恋と愛を知ったのは、陰謀だらけの王宮でした。

みるく

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11:噂と捜索

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「王太子様。お話中申し訳ありません」
「なんだ?」
珍しくジャンが声をかけてくる

「最近、市井にあらゆる国の翻訳ができる者がいるとという噂を耳にしたのです。」
ジャンは表情一つ変えずただの世間話を話し出す
いきなり何を言い出すのかと、少し苛立ち、
それを悟られないようにダリルは話を聞く
「・・・それが今、何か関係が?」
ジャンはきっとダリルの苛立ちに気付いているだろうが、それをまるで何でもないように答える

「盗まれた本は誰も読めないと言われる本でしたよね?」
少ないが的確な言葉をダリルに投げるジャンは余計な説明はしない男だ
ダリルの方を真っ直ぐ見つめる

その目を見てダリルはハッと気づく
「・・・その盗まれた本を翻訳に?」
「おそらくですが・・・」

それを隣で聞いていたハリスが不信感のある顔で話に入ってくる
「殿下、お話を遮ってしまい申し訳ありません。」
「よい、どうした?」
「はい、私もその話を耳にした事がありますが、その者は全ての本を翻訳をしてくれるわけではない事と、気まぐれにどこかの本屋でやってくれるだけで、普段は普通の民として暮らしていると聞きました。」
ハリスは自分の知っている限りの事を話すと、それを聞いたダリルはハリスに尋ねる

「ハリス伯爵はこの話を知っていたのに、その翻訳師の事を探したりしなかったのか?」
「恐れながら申し上げます、もちろん探しましたが、伯爵という爵位はありますが私は伯爵の中でも末端です。私程度の力では捜索に力及ばず・・・仕事の合間に市井へ足を運び探すのがやっとでございまして・・・」
「そうか・・・ハリス伯爵は司書長ゆえ忙しいからな」
なるほど、と納得したダリルはハリスを見ると、ハリスは慌てたように頭を下げる
「いいえ、私の力量不足で・・・」
「ハリス伯爵、謙遜も度が過ぎれば失礼というものだぞ」
ダリルはハリスの肩をぽんぽんと叩くと頭を上げるよう促す

「殿下・・・ありがとうございます」
ハリスはダリルが自分の事を認めてくれていると感じ嬉しそうに礼を言った



ダリルはそんなハリスを一度見てその後全員に目を向け話し出す
「私の考えを話す。現在王宮内を捜索・調査をしていて、正直先が見えないと感じた・・・それゆえ一度市井へ行って、その翻訳師を探してみようと思うのだが、皆はどう思う?」
そう言って自分の考えを伝えるダリルの目はしっかりと全員に視線を合わせていく


ダリルの言葉を聞きカート伯爵が声をあげる
「殿下、その真意は一体?」

「うむ。市井の翻訳師が本当に存在している者なのかも不明ではあるが、あの本を盗んだ者がその翻訳師を探して市井に現れる可能性もあるし、既に見つけて本を預けている可能性もある。」

「なるほど、その本を見つければ盗難品も返ってくる。それに、取りに来た犯人を捕まえることも可能と・・・」
「そうだ。 そして、その翻訳師が本当にあの本を翻訳出来るのなら・・・」
ダリルはちらりとハリスを見ると、ハリスは嬉しそうに目を見開き興奮気味に話す
「誰も知る事が出来ないと思っていた本の内容を知る事が出来る・・・!」
ハリスのそんな姿にフッと笑みが溢れたダリルは頷く
「あぁ。どうだ?ここで頭を突き合わせて悩むくらいなら市井へ行くというのは?」

ハリスはそのダリルの問いにスッと手をあげる
「殿下、私ハリスは殿下の考えに賛同いたします。ぜひ私も行かせてください。」
「もちろんだ。」
そう言うとダリルはカート伯爵の方を見る

「私は警備部隊長としての任務と引き続き他の部隊との話し合いもございます。殿下の護衛はそちらのジャン殿とその部下達がなさるでしょうから、私はここで本来の職務に戻らせていただきます」
カートは頭を下げると姿勢を戻しダリルを見る
「そうだな。 カート伯爵、もし犯人が見つかったら必ず捕縛しておいてくれ。」
「承知しました。」
そう言ってカート伯爵は図書室を出て行った

それを見た後ダリルはハリスに声をかける
「ハリス伯爵、準備が出来次第ここに迎えを寄越すから共に馬車で行こう」
そう言うと
ハリスは頭を下げる
「はい。 では殿下、私も準備を整えてまいりますので御前失礼いたします」

そう言うと司書長室へと下がっていった。


ダリルは次にマルコとジャンに声をかける
「さ、我々も支度をしようか。」
その言葉にマルコは少し心配そうに声をかける
「王太子様、何も自ら市井へ出向かずとも私たちに命令してくだされば」
「マルコ・・・心配なのはわかる。だがこれは王様からの命でもあるのだ。 幸い今日は急ぎの仕事もない。」
な?と懇願にも甘えにも見える瞳でマルコに訴えかける

隣で見ていたジャンが「あ、これはマルコ負ける」と思った位マルコはダリルのこの顔に弱い

「うぅ・・・ダリル様・・・危険なことには絶対に首を突っ込まないでくださいませ」
彼らだけの時に特別に名前で呼び合う
お互いの信頼の証であり、幼い頃からの友人として声をかけている

それがわかりダリルも満足そうに笑う。
「勿論だ。お前達が居てくれるのだからな」

マルコはそんなダリルに肩の力を抜き笑いかける。
「はい。そうですね。 ではジャン。お前はダリル様の護衛騎士を整えてきなさい。ダリル様は私と共にお支度を。」

マルコはジャンにそう声をかけると、ジャンは頭を下げ図書室を出ていく。

ダリルとマルコもその後、王太子専用のクローゼット部屋へ移動した。
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