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33:嫉妬と慣例
しおりを挟む「ティファ様、セシル様をお連れしました」
「通しなさい」
室内にセシルが入ってくるとセシルはティファの前に立つ
ティファは子どもを抱きながらベッドに座りセシルを見る
「セシル様、私が数日前からあなた様を呼んでいたことを知っていて、今頃いらしたのですか?」
その言葉にセシルの眉尻はピクリと反応する
「俺が毎日ふらふらとしていると思ってるのか?お前は俺に監視を付けているから、この王宮の誰よりも俺が何をしているのかよくわかっているだろう」
感情を押し殺したような、冷たい目で見るセシル
しかしその目に怯えることなくティファはセシルを見る
「えぇ。セシル様。私はあなたの妻です。それも、お義母様が選んでくださった。」
「それが何か?」
セシルは、はぁ。とため息を吐きながらティファと子どもを見る
ティファによく似た子ども、自分に似ていないが間違いなく自分の子どもということはわかっている。
しかし、元々結婚するつもりもなければ、子どもを欲しいと思ったこともない。
子どもが可愛くないわけではない。
ただ、どうしても自分で認めたくない。そう強く感じていた。
これがあいつとの子だったら・・・
そんなことをふと考え思考が止まる。
今・・・俺は何を考えた・・・?
ぼーっとしているセシルにティファは怪訝な顔をして覗き込む
「セシル様?」
その言葉に我に返ったセシルは、またティファの顔をみる。
ティファを見る顔が苦しそうに見えて、その顔がティファの気持ちを逆撫でする
「セシル様、お義母様が産後の私の側に付いているようにと仰ってくださったのに、あなた様は城を抜け出し、平民の女と密会していたそうですね。」
眉間に皺を寄せてセシルを見る。
ティファのその言葉にセシルはピクリと反応した。
「平民の女と密会・・・?」
「えぇ、人混みに乗じて身体を密着させ、髪にキスまでしたと聞きました。」
報告されたことをセシルに包み隠さず話すティファは、まるで鬼の首をとったように話した。
その顔に嫌悪感を出すセシルはギュッと拳を作る
「だったらなんなんだ・・・」
「軽く調べさせたところ、平民のその女はセシル様よりも4歳も年上と聞きました。」
「調べさせただと?!」
ティファの言葉にカッとなり大きな声を出す
その時、ティファの腕に抱かれた赤子がびくりと身体を揺らし、激しく泣き喚いた
乳母が慌てて赤子を抱いて部屋の外へ連れ出すとティファとセシルの二人きりになった。
「何を調べさせた」
キッと睨みつけるセシルに、ティファは少し傷付いた顔をして一瞬目を伏せ、またセシルを見る
「まだそこまで深くは調べておりません。夜市の翌日、後片付けをしている者達に女の見た目を話したところ自宅と名前と年齢を知りました。」
ティファのその言葉に、ホッとした。
まだこの城で働いていること、ダリルとも接点があること、それは知られていない。
もしもティファ・・・それに母にそれを知られたら厄介になる気がする
セシルはそう思った。
セシルは小さく息を吐いてティファに尋ねた
「それで?」
「それで?・・・」
ティファは怒りを露わにしながら口角をあげセシルに言い返す
「ただぶつかっただけの女にまで勘違いで怒ってくるお前の言い分を聞こうと、それで?と言ってるんだ。」
「ただぶつかっただけですって?そのぶつかっただけの女の髪にキスを落とすなんて、この国王子としてあってはならぬことと思いませんか?ましてや平民です」
「平民だ貴族だと何が違う!どうせその平民はお前のような本妻になれるわけじゃない!」
セシルは自分の言葉に自分で傷付いた
この空間に居たくなくなりセシルはティファから背を向けた
「セシル様!!」
逃げるのかと言いたげな声でセシルを呼び止めるティファもまたギュッと拳を作ると一呼吸おいて話す
「良いですかセシル様。王子ともなれば側室の一人や二人いても不思議ではございません。しかし、その側室はセシル様をお助け出来る家柄から選ばれてくるのが慣例です。」
「・・・そんなこと・・・わかっている」
逃げたくても逃げられない。
それがこの血筋、王家だ。
「平民に手を出すとしても、側室に上がれるともなれば男児を生む場合のみ。この国では王太子様だけでなく、第二王子様であらせられるセシル様も同様なのです。」
「あいつはそういうのではない・・・。」
セシルは絞り出すように言うが、その声はティファには届いていない。
「セシル様。よくお分かりと思いますが、お義母様が望まれているのは私との間に出来る子どものみ。・・・それも男児です」
ティファは悔しそうにドレスの裾をギュッと握った
セシルはそのティファの言葉に少しだけティファの方を見た
ティファは悔しそうにセシルをみる
「良いですか、セシル様。二人目は必ずや男児を生まねばならぬのです。それも私との間に!!お義母様のご期待に答え、この国の為にも!!ですから、あちらこちらと女を渡り歩かず、私との絆を深めてくださいませ!」
ポロッと頬に涙が伝う
セシルはその姿に少しばかりの罪悪感を持った
王家に嫁いできたが故の重圧をティファに背負わせている
それだけは申し訳ないと思っている
「ティファ・・・お前に苦労をかけているのもわかっているし、母上の期待に答えたいという気持ちもわかっている。お前には悪いと思っている。」
セシルはまた扉の方を向く
「子どもについては俺に拒否権はない。お前の言うようにする。 だからしばらく放っておいてくれ」
そう言ってセシルは部屋を出ていく
「セシル様!!」
ティファは手を前に伸ばし声をかけるが、セシルを引き止めることはできず、扉が閉まる前に侍女と乳母が子を抱いて入ってくるだけだった。
ティファは座り込み泣く
その姿に侍女と乳母は近寄り背中をさする
「ティファ様、セシル様は必ずやティファ様の元に戻ってまいります。」
「そうです。どうかお気をたしかに」
深呼吸をして気持ちを落ち着かせたティファは、涙を拭うとキッと眉を上げ立ち上がる。
「お義母様のところへ行くわ!支度をしてちょうだい!!」
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