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5:庭園の花たち
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ダリルは廊下ですれ違った侍女に声をかけた後、庭園まで駆け足で行き、軽く上がった息を整え令嬢達の前に出た
令嬢達は小さく黄色い声をあげ色めき立った
「令嬢方、いきなり席を外してしまいすまなかった。」
ダリルはそう言ってスマートに頭を下げる
すると後ろから三名の侍女が手に可愛らしい包みの入った籠を持って立った
「お詫びになるかわからないが、王室のパティシエが作る新作の茶菓子をお土産に持って帰って欲しい。」
ダリルがそう言うと令嬢達は嬉しそうな声をあげる
「まぁ、あの王妃様が自ら審査して合格できた者だけがなれるパティシエの茶菓子を?」
「今頂いているお菓子やお紅茶を家で待つ母に食べさせてあげたいと思っておりましたのよ。」
そんな声があちこちから聞こえてくる
ダリルは安心したように肩の力を抜いていると1人の令嬢がダリルの前に来てカーテシーを行い、小鳥のように可愛らしい声で話し出した
「ファミル公爵の娘アンヌ・ファミルと申します、殿下」
ファミル公爵といえば、ダリルの弟セシルの妻ティファ妃の家門であるランド公爵家と一、二を争うと言われる名門中の名門家系であり、古くから王族を支えてきた臣下の中の臣下である
「アンヌ嬢、いかがした?」
「殿下は王太子としてのご公務がご多忙であらせられますと聞きましたが、私たちの為にこのような素晴らしい茶会を開いてくださり感謝を述べたく、一同の代表といたしまして私がご挨拶させていただきました」
そう言って頭を下げると周りの令嬢も美しい礼をする
まさか父王に欺されて開催された茶会だと言うわけにもいかず、ダリルは作り笑いを浮かべた
「そう畏まらなくても良い。私もこのような場をもっと早く設けていたらよかったと思っている。近い年齢での茶会だ。令嬢方同士の親交を深めつつ今後は私とも仲良くしてくれ」
「「「ありがたきお言葉、感謝いたします」」」
令嬢たちは深々と頭を下げた
音楽隊のクラシカルな演奏を聴きながらしばし令嬢達との歓談を楽しんでいるダリルを高い場所から眺める人がいた
「ふむ・・・ダリルはなかなか女性の扱いが上手そうだ」
蓄えた髭を撫でながら、執務室からダリルと令嬢達を眺める父王
側近ギャリはにこりと微笑み、
「それはようございました。そろそろ近隣国との外交に王太子様を参加させてはと進言する予定だったのです。」
近隣国の外交には大体政略結婚がついてくる
最近では年頃の姫君を共に連れて外交を行う国もあり、そのまま婚姻を決める事もよくある
「そうだな・・・だが、わしは国内の娘と婚姻を結ばせたいと思っておる。ギャリはそれについてどう思う?」
セシルより後ろ盾の強い娘を・・・
王はそう言いそうになったがグッと言葉を飲み込む
「ではファミル公爵のご息女のアンヌ嬢はいかがでしょう?」
長く王の隣で支えてきた側近だからか飲み込んだ言葉を見透かしたような返答が返ってきた。
「そうだな・・・ファミル家の息女が無理であれば、他の娘でも良いだろう。ダリルが好いた者との婚姻を進めてやりたいという気持ちもあるが、ダリルが王となった時に少しでも心配事を減らしてやりたい。 もしこの国で見つからなければ他国・・・それも強大な力を持つ国でも良いかもしれない・・・」
そう言った後、ダリルと周りで笑い合う令嬢に合わせていた視線をグッとあげて空を見上げた
「わしは先王の決めた娘との結婚でも満足しておったが、それゆえに問題も色々あった」
「王様?・・・長く王様のお側に仕えさせていただいておりますが、王妃様と何かありましたか?」
「いや、昔の事だ。」
そう言って影のある笑みを浮かべた王様にギャリは小さく違和感を持った
「気に入らぬっ!!!」
バチンッと音を立てて扇子を広げるのはこの国の王妃
「サリアナ様どうなさいましたか??」
窓から外を眺めていたと思うといきなり大きな声で怒り出した王妃にマーヤは驚きながら質問する
「王様は何故ダリルにはあのようなお茶会を設けたのだ?!セシルにはあのような事なさらなかったと言うのに!!」
よほど腹が立つのかパタパタと音を立てて扇子で仰ぐとマーヤは目を丸くした
「セシル殿下はサリアナ様がお選びになったティファ様が居られるからではありませんか?」
「私が選ぶ前にはあのようなお茶会の話などなかったではないか!?」
「きっとセシル殿下がお若かったからだと思います。」
マーヤは慣れた様子でサリアナをなだめながらサリアナのお気に入りのお茶を入れる
「それにセシル殿下はダリル殿下よりも女性の扱いに慣れていらっしゃるので、ダリル殿下とは違いすぐに素晴らしいお妃を迎えられるとお考えだったのではないでしょうか? 今まさにサリアナ様が厳選してお選びになられた素晴らしいお妃のティファ様が居られますし」
そう言われてサリアナは悪い気はしないといった顔になり席に座りマーヤが入れた紅茶を飲む
「まぁ、そうね。 ダリルもセシルも私の子で、セシルは私によく似て社交的。対するダリルは王太子として教育されてきたこともあり社交的ではあるが、女性との関わりはほぼなく過ごして来たツケが回って来たのだろう。」
サリアナはフンと鼻を鳴らし、甘い紅茶に口をつけた
「ダリル殿下も良い年頃です、今まで婚約者を探さずにいましたが、王様もやはり王太子としての仕事として伴侶を真剣に探し始めたのでしょう。サリアナ様と王様に似て素晴らしく文武両道の王子様です。王様もお妃はやはりティファ様同様この国を支えて来た臣下の娘であるファミル公爵家のアンヌ様をお選びになるのではないでしょうか?!」
そう言ってマーヤはキラキラとした羨望の眼差しを窓の外に向ける。
「ファミル公爵・・・」
「えぇ、そうです!今まで長い間ファミル公爵家は男系一家でしたが、数十年ぶりのご息女であるアンヌ嬢が居られます。 長年臣下として仕えてきたファミル公爵家もとうとう王族と外戚になると言う事でしょうね! ランド公爵家だけでなく外国との貿易にも強いファミル公爵家も外戚となれば今よりもより強固な国となるでしょう!」
嬉しそうにウキウキと話すマーヤにバレないように冷めた視線を向ける。
「ファミル公爵家が外戚なんて・・・ダリルに公爵家がつけばセシルが王になれる隙がなくなるではないか・・・」
ボソリと呟いた声はマーヤに聞こえることはなかった。
令嬢達は小さく黄色い声をあげ色めき立った
「令嬢方、いきなり席を外してしまいすまなかった。」
ダリルはそう言ってスマートに頭を下げる
すると後ろから三名の侍女が手に可愛らしい包みの入った籠を持って立った
「お詫びになるかわからないが、王室のパティシエが作る新作の茶菓子をお土産に持って帰って欲しい。」
ダリルがそう言うと令嬢達は嬉しそうな声をあげる
「まぁ、あの王妃様が自ら審査して合格できた者だけがなれるパティシエの茶菓子を?」
「今頂いているお菓子やお紅茶を家で待つ母に食べさせてあげたいと思っておりましたのよ。」
そんな声があちこちから聞こえてくる
ダリルは安心したように肩の力を抜いていると1人の令嬢がダリルの前に来てカーテシーを行い、小鳥のように可愛らしい声で話し出した
「ファミル公爵の娘アンヌ・ファミルと申します、殿下」
ファミル公爵といえば、ダリルの弟セシルの妻ティファ妃の家門であるランド公爵家と一、二を争うと言われる名門中の名門家系であり、古くから王族を支えてきた臣下の中の臣下である
「アンヌ嬢、いかがした?」
「殿下は王太子としてのご公務がご多忙であらせられますと聞きましたが、私たちの為にこのような素晴らしい茶会を開いてくださり感謝を述べたく、一同の代表といたしまして私がご挨拶させていただきました」
そう言って頭を下げると周りの令嬢も美しい礼をする
まさか父王に欺されて開催された茶会だと言うわけにもいかず、ダリルは作り笑いを浮かべた
「そう畏まらなくても良い。私もこのような場をもっと早く設けていたらよかったと思っている。近い年齢での茶会だ。令嬢方同士の親交を深めつつ今後は私とも仲良くしてくれ」
「「「ありがたきお言葉、感謝いたします」」」
令嬢たちは深々と頭を下げた
音楽隊のクラシカルな演奏を聴きながらしばし令嬢達との歓談を楽しんでいるダリルを高い場所から眺める人がいた
「ふむ・・・ダリルはなかなか女性の扱いが上手そうだ」
蓄えた髭を撫でながら、執務室からダリルと令嬢達を眺める父王
側近ギャリはにこりと微笑み、
「それはようございました。そろそろ近隣国との外交に王太子様を参加させてはと進言する予定だったのです。」
近隣国の外交には大体政略結婚がついてくる
最近では年頃の姫君を共に連れて外交を行う国もあり、そのまま婚姻を決める事もよくある
「そうだな・・・だが、わしは国内の娘と婚姻を結ばせたいと思っておる。ギャリはそれについてどう思う?」
セシルより後ろ盾の強い娘を・・・
王はそう言いそうになったがグッと言葉を飲み込む
「ではファミル公爵のご息女のアンヌ嬢はいかがでしょう?」
長く王の隣で支えてきた側近だからか飲み込んだ言葉を見透かしたような返答が返ってきた。
「そうだな・・・ファミル家の息女が無理であれば、他の娘でも良いだろう。ダリルが好いた者との婚姻を進めてやりたいという気持ちもあるが、ダリルが王となった時に少しでも心配事を減らしてやりたい。 もしこの国で見つからなければ他国・・・それも強大な力を持つ国でも良いかもしれない・・・」
そう言った後、ダリルと周りで笑い合う令嬢に合わせていた視線をグッとあげて空を見上げた
「わしは先王の決めた娘との結婚でも満足しておったが、それゆえに問題も色々あった」
「王様?・・・長く王様のお側に仕えさせていただいておりますが、王妃様と何かありましたか?」
「いや、昔の事だ。」
そう言って影のある笑みを浮かべた王様にギャリは小さく違和感を持った
「気に入らぬっ!!!」
バチンッと音を立てて扇子を広げるのはこの国の王妃
「サリアナ様どうなさいましたか??」
窓から外を眺めていたと思うといきなり大きな声で怒り出した王妃にマーヤは驚きながら質問する
「王様は何故ダリルにはあのようなお茶会を設けたのだ?!セシルにはあのような事なさらなかったと言うのに!!」
よほど腹が立つのかパタパタと音を立てて扇子で仰ぐとマーヤは目を丸くした
「セシル殿下はサリアナ様がお選びになったティファ様が居られるからではありませんか?」
「私が選ぶ前にはあのようなお茶会の話などなかったではないか!?」
「きっとセシル殿下がお若かったからだと思います。」
マーヤは慣れた様子でサリアナをなだめながらサリアナのお気に入りのお茶を入れる
「それにセシル殿下はダリル殿下よりも女性の扱いに慣れていらっしゃるので、ダリル殿下とは違いすぐに素晴らしいお妃を迎えられるとお考えだったのではないでしょうか? 今まさにサリアナ様が厳選してお選びになられた素晴らしいお妃のティファ様が居られますし」
そう言われてサリアナは悪い気はしないといった顔になり席に座りマーヤが入れた紅茶を飲む
「まぁ、そうね。 ダリルもセシルも私の子で、セシルは私によく似て社交的。対するダリルは王太子として教育されてきたこともあり社交的ではあるが、女性との関わりはほぼなく過ごして来たツケが回って来たのだろう。」
サリアナはフンと鼻を鳴らし、甘い紅茶に口をつけた
「ダリル殿下も良い年頃です、今まで婚約者を探さずにいましたが、王様もやはり王太子としての仕事として伴侶を真剣に探し始めたのでしょう。サリアナ様と王様に似て素晴らしく文武両道の王子様です。王様もお妃はやはりティファ様同様この国を支えて来た臣下の娘であるファミル公爵家のアンヌ様をお選びになるのではないでしょうか?!」
そう言ってマーヤはキラキラとした羨望の眼差しを窓の外に向ける。
「ファミル公爵・・・」
「えぇ、そうです!今まで長い間ファミル公爵家は男系一家でしたが、数十年ぶりのご息女であるアンヌ嬢が居られます。 長年臣下として仕えてきたファミル公爵家もとうとう王族と外戚になると言う事でしょうね! ランド公爵家だけでなく外国との貿易にも強いファミル公爵家も外戚となれば今よりもより強固な国となるでしょう!」
嬉しそうにウキウキと話すマーヤにバレないように冷めた視線を向ける。
「ファミル公爵家が外戚なんて・・・ダリルに公爵家がつけばセシルが王になれる隙がなくなるではないか・・・」
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