恋と愛を知ったのは、陰謀だらけの王宮でした。

みるく

文字の大きさ
11 / 24

11:噂と捜索

しおりを挟む


「王太子様。お話中申し訳ありません」
「なんだ?」
珍しくジャンが声をかけてくる

「最近、市井にあらゆる国の翻訳ができる者がいるとという噂を耳にしたのです。」
ジャンは表情一つ変えずただの世間話を話し出す
いきなり何を言い出すのかと、少し苛立ち、
それを悟られないようにダリルは話を聞く
「・・・それが今、何か関係が?」
ジャンはきっとダリルの苛立ちに気付いているだろうが、それをまるで何でもないように答える

「盗まれた本は誰も読めないと言われる本でしたよね?」
少ないが的確な言葉をダリルに投げるジャンは余計な説明はしない男だ
ダリルの方を真っ直ぐ見つめる

その目を見てダリルはハッと気づく
「・・・その盗まれた本を翻訳に?」
「おそらくですが・・・」

それを隣で聞いていたハリスが不信感のある顔で話に入ってくる
「殿下、お話を遮ってしまい申し訳ありません。」
「よい、どうした?」
「はい、私もその話を耳にした事がありますが、その者は全ての本を翻訳をしてくれるわけではない事と、気まぐれにどこかの本屋でやってくれるだけで、普段は普通の民として暮らしていると聞きました。」
ハリスは自分の知っている限りの事を話すと、それを聞いたダリルはハリスに尋ねる

「ハリス伯爵はこの話を知っていたのに、その翻訳師の事を探したりしなかったのか?」
「恐れながら申し上げます、もちろん探しましたが、伯爵という爵位はありますが私は伯爵の中でも末端です。私程度の力では捜索に力及ばず・・・仕事の合間に市井へ足を運び探すのがやっとでございまして・・・」
「そうか・・・ハリス伯爵は司書長ゆえ忙しいからな」
なるほど、と納得したダリルはハリスを見ると、ハリスは慌てたように頭を下げる
「いいえ、私の力量不足で・・・」
「ハリス伯爵、謙遜も度が過ぎれば失礼というものだぞ」
ダリルはハリスの肩をぽんぽんと叩くと頭を上げるよう促す

「殿下・・・ありがとうございます」
ハリスはダリルが自分の事を認めてくれていると感じ嬉しそうに礼を言った



ダリルはそんなハリスを一度見てその後全員に目を向け話し出す
「私の考えを話す。現在王宮内を捜索・調査をしていて、正直先が見えないと感じた・・・それゆえ一度市井へ行って、その翻訳師を探してみようと思うのだが、皆はどう思う?」
そう言って自分の考えを伝えるダリルの目はしっかりと全員に視線を合わせていく


ダリルの言葉を聞きカート伯爵が声をあげる
「殿下、その真意は一体?」

「うむ。市井の翻訳師が本当に存在している者なのかも不明ではあるが、あの本を盗んだ者がその翻訳師を探して市井に現れる可能性もあるし、既に見つけて本を預けている可能性もある。」

「なるほど、その本を見つければ盗難品も返ってくる。それに、取りに来た犯人を捕まえることも可能と・・・」
「そうだ。 そして、その翻訳師が本当にあの本を翻訳出来るのなら・・・」
ダリルはちらりとハリスを見ると、ハリスは嬉しそうに目を見開き興奮気味に話す
「誰も知る事が出来ないと思っていた本の内容を知る事が出来る・・・!」
ハリスのそんな姿にフッと笑みが溢れたダリルは頷く
「あぁ。どうだ?ここで頭を突き合わせて悩むくらいなら市井へ行くというのは?」

ハリスはそのダリルの問いにスッと手をあげる
「殿下、私ハリスは殿下の考えに賛同いたします。ぜひ私も行かせてください。」
「もちろんだ。」
そう言うとダリルはカート伯爵の方を見る

「私は警備部隊長としての任務と引き続き他の部隊との話し合いもございます。殿下の護衛はそちらのジャン殿とその部下達がなさるでしょうから、私はここで本来の職務に戻らせていただきます」
カートは頭を下げると姿勢を戻しダリルを見る
「そうだな。 カート伯爵、もし犯人が見つかったら必ず捕縛しておいてくれ。」
「承知しました。」
そう言ってカート伯爵は図書室を出て行った

それを見た後ダリルはハリスに声をかける
「ハリス伯爵、準備が出来次第ここに迎えを寄越すから共に馬車で行こう」
そう言うと
ハリスは頭を下げる
「はい。 では殿下、私も準備を整えてまいりますので御前失礼いたします」

そう言うと司書長室へと下がっていった。


ダリルは次にマルコとジャンに声をかける
「さ、我々も支度をしようか。」
その言葉にマルコは少し心配そうに声をかける
「王太子様、何も自ら市井へ出向かずとも私たちに命令してくだされば」
「マルコ・・・心配なのはわかる。だがこれは王様からの命でもあるのだ。 幸い今日は急ぎの仕事もない。」
な?と懇願にも甘えにも見える瞳でマルコに訴えかける

隣で見ていたジャンが「あ、これはマルコ負ける」と思った位マルコはダリルのこの顔に弱い

「うぅ・・・ダリル様・・・危険なことには絶対に首を突っ込まないでくださいませ」
彼らだけの時に特別に名前で呼び合う
お互いの信頼の証であり、幼い頃からの友人として声をかけている

それがわかりダリルも満足そうに笑う。
「勿論だ。お前達が居てくれるのだからな」

マルコはそんなダリルに肩の力を抜き笑いかける。
「はい。そうですね。 ではジャン。お前はダリル様の護衛騎士を整えてきなさい。ダリル様は私と共にお支度を。」

マルコはジャンにそう声をかけると、ジャンは頭を下げ図書室を出ていく。

ダリルとマルコもその後、王太子専用のクローゼット部屋へ移動した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない

ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。 公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。 旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。 そんな私は旦那様に感謝しています。 無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。 そんな二人の日常を書いてみました。 お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m 無事完結しました!

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

私の夫は妹の元婚約者

彼方
恋愛
私の夫ミラーは、かつて妹マリッサの婚約者だった。 そんなミラーとの日々は穏やかで、幸せなもののはずだった。 けれどマリッサは、どこか意味ありげな態度で私に言葉を投げかけてくる。 「ミラーさんには、もっと活発な女性の方が合うんじゃない?」 挑発ともとれるその言動に、心がざわつく。けれど私も負けていられない。 最近、彼女が婚約者以外の男性と一緒にいたことをそっと伝えると、マリッサは少しだけ表情を揺らした。 それでもお互い、最後には笑顔を見せ合った。 まるで何もなかったかのように。

口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く

ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。 逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。 「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」 誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。 「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」 だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。 妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。 ご都合主義満載です!

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

『嫌われ令嬢ですが、最終的に溺愛される予定です』

由香
恋愛
貴族令嬢エマは、自分が周囲から嫌われていると信じて疑わなかった。 婚約者である侯爵令息レオンからも距離を取られ、冷たい視線を向けられている――そう思っていたのに。 ある日、思いがけず聞いてしまった彼の本音。 「君を嫌ったことなど、一度もない」 それは誤解とすれ違いが重なっただけの、両片思いだった。 勘違いから始まる、甘くて優しい溺愛恋物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...