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26:ティファ王子妃
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「ティファ様、セシル殿下をお連れしました」
妻の侍女がそう言いながら、部屋に入る
後ろに続き入ると、大きなお腹を抱えた妻が険しい顔でこちらを見てくる。
はぁ・・・母の次は妻か・・・
そう思いながらも、にこやかに微笑みながら話しかける
「ティファ、何か用かな?」
妻の金の髪が窓から入る明るい陽射しに眩しく光る。
深海のような青い瞳で睨み、今にも涙が溢れそうだ。
その姿すら煩わしい。
だが、彼女の家は王家を長きに渡り支えてきた臣下の家系であり、彼女もまた貴族としての責務を担い俺と婚姻したんだろう。
彼女もまた家系の被害者だと思えば同情しようとも思えてくる。
「なぜです?」
震える唇で急にそんなことを言い始めた。
いったい何が言いたいのかわからない。
「何がだい?」
妻は妊婦の身体に合わせたゆとりのあるワンピースのスカート部分をギュッと掴むと深呼吸をした。
「・・・セシル様、庭園で貴族令嬢と密会していたと言うのは事実ですか?」
はぁ・・・。
心で深くため息をつく
どうせ自分の侍女を見張らせていたのだろう。
俺は冷たい視線を妻に向ける。
「それが・・・何か問題でも?」
妻の頬に一筋の涙が溢れる。
「問題しかございません!私たちはまだ新婚です!そして私は身重・・・セシル様のお子を孕っているのですよ!」
「身重の妻に身体的負担を強いない為に、外で発散しているのです。 それに王宮内の方が逆に人目につきにくい。 君以外に正式な妻を迎えるわけではないし、俺たちは政略結婚だ。なのに何故そこまで口出しを?」
「政略結婚などではございません!!私は!・・・私はセシル様と婚姻を希望して正妃となったのです。」
「ティファ・・・俺は元々結婚するつもりがなかった。それなのに母上に言われ結婚させられたんだ。 君には悪いと思う部分もあるし、俺の子の母になる人だ、もちろん礼は尽くす。 しかし、俺のやることに口出しするな」
そんな最低な言葉で妻を傷つける
ボロボロとこぼす涙を拭いもせず、握った拳をさらに強く握る姿はなぜだか俺には響かない
「とりあえず、しばらくは放っておいてくれ」
「・・・承知しました。」
酷い男だと自分でも思う
だが、どうにもまだ自身で納得が出来ていない
「ティファ、悪いな・・・」
俺はそう言って妻の部屋を出た
パタンと静かに扉が閉まる
「わぁああああ」
「ティファ様!お心をお鎮めください!お子様に障ります!」
ティファはあまりな物言いのセシルの態度に、糸が切れたように崩れ泣き叫ぶ
いきなりしゃがみ込んだティファに慌てて侍女が駆け寄る
「お可哀想なティファ様、セシル殿下はあんまりでございます・・・ティファ様がどれだけ長い間セシル様を想っておられるか・・・」
「っ・・・ぅっ・・・」
侍女はティファの背中をさすりながらセシルに対して腹を立てる
まだ幼い頃
王家主催の貴族の子どもを集めたお茶会に参加した時
王宮の庭園に迷い込んだ猫を追いかけ、ティファも迷子になってしまい、泣いているところをセシルが助けてくれた。
それ以来ティファの心はずっとセシルのものだった。
幸いにも家柄も良く、サリアナがセシルの婚約者を探しているという話を耳にした時、両親に妃に立候補したいと願った。
その頃からセシルは、奔放で女好きの噂があったことで、ティファの両親はなかなか首を縦に振らなかった。
しかし、王妃様たっての希望でティファに婚約の話が届いた
「お父様、お母様。私はセシル様の妻となったならば、嫉妬せず妻として大きく構え、セシル様をお支えします。どうか、どうか・・・」
何度も説得してようやくこの座につけたのだ。
しかし実際は、セシルが女と喋るのも腹が立つ。
この世界にセシルと二人きりであれば良いのにと願うティファ。
嫉妬に狂い、いつ誰かがこの座を狙っているかもと心配でたまらなく苦しみ、セシルが部屋に来ない日は何をしているのだろうと夜も眠れない日がある。
「ティファ様、お気を確かに持ってください。ティファ様とセシル殿下がご結婚なさって約1年と少し経ちました。セシル殿下は奔放な方というのはご婚約時からわかっていたことです。
あちらこちらに愛妾を作るかと思っていましたが、特定の女人に執着はしておりません。」
「っう・・・だから、なに?」
必死に話す侍女に泣きながら耳を傾けるティファ
「先程セシル殿下が仰いました。『君以外に正式な妻を迎えるわけではない』と。」
その言葉にティファの涙が止まる
「つまりはセシル殿下の妻は正妃であるティファ様以外にはあり得ないということです!」
「・・・本当?」
ティファは赤くなった目で侍女を見る
「はい。 セシル殿下は王族です。側室を迎えるにしても手順が沢山あります。 それに、正妃こそセシル殿下の隣にいられるお方です。どうか、その場限りの女人に嫉妬などなさらず、お心をしっかりお待ちになってください。」
そう言われティファはお腹をさすりながら侍女をみる
「わかったわ。・・・私はセシル様の正妃。きっとこのお腹のお子が生まれたらセシル様もお心を入れ替えてくださるでしょう」
「その意気でございます! さぁ、お子様のために心豊かにお過ごしください。」
ドンッ!
「クソッ!!」
セシルはティファの部屋から出てしばらく廊下を歩いた
硬い表情を隠すことなく進んでいると、すれ違う貴族達が察しているのかサッと下を向き道を開けていった
角を曲がり人目がなくなった時、壁を拳で叩いた
「チッ・・・昨日は母上、今日はティファ・・・嫉妬や欲に駆られた人間とはなんて面倒な・・・」
セシルは腹立たしさでどうにかなりそうな気持ちを吐き出すように、深く息を吐いた
そして顔をあげると、目の前に図書室と書かれた札が下がった扉が見えた
「図書室・・・」
そういえば兄上の入れた平民がいると言っていたな・・・
そう思い出したのと同時に、セラの顔が頭をよぎる
「・・・静かな場所で一人になるのもたまには悪くないな」
まるで言い訳をするかのように独り言を呟き、図書室の扉を開けた
妻の侍女がそう言いながら、部屋に入る
後ろに続き入ると、大きなお腹を抱えた妻が険しい顔でこちらを見てくる。
はぁ・・・母の次は妻か・・・
そう思いながらも、にこやかに微笑みながら話しかける
「ティファ、何か用かな?」
妻の金の髪が窓から入る明るい陽射しに眩しく光る。
深海のような青い瞳で睨み、今にも涙が溢れそうだ。
その姿すら煩わしい。
だが、彼女の家は王家を長きに渡り支えてきた臣下の家系であり、彼女もまた貴族としての責務を担い俺と婚姻したんだろう。
彼女もまた家系の被害者だと思えば同情しようとも思えてくる。
「なぜです?」
震える唇で急にそんなことを言い始めた。
いったい何が言いたいのかわからない。
「何がだい?」
妻は妊婦の身体に合わせたゆとりのあるワンピースのスカート部分をギュッと掴むと深呼吸をした。
「・・・セシル様、庭園で貴族令嬢と密会していたと言うのは事実ですか?」
はぁ・・・。
心で深くため息をつく
どうせ自分の侍女を見張らせていたのだろう。
俺は冷たい視線を妻に向ける。
「それが・・・何か問題でも?」
妻の頬に一筋の涙が溢れる。
「問題しかございません!私たちはまだ新婚です!そして私は身重・・・セシル様のお子を孕っているのですよ!」
「身重の妻に身体的負担を強いない為に、外で発散しているのです。 それに王宮内の方が逆に人目につきにくい。 君以外に正式な妻を迎えるわけではないし、俺たちは政略結婚だ。なのに何故そこまで口出しを?」
「政略結婚などではございません!!私は!・・・私はセシル様と婚姻を希望して正妃となったのです。」
「ティファ・・・俺は元々結婚するつもりがなかった。それなのに母上に言われ結婚させられたんだ。 君には悪いと思う部分もあるし、俺の子の母になる人だ、もちろん礼は尽くす。 しかし、俺のやることに口出しするな」
そんな最低な言葉で妻を傷つける
ボロボロとこぼす涙を拭いもせず、握った拳をさらに強く握る姿はなぜだか俺には響かない
「とりあえず、しばらくは放っておいてくれ」
「・・・承知しました。」
酷い男だと自分でも思う
だが、どうにもまだ自身で納得が出来ていない
「ティファ、悪いな・・・」
俺はそう言って妻の部屋を出た
パタンと静かに扉が閉まる
「わぁああああ」
「ティファ様!お心をお鎮めください!お子様に障ります!」
ティファはあまりな物言いのセシルの態度に、糸が切れたように崩れ泣き叫ぶ
いきなりしゃがみ込んだティファに慌てて侍女が駆け寄る
「お可哀想なティファ様、セシル殿下はあんまりでございます・・・ティファ様がどれだけ長い間セシル様を想っておられるか・・・」
「っ・・・ぅっ・・・」
侍女はティファの背中をさすりながらセシルに対して腹を立てる
まだ幼い頃
王家主催の貴族の子どもを集めたお茶会に参加した時
王宮の庭園に迷い込んだ猫を追いかけ、ティファも迷子になってしまい、泣いているところをセシルが助けてくれた。
それ以来ティファの心はずっとセシルのものだった。
幸いにも家柄も良く、サリアナがセシルの婚約者を探しているという話を耳にした時、両親に妃に立候補したいと願った。
その頃からセシルは、奔放で女好きの噂があったことで、ティファの両親はなかなか首を縦に振らなかった。
しかし、王妃様たっての希望でティファに婚約の話が届いた
「お父様、お母様。私はセシル様の妻となったならば、嫉妬せず妻として大きく構え、セシル様をお支えします。どうか、どうか・・・」
何度も説得してようやくこの座につけたのだ。
しかし実際は、セシルが女と喋るのも腹が立つ。
この世界にセシルと二人きりであれば良いのにと願うティファ。
嫉妬に狂い、いつ誰かがこの座を狙っているかもと心配でたまらなく苦しみ、セシルが部屋に来ない日は何をしているのだろうと夜も眠れない日がある。
「ティファ様、お気を確かに持ってください。ティファ様とセシル殿下がご結婚なさって約1年と少し経ちました。セシル殿下は奔放な方というのはご婚約時からわかっていたことです。
あちらこちらに愛妾を作るかと思っていましたが、特定の女人に執着はしておりません。」
「っう・・・だから、なに?」
必死に話す侍女に泣きながら耳を傾けるティファ
「先程セシル殿下が仰いました。『君以外に正式な妻を迎えるわけではない』と。」
その言葉にティファの涙が止まる
「つまりはセシル殿下の妻は正妃であるティファ様以外にはあり得ないということです!」
「・・・本当?」
ティファは赤くなった目で侍女を見る
「はい。 セシル殿下は王族です。側室を迎えるにしても手順が沢山あります。 それに、正妃こそセシル殿下の隣にいられるお方です。どうか、その場限りの女人に嫉妬などなさらず、お心をしっかりお待ちになってください。」
そう言われティファはお腹をさすりながら侍女をみる
「わかったわ。・・・私はセシル様の正妃。きっとこのお腹のお子が生まれたらセシル様もお心を入れ替えてくださるでしょう」
「その意気でございます! さぁ、お子様のために心豊かにお過ごしください。」
ドンッ!
「クソッ!!」
セシルはティファの部屋から出てしばらく廊下を歩いた
硬い表情を隠すことなく進んでいると、すれ違う貴族達が察しているのかサッと下を向き道を開けていった
角を曲がり人目がなくなった時、壁を拳で叩いた
「チッ・・・昨日は母上、今日はティファ・・・嫉妬や欲に駆られた人間とはなんて面倒な・・・」
セシルは腹立たしさでどうにかなりそうな気持ちを吐き出すように、深く息を吐いた
そして顔をあげると、目の前に図書室と書かれた札が下がった扉が見えた
「図書室・・・」
そういえば兄上の入れた平民がいると言っていたな・・・
そう思い出したのと同時に、セラの顔が頭をよぎる
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