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13:セラとの再会
しおりを挟む「スミス・・・伯爵様?」
彼女は前に来た時と同じ服装に身を包み、驚いた表情でこちらを見てきた
そして花が咲いたように微笑んで話しかけてきた。
「わぁー!またお会いしましたね!」
「あ・・・あぁ。」
屈託なく笑うセラにどう接して良いのかわからず愛想のない声を出してしまった
思わず口元に手を添えた
若い令嬢と話してもこんなにも笑顔で話す令嬢はいない
皆所作まで全て躾けられ王太子と令嬢の距離を保つ
だからこそ、今まで関わったことのない少女の態度に面食らってしまった
そんなこちらの想いを全くわかっていない彼女は私の愛想のない返事など気にすることなく話を続ける
「本日は何をお求めですか?ここの店主はちょっと出てこられないんで、私がお伺いします!」
「?・・・店主に何かあったのか?」
正直もう目的の人物に出会えたから、店主が出てこなくても良くなったのだが、目の前の彼女への先程の態度を改めたいと思い店主の様子を聞いてみる
すると、セラは少し苦笑いをしながら話し出した
「あ・・・あはは。実は、2ヶ月後にある夜市に出す品物を高い所から取ろうとして、落ちて腰を痛めたらしくて。」
ぽりぽりと頬を掻きながら話すセラ。
そんな仕草も令嬢はしないので、ついセラの所作に目が入ってしまう
だがしかし、聞きなれない言葉を聞いてそれが気になってしまった。
「夜市?」
「スミス伯爵様はご存知じゃないですか?この辺りにお住まいの貴族様は知ってる物だと思っていました!」
そう言われて少し慌ててしまう。
なにしろこの辺りにお住まいどころかこの国の王城に住んでいるのだ。
だが、そんな事を言うわけにもいかない。
「私は・・・普段田舎の領地にいてな。この度、王太子殿下に呼ばれて王都へ来ることになったのだ。・・・な?マルコ」
「さ、左様でございますダリル様」
咄嗟についた嘘をまるで本当にするようにマルコに同意させる。
セラは私とマルコをジーッと見て納得したように笑う。
「なるほど!そうなんですね。 だから前回見ない顔の伯爵様だなと思っていたんです。」
「あはは!・・・そうだろう。私も初めて来た場所だからか物珍しくてな。」
「そうですよね! 私の事は気にせずごゆっくり見てまわってください!」
セラは頭を下げてみよう見まねなのかカーテシーのような素振りを見せる。
その時
「おーい、セラァ助けてくれー」
奥の部屋から店主の情けない声が聞こえてきた
「はーい! では、伯爵様。何かありましたら先程のように呼んでください」
そう言って部屋の中に入ってしまった。
「あ、セラ・・・」
名前を呼ぶも虚しくその声はセラに届かなかった。
「ダリル様、どうなさいます?もう一度呼びますか?」
マルコが声をかけてくる。
「ああ、だが店主が助けてと言っていただろう? むしろ男である我々が助けてやるべきでは?」
そう言葉にしたと同時くらいに中からセラの小さな悲鳴が聞こえ、許可を取らず部屋の中に入る。
後ろから「ダリル様、いけません!」と聞こえてきたが、身体が思わず動いてしまった。
「セラ!大丈夫か?」
バタバタと声がした方へ進む。
後ろからマルコが申し訳なさそうな顔でついてきて、店主とセラがいるであろう場所に声をはりあげる。
「失礼します!」
扉をバンッと開けると、そこには店主を担ごうとして床に崩れているセラと、その上で「すまない、すまない」と声をかける店主の姿があった。
「いやぁ、伯爵様のような高貴なお方にお助けしていただけるなんざありがたい事です。 ちょっと物を取りたくて手を伸ばしたらベッドから落ちてしまって。」
「スミス伯爵様、ありがとうございます!おかげでおじさんに潰されずに済みました!」
頭を掻いてベッドに横たわる店主と深々と頭を下げるセラを見て、何事もなくて良かったと思ったダリルはホッと息を吐く
「いや、気にしなくて良い。セラも怪我がなくて良かった」
そう言っている横でマルコがセラに声をかける
「セラさん、貴女一人で成人男性を持ち上げるなんて到底難しいんですから、出来れば男手を頼りなさい」
心配から来る言葉だがしゅんと頭を下げているセラ
その細く小さな身体を更に小さくして反省する姿に心が痛む
ダリルはついマルコに口を挟む
「マルコ、まだ幼いセラにそのように言ってやるな。 店主を助けてやりたい一心でした事だ」
そうダリルが言うとセラと店主は口をポカンと開いてダリルを見ている
何か悪いことでも言ったのか?そんな風に感じたダリルは首を傾げる
その時セラが話し出した
「伯爵様・・・?私、すでに成人しています」
「・・・・・・え?」
ダリルは間抜けな声を発する
小さな室内がシーンとなる
そして、1人の吹き出す声で室内がドッと明るい笑い声に包まれた
「ブフーッ!!!ダリル様ッ!!え?って・・・ブッ」
「マルコお前ッ!!お前も少女って言ってたじゃないか!!」
ダリルは気恥ずかしさからマルコの頭をガシガシと手で掴み髪をぐしゃぐしゃに乱す
マルコは「やめてください!」と言いながらもまだ笑いを引きずっている
店主もセラもその笑いにつられてこっそり笑っている
こんなほのぼのとした雰囲気に、ダリルはこんな出来事が自分にも来るなんて、と目的を忘れそうになったが、セラの思い出したような声に現実へ引き戻される
「あ、そうそうおじさん。さっき何取ろうとしてたの?」
セラが店主にそう尋ねると店主も思い出したように「そうだそうだ。」とベッドから少し離れた場所にある棚を指差す
「あの棚の上の本が取りたかったんだ。セラの父さんに翻訳してもらいたくてな。」
セラはその本を手に取る
「2冊あるけど両方?」
店主に向かってひらひらと見せる
「ああ、頼まれものでな。 なんでも他国のとあるお方の大切な物らしいんだが、昔の言葉で読めないとかなんとか」
そう言う店主の言葉に、ダリルとマルコは顔を見合わせる
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