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25:貴族とは
しおりを挟む「サリアナ様!」
王様の執務室から出てきたサリアナにマーヤは声をかけるが、サリアナは非常に険しい顔をしている
怒っている顔に、マーヤは部屋に戻ったら大変そうだと感じた
ガシャン
サリアナは部屋に戻ると花瓶を落として割り、部屋付きの侍女が小さく悲鳴をあげる
「サリアナ様おやめください!」
「うるさいわよマーヤ!!」
「ですが!!」
怒るサリアナは手が付けられず、マーヤはせめて怪我だけは避けねばと、サリアナが割った花瓶の破片が散らばる場所から、サリアナを移動させようとする
「サリアナ様、お怪我をされてしまいます!どうかお心をお鎮めください!」
「うるさいわよマーヤ!!お前はいつも私のやることに!!」
そう言ってマーヤに向かって手をあげる
マーヤは思わず自分の顔を庇おうと両手を顔の前にだす
「キャッ」
パシッ
「母上・・・マーヤに手をあげるなど、何があったのですか?」
すんでのところでセシルが部屋に入ってきて、サリアナの手首をつかむ
その目は母を案じるわけでなく、乱心している母への呆れにもとれた
「セシル!」
「セシル様」
サリアナは驚き、マーヤはホッとした顔をしてセシルを見る
「マーヤ、一体母上はどうしてこんなことに?」
「それは・・・王太子様が入れた平民についてお尋ねになるため、王様の執務室へお行きになったのですが、出てこられてからこのように・・・」
マーヤはセシルに説明するが、最後の方はどんどんと声が小さくなる
マーヤを見るサリアナがマーヤに要らぬことを言うなと目で訴えているからだ
「兄上が入れた平民?母上、どう言うことです?」
「その前にセシル、そろそろ離してちょうだい」
サリアナは少し落ち着きを取り戻したのか、セシルをじっと見て掴まれた手首に力を入れる
「失礼しました。・・・それで?入れた平民とはなんですか?」
セシルがサリアナに聞くと、サリアナは扇子をパシッと音を立てて広げ、マーヤにお茶を淹れてくるように言って外に追い出した
「ダリルが市井から連れてきた平民の話です。 王様にお願いし、特別に入内テストを受けさせ、図書室で翻訳師として制服を与え入内させたのです。」
「へぇ・・・市井から。 で、母上はそれの何が気に入らないのですか?」
セシルはそう言うとサリアナは目を見開き、セシルに怒る
「それの何がですって?!王宮は平民のような品位のない者を受け入れる所ではないのよ?!」
「ですが父上がお許しになったのなら、母上がお怒りになっても仕方がないのでは?」
セシルはまたいつものヒステリーが始まったと思い、今日はいつまでこれが続くのかと考えていた
そんな思いをサリアナが感じ取ったのか、セシルに冷たい視線を送る
「セシル・・・まさか貴方まで私が悪いとでも?」
その言葉に、セシルはピクリと眉尻がうごく
そしてサリアナに向かってニコリと美しい笑みを浮かべた
「まさかそんな・・・俺が母上にそんなことを思うと?」
セシルのその言葉に満足げなサリアナ
「そうよね、私は貴方のことを思って王様に進言しているのです。 そんな私の思いを一番理解しているのはセシルですものね。」
サリアナの怖いくらい美しい笑みと
まさに瓜二つと言っても良いくらい美しいセシルが静かにお互いをみる
「勿論です母上。 ですが、いつも言っておりますが、私は王座に興味がないのです。」
「なりません!」
サリアナはセシルの言葉にピシャリと言い放つ
「なりませんよ、セシル。私は貴方を将来の王に据えるために、ここまで育ててきたのです。貴方は私の言った通りにすれば良いのです。」
その言葉にうんざりするセシルはサリアナに質問する
「いつも思っていたのですが、文武両道な兄上がいるのに、なぜ私なのですか? 兄上も母上がお腹を痛めて生んだ子でしょう?」
「そのことについて、知る必要はありません。貴方は“そう育てられた”のですから・・・ただ」
「ただ?」
「一つ言えるとするならば、これが貴族ということです。」
そう言うサリアナの瞳は、まるで狩りをしている時の獣のようだった
その瞳を見たセシルは、母からの王位への圧力に逃げ出したく感じていた
その時、コンコンとノックがして、マーヤが湯気の立った紅茶を持って入ってきた
「さぁ、セシル。先程までの話は置いておいて、もうすぐ生まれてくるお子の話でもしましょう?」
「いえ、通りがかりに母上の声が聞こえたので入って来ただけですので、お茶はまた次に。」
「まぁ、そうですか。 まぁ、もうすぐ父となる身、忙しいのでしょう。 それと・・・遊びもほどほどにね。」
サリアナはそう言うと紅茶に口をつけ、優雅な時間を楽しみだした
女遊びについてチクリと釘を刺してくるサリアナに一瞬嫌な顔をして頭をさげる
「失礼します」
セシルはサリアナの部屋から出て、グッと拳を握り来た道をまた戻った
「わっ!!」
「っ?!」
翌日、母との昨日の話がずっと頭に残りイライラとしながら早歩きで廊下を歩いていた
俺が廊下の真ん中を歩くと、自然と人が端により道が開く
「遊びもほどほどに・・・」
その言葉に酷く腹が立った
母の言う通りに、連れてこられた女と結婚させられ、言われた通りに子を作った
自由に生きたい俺を、鳥籠に閉じこめる母を心底好きになれない
女遊びくらい好きにさせてくれ
それ以外は言われた通りにしているだろ。
そんなことを考えながら角を曲がった瞬間
胸の辺りに何ががぶつかった
バサバサと本と書類が落ちる
ぶつかった反動でよろけたが、ぶつかって来た女は座り込んでいる
下を向き座り込んでいる女に声をかけようとしたが、
足元に書類がスーッと落ちてきて、気になりそれを拾う
見てみると、知らない言語とこの国の言葉が並んで書いている
「あ、すみません。それを・・・」
ぶつかってきた女が申し訳なさそうな声を出し手を出してきたので、書類を渡すと目があった
「「あ・・・」」
目の前の女は目を見開く
「お前・・・」
「あああ、あなたはあの時の!!」
先日の事を思い出したのか顔を赤くしてそう言った後、女は声が大きいと感じたのか慌てて自分の口をふさぐ
「・・・ぷっ」
その姿が面白くてつい吹き出した、さっきまでモヤモヤしていた胸の霧がスーッと晴れていく
「なんだお前、ここで働いていたのか?」
「・・・はい。」
俺の質問に答えたくないようで声が小さい
だが自分より身分が上ということはわかっているのだろう
そんな姿もなんだか面白く、少しいじめたい衝動に駆られた
「城のどこで働いている?」
「・・・」
「ん?言いたくないのか?俺はお前を辞めさせられる程度の権力は持っているぞ?」
「・・・図書室です」
嫌そうな顔を隠すことなく話す女は、昨日母が話していた図書室で働いている
この女を揶揄うついでに、兄上が入れた平民を見てみるか。
「おい、お前名前は」
「セラさん!そっちじゃないですよ!」
名前を聞こうとした時、後ろから赤髪の女が叫んでいる
目の前の女はそちらを振り向くと返事をした
「あ!すみません!今行きます!!」
では、失礼します!
目の前の女はそう言うと、半分に折れ曲がるくらい勢いよくお辞儀をして、「マギーさーん!」と言いながら走って行った
「セラ・・・ね。」
俺は面白いおもちゃを見つけたような高揚感に包まれた
そして、図書室へ歩を進めようとした時
「セシル様・・・ティファ様がお呼びです」
後ろから、妻の侍女の声が聞こえた
「はぁ・・・今から行く」
侍女にそう言うと、俺は妻の部屋へ向かった
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