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24:サリアナの怒り
しおりを挟む「王妃様!お待ちください!」
マーヤがそう言うが、サリアナの歩くスピードは止まらない。
「こんな時に何を言ってるの!今すぐ王様とお話さねば!」
そう言うと、サリアナは速度を緩めることなく、王様の執務室へ向かっていく
一室の前に立つと扉の前の従者が困ったような顔をする。
「通しなさい!王様にお話があります」
「王妃様、現在執務中でして・・・」
「執務中!?そんな事はわかっている!早く通すのだ!」
「王妃様!なにとぞ!!」
従者を無理やり扉の前から退かそうとした時、
ガチャリ
扉が開き、中から王様の側近ギャリが出てきた
「王妃様、王妃様のようなお方が、かような場所でこのようにお騒ぎになるなど、何事でしょう?」
口は笑っているが、目が笑っていない。
そんなギャリに臆する事なくサリアナは扇子を広げ、口元に持ってくる
「ギャリ、王様に急ぎお聞きせねばならぬ事がある。通しなさい」
「・・・王妃様」
ギャリがサリアナに何かを言おうとした時扉の奥から声が聞こえてきた
「王妃を通しなさい」
王様の声にギャリは黙って扉を開ける
サリアナはフン、と鼻を鳴らし部屋に入っていった
「王様」
「サリアナ。どうした?」
静かな部屋の奥、大きな机で仕事をしている王様はサリアナに目を合わせることなく書類に目を通している
「王様、ダリルが王宮に平民を入れたと聞きました」
その言葉を聞いて王様はチラリとサリアナを見る
「それがどうした?」
そう言われ、サリアナはカッと腹が立ったが、扇子で口元を隠し余裕ぶった
「それが・・・と仰いますが、この王宮に平民を入れるなど、この長い歴史の中で初めてのことでは?」
「今までも下働きで平民が働いているじゃないか?」
そう言いながら、また書類に目を向ける王様に、サリアナは更に言葉を続ける
「下働きは所詮下働きです。しかし、今回は制服を与え、翻訳師として働かせていると聞きました。なんの教育も受けていない平民を受け入れるなど、王家の威信に関わるのでは?」
そう話すサリアナの言葉に、王様は書類を置き冷たい目でサリアナを見る
その鋭い琥珀色の瞳にサリアナはびくりと肩をすくめた
「そんなことを言うためにここへ来たのか?」
そんなこと。と言われた事で、サリアナは怒りを露わにする
「そんなこと?王様、この世には身分があり、人はその身分の中で生きるものです。貴族は貴族として、平民は平民として、です。今回平民を受け入れたことで、愚かな者が同じように入ってくる可能性があります。その時、長きに渡る王家の歴史に傷が残るかもしれないのです。」
サリアナは王様に向かって臆することなく進言する
王様は静かにサリアナの言葉を聞き、そして口を開く
「全ては王太子であるダリルが決めた事。・・・それに私も優秀である者は身分を問わず受け入れるべきと思っている。 」
真っ直ぐサリアナを見る王様に、サリアナは更に言葉を続ける
「ダリルの決めた事ならばなおさら!父である王様が止めるべきではないのでしょうか?」
「サリアナ・・・なぜダリルのやることに、そのように口を出すのだ。」
「わ・・・私はただ、この王家。ひいては我が国を思って」
「今までも、些細なことでもダリルのすることには必ず口を出していたであろう?それも、セシルにはさせていないのに、なぜダリルには・・・と言ってな」
王様は睨むようにサリアナを見る
その瞳に、少し後ずさりするものの扇子をパチンと音を立てて閉じる
「私は、ダリルが今までの慣例を軽んじる傾向があるため、進言しているのです!」
「そなたは自分の思い通りにならぬ時にのみ口を出しているように感じるが?」
「いいえ!断じてそんなことはございませんわ! だって・・・」
サリアナは少し寂しそうな顔を見せる
「だって、ダリルだって私がお腹を痛めて生んだ子です!! 我が子を貶めようと考える母がこの世に居るとお思いですか?」
その言葉に王様はピクリと反応する
「・・・その言葉、そなたの本心であると願っている・・・」
サリアナにも聞こえないくらい小さな声で呟く王様にサリアナは首を傾げる
「王様?今なんと」
「とにかく!」
サリアナが話そうとした途端言葉を被せるように王様は話しだした
「今回はそなたの願いを聞き入れることはできぬ。ダリルは未来の王として、この国をより良くしている最中だ。あやつが失敗を恐れぬように、何かあればわしが責任をとるつもりでやらせておる。 母であるそなたの言い分もわからなくはないが、政に口を挟んではならぬ。下がりなさい」
有無を言わせぬ言葉に、サリアナは下唇を噛み踵を返す
そして、扉が開くとともに王様へ声をかける
「・・・ダリルが入れた者が、何も起こさぬことを祈っておりますわ・・・」
バタン
大きな音を立てて扉が閉まった
「じゃ、じゃあセラ・・・また。」
「はい・・・また・・・」
馬車が大きく揺れ、意図せず密着したことでお互い恥ずかしさから顔が合わせられずぎこちなく別れの挨拶をする
御者席に座っているマルコは、耳まで赤くして、視線をそらしながら挨拶をしている二人を不思議そうにみる
そして、いつまでも動かない二人の元に近づいていく
「ダリル様、そろそろ帰りますよ。」
そう声をかけると二人揃って肩を大きく揺らし動き出した
「あ、あぁ。わかっている。セラ、また明日も頑張るのだぞ。見送るから帰りなさい。」
「ぁ、はい。ありがとうございます。では、失礼いたします」
セラはそう言って、走って帰っていった。
「・・・様・・・ダリル様」
ボーッとセラを見送るダリルに、マルコが何度か声をかけると、ダリルは目を見開き返事をした
「な!なんだ?!」
「我々も王宮へ戻りますよ?」
「あぁ・・・」
ダリルはセラの帰っていった方をチラリと見ると馬車に乗り込もうとした
それを見ていたマルコはダリルに話しかけた
「ダリル様・・・セラと馬車で何かありました?」
そう聞くと、ダリルはわかりやすく動揺し出した
「な、な、な!!何もない!!」
「本当ですか?」
「も、もちろん!・・・ただ」
「ただ?」
マルコはダリルの口からどんな言葉が出てくるのかドキドキしながら待った
できる事なら友人的な想いの言葉であって欲しいと願いながら
「セラは・・・いい匂いがした・・・」
「・・・さようでございますか・・・」
友人的な想いではなく、間違いなくセラへの好意・・・それも異性としての好意をダリルから感じて、どうしたものかと頭を抱えるマルコだった
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