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18:セラの気持ち
しおりを挟む「あの・・・私・・・そんな特別試験なんて」
セラは勢いよく立ち上がり、自信なさげにまた座った
それを見たダリルはセラに微笑みかける
「この特別試験は、王太子様がセラの優秀さを見込んで、王様に直々に願い出たのだ。出来ればその王太子様の気持ちも汲み取ってほしい」
ダリルはセラにそう言うとセラは小さな声で「王太子様が・・・」と呟いた
「でも・・・でも・・・」
そう言うセラに、マートはセラの手を握る
「恐れながら伯爵様、それを聞いてしまってはセラが・・・」
震えるセラにダリルは驚く
「す、すまない・・・脅しているとかではないのだ。」
大抵の貴族は王太子立っての願いと言えば喜ぶからと、平民であるセラにも同じように言ったダリルは後悔した
平民と貴族というのは、感じ方がこんなにも違うのだ・・・
その驚きと、自身の平民への無理解に悔しくてたまらなかった
その時、ハリスがダリルの肩に手を置く
ダリルがハリスを見ると、ニコリと微笑みを浮かべている
「セラ嬢、そんなに気負うことはないのです。」
その言葉にセラの震えは止まり、ハリスの方を見る
「王宮と言うところは確かに貴族に囲まれた場所で、貴方にとっては怖いところかもしれません。ですが、試験を受けて合格した後に配属される場所は図書室。
「私は図書室室長です。私の部下として配属される貴女への嫌がらせは私が断じて許しません。」
ハリスの目は真っ直ぐにセラを見る。
「ハリス伯爵様・・・でも、私なんかが・・・」
小さな声でハリスの名を呼ぶセラの瞳は気持ちが揺らいでいるように見える。
「私なんかが・・・なんて、謙遜も度が過ぎれば失礼というものですよ。・・・まぁ、これは王太子に私が言われた言葉なんですがね。」
そう言ってハリスは笑う。
「セラは、貴族は爵位関係なくみんな偉いと思っているでしょうが、貴族にも偉い者と平民と大差ない者がいるのです。私は伯爵という爵位はありますが実際は伯爵位の中でも末端です。そんな私にも王太子様は話しかけてくださる、爵位ではなく能力で人を見る方なのです。
そんな方がセラ嬢が良いと仰るのだから、どうか私なんて・・・は言わないでください。」
「ね、スミス伯爵。」とハリスはダリルの方を見る。
ダリルはハリスの言葉に頬を赤くし、
セラは胸が熱くなる。
家族以外に、私をこんなにも必要としてくれる人がいる。
そう感じると気持ちが昂り鼻の奥がツンとしてくる。
その時、頬を少し赤くしたダリルが咳払いする。
「ゴホン・・・あー、セラ。王太子様はハリス伯爵が言った通りだ。それに、セラに何かあれば私が必ず守る」
琥珀色の瞳に真っ直ぐ見られてセラは目が離せなくなり、ドクンと胸が跳ねる
「わ・・・私」
セラは絞り出すように声を出した。その時
「「おねーちゃーーん」」
閉めていた扉がバンッと開き、
顔のよく似た少年と少女が入ってくる。
「ノア!リア!」
幼い二人は勢いよくセラにしがみつくと、騒ぎ出した。
その姿を見てマートが話しかける。
「お前たち、母さんの病院に先に行くって言ってたのに帰ってきたのか?」
その言葉に二人は目を潤ませてマートの方を向く。
「父さんがなかなか来ないから戻ってきたんだ。」
少年が話し出すと、次は少女が話す。
「そしたら、お店番に知らないお兄さん達がいて、お・・・お店、乗っ取られたのかと思って!」
ポロポロと涙が頬を伝う。
その姿を見たセラは二人をギュッと抱きしめる
「違うわよ。落ち着いて二人とも。」
そうして少し落ち着いたところで二人はダリルとハリスの存在に気付いた
「お姉ちゃん、この貴族様たちは・・・?」
少年が恐る恐る聞くと、セラは二人をダリルたちに紹介する。
「ハリス伯爵様、スミス伯爵様。この子達は私の弟と妹でノアとリア、双子でまだ8歳です。 ノア、リア、こちらはハリス伯爵様とスミス伯爵様。お二人は私に王宮勤めのお誘いをしてくださっているのよ。」
セラは二人に分かるように簡単に説明する
ダリルとハリスも幼い二人を見る
少年ノアはセラを少し生意気にしたような雰囲気を纏っており、リアと呼ばれた少女はノアの後ろに隠れこっそりとダリルとハリスを覗いている
リアもセラと顔がよく似ており、まさしく二人はセラの弟妹だ
「ノア・リア。よろしく頼む」
ダリルは幼い子と接したことがなく、少し固い挨拶だが、ハリスは柔らかく微笑み子どもの目線に合わせて挨拶をする
「ノア君、リア嬢。仲良くしてください」
そう言ってハリスは両手を二人に出すと二人はハリスの手をギュッと握る
「「うん。ハリス様よろしくお願いします。」」
あっという間にハリスに懐く二人と、その姿を見て少しショックを受けるダリル
その姿に笑ってはいけないのに思わずセラは噴き出してしまった
「ふふ・・・ぁ、すみません」
慌てて両手で口を押さえるセラ
そんなセラを見てハリスが独り言のように話しだす
「まだ幼い子たちがいると、やはり食費も嵩むでしょう・・・病で倒れた母君の病院代も必要ですし・・・」
その言葉を聞いてセラとマートは顔が少し暗くなる
チラリとその顔を確認してハリスは続ける
「セラ嬢が王宮勤めとなれば、少なくとも今よりも暮らしぶりはよくなるでしょうね・・・」
そう言われてセラはハリスを見る。
そしてダリルの方を見ると、ダリルはセラの顔を見て頷く。
「私から王太子様に進言しよう」
そう言われてセラの心は揺れる。
マートはセラの肩に手を乗せると、セラに声をかける。
「セラ・・・、家の為と思わなくていい。お前のやりたいようにしなさい。」
マートの言葉にセラの揺らいでいた心はどんどん固まる。
そして双子の頬を優しく撫でると、ダリルの方を見て話しだす。
「スミス伯爵、その・・・もし合格したら、ここから通うことは出来ますか?」
ダリルは質問が想定外で一瞬戸惑った。
「通う・・・?王宮に住めるのだぞ?」
「それはそうなのですが・・・弟や妹と離れるのも寂しいですし、父や病気の母も気になりますので・・・」
ダリルは腕を組み考え込むが、ハリスから助言される。
「良いのではありませんか?王宮勤めの侍女でも自宅から通う者も多いですし、そう言う者達専用の馬車もあります。」
「そうなのか?」
「はい、現に私もそれを利用しておりますので」
ハリスからのその言葉に、ダリルは腕を解きセラに笑顔を向ける。
「だそうだセラ。通いで大丈夫だ。だから、試験を受けてくれ」
ダリルの言葉に嬉しそうに微笑むセラは両手を胸に当てると、大きな声で宣言する。
「私、特別試験受けます!!」
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