恋と愛を知ったのは、陰謀だらけの王宮でした。

みるく

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23:相乗り

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「お疲れ様でした!」
夕刻5時
セラは図書室にいる文官や職員を見つけると声をかけて退室する


小さく息を吐いて肩の力を抜いて廊下を歩く
これから何度もここを歩くのかと思うとなんとも不思議な気持ちになった

その時
「セラ・・・セラ・・・」
小さな声が聞こえてきた
セラはキョロキョロと辺りを見回す

「セラ・・・こっちだ」
左の廊下から聞こえてきて、そちらを見るとマルコが人目を気にしている様子で呼んでいる

なんとなく大きな声で挨拶しては行けない気がして、マルコの近くに寄り小声で話す
「マルコ様、お疲れ様です。どうしましたか?」
セラが近くに寄ってきて、マルコはさらに近付くように手でセラを呼ぶ
セラは耳をマルコの顔の近くに寄せると、マルコは小さな声で話しだす

「セラ、・・・帰る時の馬車に相席を頼みたいのだが」
言いにくそうに話すマルコに、セラはそんなことかと言いたそうな顔で見る
「構いませんよ?」
そう言ったセラにマルコは、セラが指定された馬車停留所ではない方にくるよう誘導する

セラは、一体どこに行くんだろうと思いながらマルコの後ろをついて行く





「セラ、この馬車で帰ってくれ」
「こ、これは・・・」
マルコが指定した馬車は、セラでもわかるくらい豪華な馬車
どう考えても地位の高い貴族専用
それこそ王様は王妃様が乗るのでは?と思うくらい豪華なのだ

その馬車を見て呆然としていたが、マルコが馬車の扉を開けて、乗れという合図を送ったところで我に帰った
「こ・・・こんなの乗れません!!!」
セラは激しく拒否をして、マルコは目を見開いて驚く
「え!なぜ?!」
「だってこんな豪華な馬車・・・絶対私が乗ったらダメなやつです!!」

頭を勢いよく振って拒否するセラに、マルコははぁ・・・と大きめのため息をつく
そのため息に、セラは怒らせたと思い慌てる
「あ、す・すみません!!あまりにも豪華な馬車で、私が乗るなんて良くないと思い・・・決して乗りたくないとかでは!!」
「セラ、気にしなくて良い。私もセラは萎縮するからと、止めていたんだ」
お前は悪くないと言いながら深いため息を吐くマルコは、ジャンの名前を呼ぶ

「呼びましたか?」
「ジャン、ここに送迎用の馬車を。やはりあれでいい」
「わかりました」
ジャンはセラが本来乗る予定だった馬車の停留所の方向に走っていった


その姿を見たあと、マルコに話しかける
「あの・・・すみません」
「セラ、お前が気にすることではない。全てダリル様が悪いだけだ」 
「ダリル様?」
マルコは、はぁ・・・と深いため息を吐いた

「とりあえず、セラはジャンが手配してくる馬車に乗って待っていてくれ」
「はい、わかりました」
よくわからないままのセラはとりあえず言われた通りにジャンが来るのを待った

マルコは相席の人物を連れてくるためにどこかへ行ってしまい、待ってる間に先程の豪華な馬車を見る

「・・・どう考えても王族専用って感じがする・・・」
馬車を出してもらえるとわかった際の両親の驚いた顔を思い出し、もしもこの馬車で帰ったら商店のみんなも腰を抜かしてしまうだろう。
そんなことを考えて、つい吹き出してしまう



「お待たせしました。」
一人で笑っていると、後ろから声をかけられる
振り向くとジャンがいて、その奥から朝乗った馬車と同じものがこちらに向かってきていた
「ジャン様、わざわざありがとうございます。」
ジャンに頭を下げる
「お気になさらず、先に乗っていてください。エスコートしましょうか?」
ジャンは手を出すとセラは丁重に断る
「自分で乗れますから、ジャン様はお仕事にお戻りください!」
そう言うと、ジャンはペコリとお辞儀をする。
そして後ろを向いた時、思い出したように立ち止まりセラに話しかける
「・・・ジャンで良いですよ」
それだけ言うと、走って行ってしまった

「恥ずかしがり屋さんなのかしら・・・」
走るジャンの後ろ姿を見ながらセラはつぶやいた





馬車に乗り込み座席に腰掛ける
柔らかすぎず硬すぎない程よい座り心地だが、行きの道中何度か振動で席から落ちそうになったのを思い出す

「相席だから、迷惑にならないようにしなくちゃ」
そう呟いていると


コンコンッ
ドアがノックされた
馬車のドアはプライベート空間を重視する為か窓は付いているがカーテンが閉められていて誰が来たのかわからない



「は、はい!」
セラは気を抜いていた為、ドキリと心臓が跳ねた
カチャリと控えめな音を立ててドアが開く

そこに立っていたのはダリルだった


「・・・え!ダリル様!」
「セラ、遅くなりすまない」
少し息を切らしながら入ってくるダリルはセラの向かいの席に座る

「あ・・・。相席ってダリル様だったんですね。」
思わずホッとするセラは柔らかく微笑む
その姿にダリルは自分だからホッとしてくれているのだと思い、気分が良くなった

「知らない人だと思ったのか?」
「はい、怖い方とかだったらどうしようかと思っていましたが、ダリル様でホッとしました!
知ってる方でよかったです!」
そう言って嬉しそうにするセラに、ダリルは自分だからではないのか・・・と少しがっかりした


そんな気も知らずセラはダリルに話しかける
「そういえば、帰宅の馬車に相席と言うことは、ダリル様のお屋敷は商店街の近くなのですか?」
首を傾け聞いてくるセラの質問に、ダリルはギクリとする
「あ、あぁ。セラの降りる場所からもう少し遠いのだが・・・な。」
ダリルは視線をずらすが、嘘とも気が付かないセラはその話に納得した
「そうなんですね!全然知りませんでした!」
「ハハハ・・・」
嘘を吐き慣れていないダリルは声が小さくなっていく

そこで話題を変えようと、セラの方に視線を戻し話しかける

「そ・・・そういえば!図書室での仕事はどうだ?嫌な事を言う奴はいなかったか?」
ダリルは心配な顔をしてセラの返事を待つ
「とても楽しく仕事ができました!ハリス様はお優しいですし、業務を教えてくださるマギーさんという女性がとても優しくて・・・」

セラはダリルに今日の出来事を順番に話し始めた
その話をダリルは一つも聞き逃さないようにセラに視線を合わせ、時折相槌を打って聞いていた



「なるほど、セラには図書室が合っているようだ。明日からも頑張ってくれ」
「はい、お気遣いありがとうございます」
にこりと微笑むセラの顔がキラキラして見えるダリルは、セラを直視するのが恥ずかしくなり、ドアの窓についているカーテンを少し捲る

「お、もうすぐ到着しそうだな」
その言葉にセラも同じように自分側のカーテンを捲り外を見る
「あ、本当ですね。」
そう言ってダリルの方を見ようとした時


ガタガタッ

「うわっ」
「キャッ」

馬車が激しく揺れ、御者台にいたマルコが、外から申し訳なさそうに声をかける
「申し訳ありません。石を踏んだようで、激しく揺れましたがお怪我はございませんか?」

「だ、大丈夫だ!!進んでくれ」
ダリルは大きな声でそう言うと、馬車が走りだす


「いたた・・・あ!す、すみません」
「い、いや・・・大丈夫だ」
激しく揺れた馬車のせいで、ダリルの上にセラが乗ってきて、ダリルはセラを守るようにがっしりと捕まえている

「今動くと、また危険かもしれないからもう少し・・・このままで・・・」
「は、はい・・・」

ダリルとセラは熱い顔を隠すようにお互い目を逸らし、少しの間そのままでいた











コツコツコツコツ

ヒールの音を鳴らしながら廊下を歩く音が響く
「早く王様とお話せねば!」
その声は、抑えきれない怒りに満ちていた
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