治に関わることすらありません。」
サリアナの言葉に、ダミアンは少し同情の色を見せる
サリアナは自分の手に添えられていたダミアンの手をギュッと握り返す
「どうか、ダミアン様・・・殿下。次男であるセシルは私の元で育てさせてくださいまし。ダリルのように引き離さないでくださいましっ!!!」
そう言われてダミアンは床に視線を落とす
「・・・王様に頼んでみよう・・・」
そう言って席を立った
「ダミアン様」
「産後間もない時にこのように感情を昂ぶらせては良くない。 セシルの件は王様に頼まなければいけない案件だ。 血を分けた兄弟と言えども大人になれば政敵になる可能性もある。王族とはそういうものなのだ。だからこそ教育係をつけ自分の立場、在るべき行動を学ばせる。君の母としての気持ちもわかるが王族に嫁いできた者、そして生まれたものとして避けられぬ事もある。もしも君の元で育てるお許しが出たとしても育児をサポートする乳母や教育係は私が選んだ者を付ける」
「もちろんですわ。ありがとうございます。」
そう言ってダミアンはサリアナの部屋を後にした
コンコン
王の執務室の扉が軽快な音を奏でる
「王様、王太子様がお越しです」
王様付きの側仕えがそう声をかけてくる
「ダミアンか、通せ」
書類から目を離す事なく側仕えへ声をかけると側仕えはペコリと頭を下げた。
「はい、お通しせよ」
側仕えがそう言うと執務室の扉が開きダミアンが中に入ってきて仕事中の王様へ一礼する
「王様」
「なんだもう良いのか?お前には頼みたい事が山のように在るのだ、2児の父になった事だしどんどん私の代わりに働いてもらうぞ?」
王様はニヤリと悪戯な顔をしてダミアンを見ると、悩んだような表情をして立っているダミアンがそこにいた。
「ダミアンどうした?」
「王様・・・実は」
ダミアンは王様が離席した後の事を話した
その話を聞き王様は考え込む素振りを見せる
「私の一存で王太子妃に勝手な事を言う事が出来ず王様にお伺いをたてようと」
「ふむ、確かにお前の言う事は正しい。」
そう言われてダミアンは身体の緊張をほぐす
「じつはな、お前達の母である王妃もデニスの頃に同じ事を言ったのだ」
「母上が」
「そうだ、その時私もお前と同じ事を言ったが、お前と違い私は私の一存で王妃の願いを叶えなかった」
「そうだったのですか」
「ああ、私はお前と違い側室もいるだろう?」
「はい」
『側室も王様のお子を身籠り産み、どれだけ身分の低い女人であっても、生まれてきた子は高貴な身分となり、手伝いの乳母を側仕えに置けば我が子と共に居られるのに、私は・・・私は何故この腕に気軽に子を抱く事が出来ぬのですか!!』
「そう言って泣く我が子の母を蔑ろにしてデニスも取り上げた。側室はそんな悲しみに暮れる王妃に見せつけるように子を抱いて王妃に会いに来る。病んだお前達の母はそのまま産後の肥立ちが良くなることなくこの世を去っていったのだ。」
「母上にそんな事があったのですか・・・」
「そうだ、それから私は正妻を置かず、側室の子もお前の実の弟にも自分の立場を弁えるようにお前と争えぬように教育係を付けたのだ。」
「異母兄弟達が歳頃になるとその母と共に城から出たのはその為だったのですね。」
「そうだ、できる限りお前に政敵を作らせぬ為だ。デニスは同じ母から生まれた事とあやつは王座に元々興味がない女人好き、元々お前の補佐にする為に教育してきたのだ。」
「デニス・・・確かにデニスには助けられる事が多いです」
「血を分けた兄弟だからこそできる事だろう」
「そう、ですね。」
「お前の妻に、お前達の母のようになって欲しくない。この悲しみは私だけで良い。」
「父上・・・」
「次男を王太子妃の元で育てさせよ。彼女も貴族の出なのだ、必ずダリルを助ける素晴らしい子に育てるだろう」
「・・・承知いたしました。」
ダミアンは王様へ一礼すると執務室から出ていった
18年後-
城の中を一人の青年がある一室を目指してズンズンと歩いている
その後ろをハラハラした様子で慌ててついて行く側仕えの男と腰に剣を差し無表情で前を歩く青年に付いていく大柄の青年
まるで早歩きのように大股で前のめりに進んでいく青年に側仕えは声を掛ける
「ダリル殿下、そのように歩を進めず、王族らしく威厳のある振る舞いをっ!」
「うるさいぞマルコ、こんな時にそんな事構ってられると思うか?父上に急ぎお尋ねせねばならん事があるんだ」
側仕えのマルコが話し終わる前にダリルは被せて話すとマルコは顔を青くしながらまた進言する
「し、しかし恐れながら殿下、王様は殿下を思ってあのような」
「マルコ!」
「は、はい!!」
ピタリと歩くのを止めて先程まで前のめりに歩いていた身体をグルンと回転させてダリルは青い顔のマルコを見る
「あのように騙し討ちのような事をした父上にお話を伺うだけだ。文句を言わず静かに着いて来い」
「は、はひ・・・」
マルコはタジタジになりながら返事をする
それを大柄の青年は顔色ひとつ変えずに見ているだけだった
ダリルはまたくるりと身体の向きを変えてズンズンと進んでいく
「・・・ジャン、お前もダリル殿下をお止めしなさい」
「いや・・・あんな風に怒っておいでのダリル様をお止めできるのなんて誰もおりませんよ。普段穏やかなお方なんですから」
「たしかに・・・」
側仕えのマルコと護衛騎士のジャンは小さくなっていくダリルの背中を見ながら話した
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