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14:見つかった本、セラ書房
しおりを挟む「店主!!その本を見せてくれ!!」
ダリルはセラの持つ本を指差す
店主は少し驚いた顔をするが、セラにダリルに渡すよう促すとセラはダリルの手にその本を預ける
「マルコ・・・どうだ?」
ダリルとマルコはパラパラと本を開いて確認する
「私ではわかりかねます。ハリス伯爵を呼んで参りますのでお待ちください」
ダリルにだけ聞こえるように小さな声で言うとマルコは部屋を出ていく
セラと店主はマルコを目で追っているが、ダリルは店主に話しかける
「店主、この本はどんな人物が持ってきた?」
「この本ですか? 黒いフードを深く被ってたんで顔はよく見えなかったですが・・・この辺では見かけない感じでしたね」
うーんと考えながら言う店主を見て、嘘はついていなさそうに見えるな。とダリルは考えていた
「その人物は他に何か言ってなかったか?」
「いやぁ・・・近いうちに取りに来るから翻訳師を探して翻訳してもらっといてくれと・・・報酬がなかなか弾んでもらえたんで・・・特に何も聞かずに受けてしまいました。」
店主は嬉しそうに、親指と人差し指で丸のマークを作って嬉しそうに話したあと、貴族にこんな話をするべきではないと感じたのかどんどんと声が小さくなる
その姿を見て、店主がどうして声が小さくなったのかわかったダリルは少し笑みを浮かべる
「別にそれについて責を問うたりしない。安心してくれ」
その言葉に店主はわかりやすくホッとする
隣で見ていたセラも店主に「おじさん良かったね」などと声をかけていた。
そしてダリルは先ほど店主の言ってた言葉に疑問が浮かぶ
「セラの父に翻訳を頼むと言ってなかったか?」
その言葉にセラはなんでもない風に大きな瞳でダリルを見る
「はい、私の父は翻訳師なんです」
その言葉にダリルだけが驚く
「なんだって?・・・噂の翻訳師はセラの父?」
書房での聞き込みどころか、翻訳師の血縁者が見つかった。
こんなにあっという間に目的が達成出来て正直ダリルは拍子抜けしていた
「噂?・・・とかはわからないですけど、本当に時々父の気まぐれで翻訳をしてるんです。」
そう話してセラはダリルの方に寄っていき小さな声で話す
「でもこの話秘密にしてくださいね。 父があっちこっちから翻訳が殺到したら困るからと、時々やってるだけなんで」
そっと顔の前で手を合わせながらそう言うセラにダリルは「わかった」と頭を縦に振った
その言葉にセラはホッとした顔をする
その時、店の方からバタバタと走ってくる音が聞こえる
「殿・・・ダリル様!!」
美しい銀髪を乱し、普段走り慣れてないだろうハリスは息を切らしながら部屋に入ってきた
「ハリス伯爵。やっと来たか」
この中で本の表紙も全て知っているのはハリスのみ
ダリルは手にしていた本をハリスに渡すとハリスはゆっくりその表紙を撫でた
その動作をダリルとマルコは固唾を呑んで見る
ハリスの表情はどんどん穏やかになっていく
「・・・この本です!」
大切そうに両手で抱きしめるハリスにダリルやマルコ、そして従者達が喜びの声を上げる
その姿に呆気に取られる2人に気がついたダリルはこの本についての経緯を軽く話す。
「この本はとある所から盗まれたものでな。私達は王太子様からの命を受け捜索していたのだ。」
王太子からの勅命という話を聞き店主は少し疑った顔をしていたが、そんな時のためにとダリルは勅命書を用意していた
ダリルは懐から勅命書を取り出すと、店主に渡す
店主は両手で受け取りじっくりと隅々まで確認した
「この上質な紙、そして印・・・間違いなく王室御用達の・・・えええ!と・盗品だったんですかっ!!あ、いてて」
店主は驚き身体を大きく揺らし、痛む腰をさする
それを見ていたマルコが店主の腰をさする
「ああ、ゆえにこの本はこちらで回収させてもらう。 後ほど王宮から犯人捕縛のため人がくる。しばらく落ち着かないだろうがどうか協力してほしい」
「も、もちろんでございます!!」
店主は興奮気味に返事をする
ダリルはその様子を見てからセラの両手を優しく握る
「セラ・・・君の父君に会わせてくれ」
端正な顔立ちに美しい琥珀色の瞳で真っ直ぐみられたセラは頬が熱くなる
こんな風に手を握られたことがなくて手が汗ばんできた気がする
「は、はい」
セラは気恥ずかしくて目をそらしてしまい、その言葉を発するのがやっとだった
「ここです。」
「・・・ここが、セラ書房」
王宮から捕縛部隊の為に来た者達が来たタイミングで店主の事を任せセラ・ダリル・ハリス・マルコはセラ書房まで来た
古書の匂いに包まれた店内は、太陽光で本が傷まないように陽当たりが悪く少し薄暗い
しかし掃除は丁寧に行き届いていて清潔にされている
広くない店内に人がいる雰囲気はなく、セラが奥の部屋に向かって声をかける
「お父さーん!お客様だよー!!」
しばらく経っても返事はなく、セラは靴を脱ぎ部屋に入ろうとしている
「皆様はこちらでお待ちくださいね」
そう声をかけて入っていく
「セラが戻るまで少し店の中を見て回るか」
独り言のように口から出た言葉にハリスとマルコも本棚をキョロキョロと見回す
ハリスはたくさんの古書を興味深そうに見ながら時折手に取り中をパラパラとめくる
「素晴らしい・・・王宮にもない本が・・・」
ぶつぶつと何やら呟きながら話しているのをみて、本当に本が好きなのだなと感心するダリルは次にマルコを見る
マルコが手に持っているのは猫の絵集
「そういえばマルコは猫好きなのに猫アレルギーだったか・・・」などと思いながらダリルも目の前の本棚に視線を向ける
たくさんの異国の言葉が並ぶ
知っている文字もあるが、初めて見る文字がたくさんある
世界はこんなにもたくさんの言葉があるのか。とダリルは思った
「お待たせしました。」
セラの声が聞こえてそちらに身体ごと向ける
「すみません。父が母を病院へ連れて行っているようで・・・」
暗い顔で言うセラにダリルは心配そうに声をかける
「先日も母君の具合が良くないと言っていたな?」
「・・・はい。」
「心配だろう。病院へ行くか?私が送ろう」
ダリルがそう言うと、セラは顔の前に両手を出し横に振る
「いえ、大丈夫です!きっと夜までには戻ると思うので! それよりせっかく足を運んでいただいたのに申し訳ありません」
そう言って申し訳なさそうに頭を下げる
「気にしなくて良い、ここに翻訳師がいるとわかったんだから、また来れば良いだけだ」
そう言うと隣からマルコがダリルに声をかける
「ですがダリル様、しばらくは王・・・お仕事がありますから来られませんよ。」
マルコは王宮、と言いそうになった寸前のところでうまく言い換える
「まぁ、難しければハリス伯爵に頼むとしよう。」
そう言いつつ店外の方を向き、今日中に内容がわかれば良かったと惜しむ気持ちから、手に持っていた本をめくる
そのダリルとマルコの間からそぉっとセラが後ろから覗き込む。
うーんと唸っている二人を見て、セラは少し首を傾げた。
そして、遠慮がちに口を開く。
「あの・・・これ、私・・・読めますよ?」
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