恋と愛を知ったのは、陰謀だらけの王宮でした。

みるく

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4:王太子ダリル

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コンコン-



「王様、ダリル王太子様がおいでです」
「うむ、通せ」
「はい」
静かな王様の執務室の扉がガチャリと開く


「失礼します」
ダリルは部屋にずんずんと入ると山のような上奏文に目を通している王様を見つめた

「おお、ダリル。美しい花たちとの茶会の最中じゃないのか?」
王様はダリルに目を合わせることなく声をかける

「父上、本日は普段国の為に尽力している高位官貴族を労う為の花見を城の庭園で行う行事でお間違えなかったでしょうか?」
据わった目で王様をジトリと見るダリルの視線に気付いていないのか知らないふりをしているのか、王様は嬉しそうな顔をした
「ん?わしは【普段国の為に尽力している高位貴族の未婚の娘たちを我が長男が庭園でもてなす行事】と言った気がするんだが」
はて?と自慢のあご髭を触りながら斜め上を見上げる
そんな王様を見て、肩を振るわせるダリル

「父上!何度言いますが私はまだ婚姻を結ぶつもりはありません!」
語気を強めて王と王太子ではなく父と子の表情で話す
そんな子どもの我儘のような言葉に父ダミアンは王としての威厳を出す
「ダリル・・・その言葉は、お前は王太子としての責を全うせぬと言うことか?」
ジロッと王としての威厳のある目でダリルを見るとダリルは身体を身震いさせる
「・・・いえ、ですが。帝王学をまだまだ勉強中の私のような未熟な者が妻を娶るなど早いと思うのです」
そう言ってダリルは手をぎゅっと強く握る
妻をもち未来の王を作ることも王太子としての仕事
そして、王の仕事だと言うことは充分理解している
だが城の中での政治や市井の勉強、自らの身を守る為の勉強。
社交界での立ち回りの勉強
ずっと勉学に励み、まだ実践は殆どした事がない
そんな人間が自分以外を守り愛することができる自信がまだない


そんな気持ちを汲み取ったかのように王様はダリルの顔をみて「はぁ、」と一息吐く
「ダリルよ・・・そなたの思っている事を全て理解しているわけではないが、私も王太子だった身。お前が感じている重圧は痛いほどわかる」
「父上・・・」
「だが、お前はこの国の王太子だ。私がお前の頃にはお前の母である王妃と結婚をしてお前も生まれておった。それに、私の時と違いお前とセシルは序列を決めずに婚姻させている。現に18歳のセシルには妊婦の妻がいるだろう?」
確かにそうだ
弟のセシルは15歳の年に、母サリアナの強い希望で家柄も良く古くから王族を支える名門家系のご令嬢だったティファ嬢を妻に迎え、現在セシルは18歳、ティファ妃が17歳で懐妊してもう間もなく第一子が生まれてくる

「では・・・セシルを次の王に」
「それはならん!!」
投げやりに言った言葉に王様の瞳は怒りに満ち言葉にも怒りが込められていた。
普段温厚でいきなりこんな風に怒ることなど政治の場でしか見た事がない王様の姿にダリルは背筋を伸ばした
父の顔と王としての顔が見え隠れする

「そなたは生まれながらにして将来の王として育って来たのだ。王族として生まれてまもなく母と引き離して育てたのだ。それは王太子が未来の王となる為だ。王族として生まれた者・王族に嫁いだ者は誰であろうと守らねばならぬ・・・この王権が途絶えぬ為に。」
ビリビリと体に電気が走るような声に圧倒されるダリルだが
王族として、王太子としてと言う言葉に更に背筋を正す

「セシルは・・・あいつは次男として、お前を支える事だけを教えて来たのだ。今更帝王学を学んだとしてもあいつは王になる器などない。あのように奔放で国民の声を聞かず、好きなことだけ参加するような者が王になれば貧困にあえぐ民が増えるだけだ」
王様の目はいつの間にか悲しいような、憂いを帯びた風になりダリルの肩に手を置いた

「ダリルよ。王として王太子であるそなたへの気持ちがわかったか?」
「はい。私が間違えておりました」
王としての眼光を近くで見て緊張で硬くなるダリルに先程までと違い王様は柔らかく微笑む
「いや、何も間違えてはおらん。1人の人間としてお前の言うことは間違いではない」
「いえ、私は王太子です。1人の人間である前に王太子であらねば・・・今からでも茶会に戻りたいと思っております。」
キリッとした目力を父に見せるが、王様はふぅ。と小さくため息をつく
「ダリルよ・・・そなたはまだまだ若い。まだ難しいかも知れぬが、私はお前に結婚と子孫を残すという国のための仕事と同時に愛し愛され、愛おしい妻との子を授かってもらいたいと思っておる。この気持ちは王である前に父である私の本当の気持ちだ。」
「父上・・・」

王様はダリルの肩にポンと手を置くと父の顔になり微笑む
「この茶会で生涯を共にする相手を見つけろと言うわけではない。 しかし、今までのように女人と関わらずに過ごすのではなく色んな女人と会話をし関わる事で見えてくる物もある。今日はその1歩だと思いなさい。」
「はい。」
「今日の茶会に招待した者全て高位官僚の娘やその親族にしたのにも訳がある。」
「それは一体どのような・・・」
ダリルは王様の深い考えを聞き逃さぬようにと王様の目をしっかりと捉えた
「彼らはこの国を支えて来た者達の親族だ。ゆえにこの国で1番質の良い教育を受けて来ておる。 品行方正であるがゆえ、お前のように侍女以外と深く関わった事がない者でも会話が合うであろう。」
「・・・なるほど。」

ダリルの身の回りの世話をする侍女は公爵または侯爵の妻や親族であり、子を産み育てた経験のあるいわば母や祖母くらいの年齢の女性で固められている
万が一にも間違いがないようにとの配慮でもあるが、それゆえに若い女人と接する機会がほとんどなかった。
もちろん社交界や国王主催のパーティーでは婚約者探しを兼ねたダンスや話す機会もあるが、ダリルはどれも王太子としての仕事としてこなしていた為にピンとくる女性を探せずにいた。
そろそろ婚約者を見つけるべきだと周りの貴族からの声があったものの、ダリルのその様子は
「もしや王太子様は女人ではなく男性を好むのでは?」などとあらぬ噂まで立てられた

そしてその噂を耳にした王様が今回の茶会を開いたのだ


と貴族達に認識させるために。


「ダリルよ、この茶会で婚約者を見つけなくとも良い。だが、いつまでもこの状況でいる事は許さぬ」
「肝に銘じて、ひとまずこの茶会で令嬢達をもてなしたいと思います。」
そう言ってダリルは部屋を出た
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