18 / 44
18:セラの気持ち
しおりを挟む「あの・・・私・・・そんな特別試験なんて」
セラは勢いよく立ち上がり、自信なさげにまた座った
それを見たダリルはセラに微笑みかける
「この特別試験は、王太子様がセラの優秀さを見込んで、王様に直々に願い出たのだ。出来ればその王太子様の気持ちも汲み取ってほしい」
ダリルはセラにそう言うとセラは小さな声で「王太子様が・・・」と呟いた
「でも・・・でも・・・」
そう言うセラに、マートはセラの手を握る
「恐れながら伯爵様、それを聞いてしまってはセラが・・・」
震えるセラにダリルは驚く
「す、すまない・・・脅しているとかではないのだ。」
大抵の貴族は王太子立っての願いと言えば喜ぶからと、平民であるセラにも同じように言ったダリルは後悔した
平民と貴族というのは、感じ方がこんなにも違うのだ・・・
その驚きと、自身の平民への無理解に悔しくてたまらなかった
その時、ハリスがダリルの肩に手を置く
ダリルがハリスを見ると、ニコリと微笑みを浮かべている
「セラ嬢、そんなに気負うことはないのです。」
その言葉にセラの震えは止まり、ハリスの方を見る
「王宮と言うところは確かに貴族に囲まれた場所で、貴方にとっては怖いところかもしれません。ですが、試験を受けて合格した後に配属される場所は図書室。
「私は図書室室長です。私の部下として配属される貴女への嫌がらせは私が断じて許しません。」
ハリスの目は真っ直ぐにセラを見る。
「ハリス伯爵様・・・でも、私なんかが・・・」
小さな声でハリスの名を呼ぶセラの瞳は気持ちが揺らいでいるように見える。
「私なんかが・・・なんて、謙遜も度が過ぎれば失礼というものですよ。・・・まぁ、これは王太子に私が言われた言葉なんですがね。」
そう言ってハリスは笑う。
「セラは、貴族は爵位関係なくみんな偉いと思っているでしょうが、貴族にも偉い者と平民と大差ない者がいるのです。私は伯爵という爵位はありますが実際は伯爵位の中でも末端です。そんな私にも王太子様は話しかけてくださる、爵位ではなく能力で人を見る方なのです。
そんな方がセラ嬢が良いと仰るのだから、どうか私なんて・・・は言わないでください。」
「ね、スミス伯爵。」とハリスはダリルの方を見る。
ダリルはハリスの言葉に頬を赤くし、
セラは胸が熱くなる。
家族以外に、私をこんなにも必要としてくれる人がいる。
そう感じると気持ちが昂り鼻の奥がツンとしてくる。
その時、頬を少し赤くしたダリルが咳払いする。
「ゴホン・・・あー、セラ。王太子様はハリス伯爵が言った通りだ。それに、セラに何かあれば私が必ず守る」
琥珀色の瞳に真っ直ぐ見られてセラは目が離せなくなり、ドクンと胸が跳ねる
「わ・・・私」
セラは絞り出すように声を出した。その時
「「おねーちゃーーん」」
閉めていた扉がバンッと開き、
顔のよく似た少年と少女が入ってくる。
「ノア!リア!」
幼い二人は勢いよくセラにしがみつくと、騒ぎ出した。
その姿を見てマートが話しかける。
「お前たち、母さんの病院に先に行くって言ってたのに帰ってきたのか?」
その言葉に二人は目を潤ませてマートの方を向く。
「父さんがなかなか来ないから戻ってきたんだ。」
少年が話し出すと、次は少女が話す。
「そしたら、お店番に知らないお兄さん達がいて、お・・・お店、乗っ取られたのかと思って!」
ポロポロと涙が頬を伝う。
その姿を見たセラは二人をギュッと抱きしめる
「違うわよ。落ち着いて二人とも。」
そうして少し落ち着いたところで二人はダリルとハリスの存在に気付いた
「お姉ちゃん、この貴族様たちは・・・?」
少年が恐る恐る聞くと、セラは二人をダリルたちに紹介する。
「ハリス伯爵様、スミス伯爵様。この子達は私の弟と妹でノアとリア、双子でまだ8歳です。 ノア、リア、こちらはハリス伯爵様とスミス伯爵様。お二人は私に王宮勤めのお誘いをしてくださっているのよ。」
セラは二人に分かるように簡単に説明する
ダリルとハリスも幼い二人を見る
少年ノアはセラを少し生意気にしたような雰囲気を纏っており、リアと呼ばれた少女はノアの後ろに隠れこっそりとダリルとハリスを覗いている
リアもセラと顔がよく似ており、まさしく二人はセラの弟妹だ
「ノア・リア。よろしく頼む」
ダリルは幼い子と接したことがなく、少し固い挨拶だが、ハリスは柔らかく微笑み子どもの目線に合わせて挨拶をする
「ノア君、リア嬢。仲良くしてください」
そう言ってハリスは両手を二人に出すと二人はハリスの手をギュッと握る
「「うん。ハリス様よろしくお願いします。」」
あっという間にハリスに懐く二人と、その姿を見て少しショックを受けるダリル
その姿に笑ってはいけないのに思わずセラは噴き出してしまった
「ふふ・・・ぁ、すみません」
慌てて両手で口を押さえるセラ
そんなセラを見てハリスが独り言のように話しだす
「まだ幼い子たちがいると、やはり食費も嵩むでしょう・・・病で倒れた母君の病院代も必要ですし・・・」
その言葉を聞いてセラとマートは顔が少し暗くなる
チラリとその顔を確認してハリスは続ける
「セラ嬢が王宮勤めとなれば、少なくとも今よりも暮らしぶりはよくなるでしょうね・・・」
そう言われてセラはハリスを見る。
そしてダリルの方を見ると、ダリルはセラの顔を見て頷く。
「私から王太子様に進言しよう」
そう言われてセラの心は揺れる。
マートはセラの肩に手を乗せると、セラに声をかける。
「セラ・・・、家の為と思わなくていい。お前のやりたいようにしなさい。」
マートの言葉にセラの揺らいでいた心はどんどん固まる。
そして双子の頬を優しく撫でると、ダリルの方を見て話しだす。
「スミス伯爵、その・・・もし合格したら、ここから通うことは出来ますか?」
ダリルは質問が想定外で一瞬戸惑った。
「通う・・・?王宮に住めるのだぞ?」
「それはそうなのですが・・・弟や妹と離れるのも寂しいですし、父や病気の母も気になりますので・・・」
ダリルは腕を組み考え込むが、ハリスから助言される。
「良いのではありませんか?王宮勤めの侍女でも自宅から通う者も多いですし、そう言う者達専用の馬車もあります。」
「そうなのか?」
「はい、現に私もそれを利用しておりますので」
ハリスからのその言葉に、ダリルは腕を解きセラに笑顔を向ける。
「だそうだセラ。通いで大丈夫だ。だから、試験を受けてくれ」
ダリルの言葉に嬉しそうに微笑むセラは両手を胸に当てると、大きな声で宣言する。
「私、特別試験受けます!!」
0
あなたにおすすめの小説
あなたのためなら
天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。
その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。
アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。
しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。
理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。
全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
乙女ゲームは見守るだけで良かったのに
冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。
ゲームにはほとんど出ないモブ。
でもモブだから、純粋に楽しめる。
リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。
———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?!
全三話。
「小説家になろう」にも投稿しています。
【完結】花冠をあなたに ―信じ尽くした彼女の、最期の言葉―
桜野なつみ
恋愛
病弱な婚約者を支え続けた令嬢ミリアーナ。
幼いころから彼を想い、薬草を学び、研究し、元気になったら花畑で花冠を編ごう」と約束していた。
けれど、叔母と従妹の影がその誓いをゆがめ、やがて誤解と病に蝕まれていく。
最期に彼女が残したのは――ただ一つの言葉。
全十話 完結予定です。
(最初は全四話と言っていました。どんどん長くなってしまい、申し訳ありません。)
実家に帰ったら平民の子供に家を乗っ取られていた!両親も言いなりで欲しい物を何でも買い与える。
佐藤 美奈
恋愛
リディア・ウィナードは上品で気高い公爵令嬢。現在16歳で学園で寮生活している。
そんな中、学園が夏休みに入り、久しぶりに生まれ育った故郷に帰ることに。リディアは尊敬する大好きな両親に会うのを楽しみにしていた。
しかし実家に帰ると家の様子がおかしい……?いつものように使用人達の出迎えがない。家に入ると正面に飾ってあったはずの大切な家族の肖像画がなくなっている。
不安な顔でリビングに入って行くと、知らない少女が高級なお菓子を行儀悪くガツガツ食べていた。
「私が好んで食べているスイーツをあんなに下品に……」
リディアの大好物でよく召し上がっているケーキにシュークリームにチョコレート。
幼く見えるので、おそらく年齢はリディアよりも少し年下だろう。驚いて思わず目を丸くしているとメイドに名前を呼ばれる。
平民に好き放題に家を引っかき回されて、遂にはリディアが変わり果てた姿で花と散る。
結婚5年目のお飾り妻は、空のかなたに消えることにした
三崎こはく
恋愛
ラフィーナはカールトン家のお飾り妻だ。
書類上の夫であるジャンからは大量の仕事を押しつけられ、ジャンの愛人であるリリアからは見下され、つらい毎日を送っていた。
ある日、ラフィーナは森の中で傷ついたドラゴンの子どもを拾った。
屋敷に連れ帰って介抱すると、驚いたことにドラゴンは人の言葉をしゃべった。『俺の名前はギドだ!』
ギドとの出会いにより、ラフィーナの生活は少しずつ変わっていく――
※他サイトにも掲載
※女性向けHOT1位感謝!7/25完結しました!
むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。
緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」
そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。
私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。
ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。
その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。
「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」
お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。
「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる