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21:合格者セラ
しおりを挟む「やりましたね!セラ嬢!!」
ハリスがセラに近付きセラを激励する
しかし、セラからの反応がない
「セラ嬢?セラ嬢ー?」
ボーッと一点を見つめ続けるセラの目の前で、ハリスは手のひらをひらひらとさせてみる。
「え、はっ!?合格?!」
やっと気がついたセラはようやく動き出し頬を赤くし興奮したように声をあげる
「そうです!おめでとうセラ嬢」
まるで自分のことのように喜ぶハリスと嬉しそうに「わー!」としか言わないセラ
その二人のやりとりを静めるように男性試験官は咳払いする
「ゴホン・・・そろそろ良いですか?」
「あ、すみません。」
慌てて男性試験官の方に向き姿勢よく立つと、セラに先ほど合格を伝えた際に手に持っていた紙をセラに渡す
「平民とは思えぬ素晴らしい解答でした。これから王宮でその力を発揮し、国の為、国王様の為に尽力してください」
「ありがとうございます。誠心誠意頑張ります」
セラはその後紙を受け取り書かれた文字を見る
『合格』
この二文字に胸がいっぱいになり視界が潤む
泣かないように天井を見上げ、パチパチとまぶたを動かす
これからだ。
ここから、私は頑張るんだ!
そう心に誓った
「ではセラ嬢、先程の説明の通り次に王宮に来るのは来週です。それまでに制服を持って行かせますので、次回からはそれを着用してください。定刻に馬車が商店街前に来るようにしますのでそれに乗って来てくださいね。」
「はい!これからよろしくお願いします」
セラはハリスからひと通り説明を受けた後、今後乗る馬車の場所に案内され、そのまま乗って帰る事になった
「ハリス伯爵様、これからお世話になります」
馬車の窓からハリスにそう言うとハリスは微笑む
「はい、図書室の仲間は変わり者が多いですが、良い方ばかりなので気負わず頑張りましょう」
ハリスが言い終わると馬車が走り出す
「ふう・・・疲れた・・・」
試験が・・・というよりも庭園での出来事
「あの人とはもう出会いたくないなぁ」
そう思いながら、ふかふかの馬車の座席と適度な揺れにうとうとし始める
大切な『合格』と書かれた紙を大切に持って、セラの瞼が閉じる
コンコン
「ダリル様、ハリス伯爵がいらっしゃいました」
「通せ」
マルコが言うと、食い気味に入室の許可を出す
ダリルは手に持っていたペンを置き入って来たハリスを見て立ち上がる
「ハリス伯爵!」
「殿下・・・セラ嬢、合格しました。」
そう言われ、ダリルの顔は明るくなる
「そうか!」
「ダリル様、ようございましたね!」
マルコも嬉しそうにダリルに声をかける
「ああ、きっと合格だろうと思っていたが、やはり改めて聞くと嬉しいな!」
ニコニコと笑うダリルにハリスも嬉しそうに微笑む
「これで私の古書研究も捗りそうです!」
「そうだな!私もこれからはちょこちょこ図書室を訪ねる事にしよう」
わーっと喜んでいた室内が、ダリルの言葉でぴたりと止まった
まるで時が止まったように
「ん?みんなどうした?」
「殿下・・・それは。」
「なんだ?」
「ダリル様、それはなりません」
ハリスが気まずそうに視線をそらしていると、マルコがピシャリと言い放つ
「なぜだ?!」
「ダリル様は王太子様です!そのようなお方が、平民・・・しかも妙齢の女性に会うためになど、あらぬ噂が出るやもしれません」
「な!セラは別にそういう」
「そう言うのでなくても! ダリル様の行動が王太子の座を危うくする可能性があるのです。」
普段よりも語気を強くダリルに意見するマルコにダリルは返す言葉もない
ダリルの身を案じてのこととダリル自身がわかっているからだ
ダリルは拳を握る
「だが・・・私は王宮内でのセラの保護者なのだ・・・」
その姿にハリスは「ふぅ。」と小さく息を吐いた
「恐れながら申し上げます。 殿下におかれましては、お立場もございます。従者であるマルコの意見は尤もです。 ですがやはり、王太子殿下から目をかけられている。という事がわかれば下手にセラ嬢に手を出すものも少ないでしょう。」
「ではどのようにすれば?」
マルコはハリスに意見を求めた
「セラ嬢を古書解読のために召し上げて下さったご恩がございますし、私が上手く殿下がセラ嬢の仕事ぶりを見学出来る場を設けましょう。」
「ハリス伯爵!」
ダリルはわかりやすく顔が明るくなった
その姿にハリスはにこりと微笑んだ
「周りの目が入らない私の古書研究室のみ殿下の出入りを許可します。 どのみちそこでの作業が多いでしょうし、見つかったとしても殿下が見つけてきた翻訳師の力量を見るために私の研究室に出入りしても何も変ではありません」
「素晴らしい。ハリス伯爵感謝する」
「いえいえ、私も同席しているので二人きりになる事もないですし、マルコが心配している噂も出ませんよ」
「ハリス伯爵、ありがとうございます」
マルコはハリスに深々とお辞儀をした
「では、私はそろそろ研究室に戻ります。」
「ああ、私も仕事がある」
「では、失礼いたします」
ハリスはマルコに挨拶すると部屋を出て行った
「ただいま~」
「「お姉ちゃんおかえりなさい!!」」
家に入るなりギュッと抱きつくノアとリアに優しく抱きしめ返すセラ
「ただいま!ノア。リア。」
「おかえりセラ」
奥から父マートが出てくる
「ただいま、父さん」
そう言ってマートに王宮で貰った書類を手渡す
マートはそれを受け取り中を見ると目を見開きセラを見た
「合格・・・」
「うん」
セラの返事にマートは優しく微笑む
「そうか、おめでとう」
「ありがとう」
「母さんも病院から帰って来てるぞ」
「え!ほんと!!」
セラはマートの言葉に嬉しそうに両親の寝室に向かった
「母さん!」
「セラ、おかえり」
ベッドに座って微笑むセラとそっくりな母がいた
顔色の良い母に肩の力が抜けたセラはゆっくり近付き、ギュッと抱きついた
「母さんも、おかえり」
久しぶりに帰って来た母に、セラはまた少し痩せた気がしたが、こんな日に帰って来てくれた母に心から感謝した
「母さん。言ってた試験だけどね、合格したよ」
「まぁ、凄いわ!」
「来週から私、王宮勤めよ!」
母は嬉しそうに報告するセラの頬を撫でた
「大変なこともたくさんあると思うけど、私の子だもの。きっと大丈夫。 頑張りなさい」
母の言葉にキュッと胸が苦しくなり、涙が出そうになったセラは、自分の頬に置かれた母の手に、自分の手をそっと重ねて微笑む
「うん。・・・頑張る」
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